無意識日記
宇多田光 word:i_
 



そして『Find Love』が四つ打ちビートの効いた曲なのは、キャンペーンサイト「POWER IS YOU by Hikaru Utada」に掲載されている詩に

『はじまりは鼓動』
『鼓動のままにあなたらしく』
『今この瞬間も鼓動するたび』

と三度も『鼓動』というキーワードが出てきているからだろう。英語で言うとheart beats、ハート・ビートだね。故に新曲は、強い鼓動、強いビートを持つサウンドでなければならなかったということだ。

…なんかスマホからだとサイトが見づらいな。これから沢山分析するから詩を引用しておこう。批評のための引用です。批評活動の為の。(大事なことなので二度言いました(懐))



***** *****


はじまりは鼓動

ふとした瞬間
それは高鳴る

迷わなくていい
鼓動のままにあなたらしく
一歩一歩進めばいい

声をあげよう
あなたの声を

たとえたった一人でも
はじまりはあなただから

今この瞬間も
鼓動するたび
強さが
美しさが
あふれだす

踏み出そう
答えは自分の中にある

間違ったっていい
倒れても
また倒れても

立ち上がればいい
あなたを動かすのはあなただけ

POWER IS YOU


https://brand.shiseido.co.jp/utm-powerisyou.html


***** *****


いやぁ、ときめくわ…。


で。これさぁ、ライブのオープニングに最適じゃない?と思ったんだ。前回『Find Love』はライブ向きの曲だって書いたから言うんじゃないんだけど。ええっとね……


『はじまりは鼓動』からバスドラが踏み鳴らされ始めて、

『ふとした瞬間それは高鳴る』から他の楽器も入ってきて、

『声をあげようあなたの声を』で皆が歓声をあげて…で、ここの『たとえ一人でもはじまりはあなただから』って、そう、コンサート会場って最初にいつ誰がどう声を上げるかで雰囲気が決まっていったりするじゃない?そのことを指してるみたいでさ…

『今この瞬間も鼓動するたび強さが美しさがあふれだす』のところで音楽に合わせて暗かった会場にライティングが入ってきて明るくなって美しい光の競演をみせてくれて…

『踏み出そう答えは自分の中にある』とかって、こう、ライブコンサートとなるとついついシャイで照れちゃう自分を奮い立たせるかのようで(あとQUEENが“We will rock you”をライブで歌う時は会場全体で足を踏み鳴らすんだけど日本じゃあんまりやんない?)、

『間違ったっていい』ってのは演奏とか歌詞とか間違えても許してね、っていうちょっとしたジョークのようにも聞こえ(笑)─いや、そうね、お客さんがちょっと手拍子のタイミングミスっても気にしなくていいよ、ってことでもありそうだし……

そして最後に『立ち上がればいい』。これは、ライブコンサートで座って観るのもいいけれど、どうぞスタンディングでも盛り上がってくださいなというメッセージでもあり!


こんな風に読むと完全にコンサートのイントロっすよなぁ。『UTADA UNITED 2006』のオープニングが『Opening』で、歌詞が『私が超えていきたいのはジャンルとジャンルの壁とかじゃなく、私とあなたの間なの』って語りかけてきてゾクゾクしたのを思い出す。ならば次のヒカルのツアーのオープニングでこの『POWER IS YOU』のこの詩が、朗読になるのか『Opening』みたいにイントロダクションの歌詞になるのか、それはわからないけれど、この言葉たちに導かれてコンサートが始まったらすっごく盛り上がりそうだなと。となると一曲目はいきなり四つ打ちアップテンポのこの『Find Love』から始まる……のかっ!?


もう妄想が、止まらへんわっ!


取り敢えずとっととさっさとフルコーラス聴かせてくださいや。(切実)

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2021年新曲第3弾『Find Love』はオーソドックスな四つ打ちのダンスチューン…の模様。フルコーラス聴くまでは断言できないが、聞こえてくる30秒に関してはそうである。そこにUTADAらしい、ほんのりアジアンテイストなメロディが載る。典型的といえる曲調だ。

だが、ずっと宇多田ヒカル&UTADAの曲を聴いてきた耳からすると「ん?」と引っかかる部分が強い。ベースラインが太いのである。

初期からのヒカルの曲作りの特徴の一つに「スネアの切なさ」がある(最頻出フレーズだなこれ)。曲作りの発端がリズムループで、チャカポコチャカポコ打ち鳴らしている間にヒカルはそこにメロディを見出していく。普通であればまずコード進行を決めてそれに当て嵌るメロディを紡いでいくものなのだが、ヒカルはリズムパターンから(周りから見たらかなり唐突にいきなり)メロディを導き出す。

この異能とも言える曲作りの手法の帰結として、ベースラインの存在感が薄くなるというのが挙げられる。コード進行から作る場合はベースが奏でるルート音というのは非常に重要で、ある意味楽曲の骨格を成すものなのだが、ヒカルの場合は骨格をすっ飛ばして心臓の鼓動から顔面の皮膚を産むような作り方をする為、骨が蔑ろになりがちだ。

よくわかるのが『BLUE』で、この曲は『ULTRA BLUE』収録時点ではまるでデモのようなシンプルなアレンジになっていて、ヒカルらしい四つ打ちのリズムに強烈なメロディが載る典型的な宇多田節であった。そこでは、ベースラインは補助的にしか現れなかった。それが入念にアレンジされてはじめて、『WILD LIFE』で聴かれたベースが活きていてる『BLUE』が生まれたのだ。

『Find Love』ではベースラインが(アシストも含めて)非常に強い。ここから曲が生まれたのでは?と思わされるくらい。UTADAでの四つ打ちソングといえば『Dirty Desire』だが同曲と較べたらその違いはよくわかる。こちらも『BLUE』同様強いダンスビートに滑らかなメロディ、それにこの曲ならではのリズミックなリフレインという組み合わせだ。

となると、曲調は典型的なのに、実は曲作りの手法としてはヒカルの今までにないやり方が採用されているかもしれず、リスナーとしてはそこの意図や経緯に大変興味が出てくる。現時点ではそこら辺を具体的に推測することはちぃと無理だが(30秒だけだしな)、いずれインタビューなどで触れてくれたら嬉しいな。


斯様に、『Find Love』はメロディと歌詞の際立ちを強調する一方でベースラインも強い曲なので、恐らくだがこれは相当にライブを意識しているのだろうと思われる。先程触れた『BLUE』がベースラインを強化したライブアレンジで『WILD LIFE』において生まれ変わったような姿を、今度はもうアルバム収録時点から実現してしまおうということなのかもしれない。「POWER IS YOU」というキャンペーン名に相応しい、強いビートと美しいメロディに彩られた楽曲になっていうだ。そしてそれ以上に、こういう曲を書いてきたからにはライブコンサートの日程の話が具体的に出てきているのだと思われる。2018年の『Laughter In The Dark Tour 2018』以来のパフォーマンスも、あたしたちは期待するでしょそりゃ。

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