無意識日記
宇多田光 word:i_
 



Netflixの英訳字幕、勿論『あなた』以外の曲にもトピックが満載だ。


『道』のサビの最後の決め台詞は『そんな気分』と『これは事実』。後者の『これは事実』の方は『That's a fact』とほぼ直訳なのだが(不定冠詞が気になるが今回は触れないでおこう)、前者の『そんな気分』の方は『That's kinda how I feel』である。

これをみてちょっと笑ってしまった。いや、この『That's kinda how I feel』もまぁ直訳に近いは近い。「それが私の感じ方」だからね。自分が笑ったのはつい差し挟まれてしまった『kinda』のせいだ。


"kind"は"kind of"の崩れたカタチで、日本語にすれば「みたいな」みたいな意味だ。ちょっと無理があるが当て嵌めてみると「それが私の感じ方、みたいな」と少し言葉のあたりを和らげる効果がある。

笑ったのは、これがヒカルの若い頃の口癖だったからだ。最近は機会が少ないからよくわからないけれど、昔Utadaが海外で活動していた頃(つまり21歳とか26歳とか)、ラジオのインタビューを聞き取って書き起こして翻訳してみてたのだが、まぁこの"kinda"が出てくる出てくる。そうやって少し言葉の角を丸めていく感じを聴いているとやっぱり日本人なんだなぁと。

いや勿論ネイティブにも"kinda"が口癖になっている人は沢山いるだろう。ヒカルが日本人だからよく使うということではない。特にヒカルが使った場合はそういうニュアンスになるんだなぁと少し微笑ましくなったなという話だ。なんでもかんでも同意を求めて話を前に進めたがる人は"You know"を多用するが、ヒカルはそういうやり方じゃなくて「っていう感じ、みたいな」と細かいニュアンスを調整したがってた印象が強い。勿論私の先入観なんだが、それに即して訳した方が日本語のヒカルの口調に近づいていったから当たらずとも遠からずといったところではなかったか。

なので『そんな気分』を『That's kinda how I feel』と訳したのは、少しヒカルの、Utada Hikaruの喋り言葉の色を出したかな?と感じた次第。まぁそれなら、ファンとしては嬉しくなるよね、You know.



なおこの『そんな気分』、google翻訳にかけてみたら"Like that."と返しやがった。「そのように」か。なかなかやりおるな。悪くなかったぜ。

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全3回の梶さんの対談/インタビュー企画、なかなかに面白かったな。https://media.fanicon.net/n/ne2de47d9d9de

レコード会社側がどれくらいサブスクリプション・サービスの消費概要を把握してるかを窺い知れて興味深かった。勿論全部喋っているわけではないのだろうが、こちらに開示して構わない分だけでもこれなのだから推して知るべしだ。

内容にもある通り、ストリーミングサービスは英米では踊り場に来ている。携帯電話の普及率と似たようなもので、つまり大体行き渡ったってこと、かな。日本はまだそこまで行っていない。もちっとばかし耕せるだろう。


第3回では、ヒカル空白の5年間に10代で宇多田ヒカルを聴くようになるのはどんなペルソナの人かという話題が出ていた。要は意識高い系だそうだが、実をいうと自分の視界にはそういう人は目に入ってきていない。単純にTwitterのフォロワーさんを見るだけだと、今までと全然変わらない、ただ年齢が若いだけの人に見えている。

まぁそんなのは個々人の偏りであって、全カスタマーのスペクトルを把握できる梶さんの言うことの方が確度は遥かに高いのだが、単純に理屈として、宇多田ヒカルって意識高い系の食指に引っ掛かるのかなというのはちょっとある。

こういうのは世代がモノを言う。自分なんかは、例えばメタルファンとしてKORNが出てきた時におこちゃま向けのかみ砕いたバンドが出てきたなと思った(自分にとってのHELLOWEENと同じようにね)のだが、デビューから四半世紀経った今は本格派ヘヴィ・ロックの大御所なんだそうな。ふへ~。そんなもんなんだねと。長くやってりゃそうなる。

宇多田ヒカルの場合その点希有で、デビューした途端に本格派の大御所だった。サザンがデビュー当時ふざけたコミックバンドといわれていたのに今やシーンの重鎮になったのとは対照的だ。確かに、ヒカルをバカにする世代はいない。知ってるか知らないかだけだろう。空白の5年間で露出が少なければ少なくとも単に知らないからファンになりようがない、及び昔に遡る熱心な人はすぐに辿り着く、というのは想像がつく。

でもその「お前たち凡人と俺は私は違うんだ」というタイプにヒカルが響くかというとそこがちょっと疑問でね。そういう、どの世代にも定評があると、評価が力まない気がするのよね。余計な熱が無いというか。そういう余剰のないところに意識高い系や厨二病患者は引っ掛からないんじゃないかと。まぁ憶測ですわ。真実はどうなのか。そろそろ空白の5年間のファンたちが社会に出始めてくるだろうから聞いてみたいもんだわね。

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