無意識日記
宇多田光 word:i_
 



『Forevermore』を歌った後は一旦小休止してこの日二回目のMCタイムとなった。以下文字起こし。


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『ありがとう!』(場内拍手)

(Hikki咳払いをひとつ)

『…背中を向けていた人達、すいません(笑)』(つられて皆笑う)

『でも、そこで歌うの凄い…あ、そっか、前の横浜アリーナの時もセンターステージで歌ったからなんか懐かしいのかもしれない。うん。』

『すいません、水がちょっとストローからぴゃっと(笑)』(と水分補給)

『ふぅ。えーっと。今年で一応デビューから20年? 20周年記念の日があと1ヶ月後、約1ヶ月後で。』(場内拍手)

『昨日ひさしぶりに会った人のうちの一人が、ちょうど今年二十歳になった女の子で。会ったとき彼女はちょっと命の危機にあって、心臓移植を受けるタイミングに知り合って。今年の春に成人したっていう話を昨日聞いて、わぁちょうどじゃあ私のキャリアと同じ20年て考えると一人の人間がこう色々乗り越えて、成人するというか一応大人になるっていう期間ほどの間この仕事してるんだって事にまず自分でビックリして。なんか、それほどの成長できたかなぁ、って色々自分のこの20年を考える時間になったんですけど─昨日、一人でお風呂に浸かりながら。多分、ずっと20年やってこれたのも、運命みたいなものもあったりするかもしれないけど、本当にずっと、休業しても、休業宣言してもずっと待っててくれるって言ってくれたみなさんのお陰でもあるので、まぁそれが一番のお陰で(笑)、あとはそれを、休業宣言を支えてサポートしてくれたスタッフの皆さんなんですけどあとは。ホントに、待っててくれて、20周年を迎えるとこまで運んできてくれて、ありがとう。』(場内割れんばかりの拍手)

『じゃあ、そんな感じで次の曲いってみたいと思います。』


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もしここの読者が横浜2日目の公演を観ていたのならこのMCに登場した「今年二十歳になる女の子」に心当たりがあった事だろう。今年の10月4日の日記で彼女の事を取り上げたていたからね。彼女の名前は鳥井愛美(あみ)さん。自分も「今だともう20歳」と書きつつお元気でなかったらどうしようかと思っていたのだけれど、こうやってヒカルの公演に来れるほど息災であると知れて一安心でしたよ。長くやっていたらこういうことも、あるもんだね。

さて公演はこのMCでほっこりした所で最大の山場を迎える。曲名もコールせず大した流れも作らないまましれっと『そんな感じで次の曲行ってみたいと思います』という考えられる限り最も平凡な一言に迎えられて奏でられたのはこの国で最も非凡な曲のひとつ、永遠のスタンダード・ナンバーである『First Love』のピアノのイントロだった。このイントロが流れてしまえばどんなに拙いたどたどしいMCも総て大丈夫になるのだから、ホント、名曲って強いよね。再び、皆の集中力がヒカルの歌へと向かったのだった。

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『誓い』『真夏の通り雨』『花束を君に』『Forevermore』ときてそりゃもう興奮度は頂点に…というのは確かにそうなんだが、なんだろう、突き抜けすぎて『Forevermore』の時にふっと力が抜けて急に冷静になった。

その時にセットリストの道筋がふと“見えた”のだ。このあとに『First Love』からの『初恋』を歌い本編最後は『Play A Love Song』で締める、とするとアンコールは『Automatic』と『Goodbye Happiness』だろう、と。

実際にはもう1曲あったのだが、『Forevermore』のあとに演奏された6曲のうち5曲までが予想出来てしまった為、ここから後選曲については急に驚いたり意表を突かれたりといった事はその“もう1曲”を除いてなかった訳だ私の場合。しかしだからこそ、選曲がサプライズではなくなったからこそ実際に歌われた時の素のインパクトの強さというものを痛感する事になる。つまり、仮に公演前にセットリストを知らされていたとしてもライブで得られる感動に殆ど差はなかっただろう、という事だ。

特にアンコールラストの『Goodbye Happiness』などはイントロだけで昇天している人が多いみたいだけど(タグを追っているとそんな印象)、私のように「そらそうくるわな」と思って臨んでてもやっぱり壮大に感動的だったんですよ。もしかしたらこのあとの幕張2公演で初めて『Laughter in the Dark Tour 2018』に赴く人もこの「#裸婦抱く」シリーズを読んでくれているかもしれないが、こうやって盛大にネタバレを喰らっていたとさかても事前に何も知らなかった人達と遜色ない感動を味わうことができますよ、それくらい生のヒカルの歌声と楽曲は強烈ですよと進言しておきたい。“驚く”のは「思ってなかった」時に起こるだけではなく、圧倒的な何かに直接触れた時にも起こるのだということを強調したいのだ。それ程に、特にこの公演は後半が凄まじい。前半はマッシュアップやキーボードソロなどライブならではの工夫によるサプライズが大きな主眼だったが、後半は衒いの無い歌一本の直球勝負。そちらの方が“驚き”に関しては上だというのだから、嗚呼、本当にこの公演は観て欲しかったよ。行けなかった人達にも。


そしていよいよここから公演は最高潮を迎える。まだここから上がるのかという感じだが更なる高みの存在をヒカルは示してくれた。『First Love』と『初恋』。新旧代表曲を2曲連続で演奏したのだ。書く方が未だに緊張してしまうほどの圧倒的瞬間がもう目の前である。

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