無意識日記
宇多田光 word:i_
 



前回記した通り、年明けの配信チャートは数々の紅白出場歌手たちの楽曲の中でバックナンバーとヒカルの楽曲だけが異彩を放っている。映画の主題歌という事もあるだろうが、目下ロングセラー中なのだ。

バックナンバーの方は今年、ドームツアーが決まっているらしい。彼らの人気の上昇曲線を考えれば、遅すぎる事もなく早すぎる事もなく、丁度いい頃合いだろう。これで箔がつくというものである。

ではヒカルの方のツアーはどうなるか。一回や二回のドームなら簡単に埋まるだろうが、四回五回となってくると心許ない、というのが今の所の私の見立てだ。『Fantome』はビッグセールスを記録したが、CD購買層とツアー参加層はイコールではないし包含関係にもない。それぞれが独自の市場を形成している。売上がそのまま動員となるかは否である。

となると、合計で何十万人の動員が可能となるか。CDを買った半分以上は社会人だろう。例えばツアーを夏休みにすれば、中高大生に人気のアーティストであれば大きく動員を伸ばすかもしれない。しかし、ヒカルはそれに当てはまらない。土日中心のツアーを考えているのではないか。であればリピーターも合わせて20万人はまず堅いとみる。そこまでは大体の人が予想する数だ。

ここからどう上乗せがあるか、だ。直前のアルバムや新曲の売上、長期ツアーによる口コミ効果、などなど、ソールドアウトにならない程度の供給が果たされていれば後から評判によって動員数が変動する可能性がある。恐らく、ヒカルはこれに強い。

ただ、多分今回も当たり前のように動画撮影禁止だろう。生歌の素晴らしさを皆が次々にYouTubeにアップしてその波及効果で…というのは期待できない。ならばもういっその事ツアー中にオフィシャルでライブの模様を紹介してしまえばどうか。撮って出しの生々しい映像を。それで食いついてくる人数は100や200では済まないだろう。

と言っても、繰り返しになるがそれはチケットがソールドアウトにならない程度の数供給された場合のみ。仮に最初から全公演ソールドアウトになる数しか供給がないのであれば、ツアー中のプロモーションなど一切要らない。あクマでも仮定の話だが。

となると一体どんな規模、どんなキャパの会場を何回やるか、という話に戻る。ドームツアーをする程じゃない、かといってホール中心では厳しい。50回とか必要になってくるし。そして、今の日本にはヒカルに適当なアリーナクラスの会場が少ない。ホール、アリーナに加えて2、3回スタジアム、というボヘサマのような規模になるのだろうか。具体的なデータを何一つ持たずに妄想を書き綴ってしまった事をお許し下され。

コメント ( 1 ) | Trackback ( 0 )




昨年末のNHK紅白歌合戦に合わせてじぃっとiTunes Storeのソングチャートを見ていた。Appleも心得たもので、トップページに紅白演目のプレイリストを掲載していてそこから直接買えるようになっていたのだ。

様々なアーティストたちの楽曲が次々にランクアップしてくる中、バックナンバーの「瞬き」とヒカルの『あなた』だけはどうしても抜けない、という膠着状態が長らく続いていたのだが、終盤間際に安室奈美恵の「Hero」が登場、見事1位に返り咲いた。きけば彼女の登場時の瞬間最高視聴率は48%を超えていたそうで、そりゃ1.2億の人口のうち半分が見てたらこうなるわなという結果。

翌日のソングチャートは引き続いて第2位がバクナン、そこから平井堅、シシャモ、ワニマ、エレカシがあーだこーだとあって第7位に『あなた』で暫く定着していた。共に年末の映画主題歌だった「瞬き」と『あなた』の強さが逆に浮き彫りになったと言ってよさそうだった。

他にも、あれだけ熱唱したSuperflyがあんまり上がらなかったなとか、また「津軽海峡冬景色」を歌った石川さゆりが去年の新曲「春夏秋冬」を歌ってたらどれくらい上がっただろうかとか興味のあるところだが、上位に来てた曲は結局のところ「事前の知名度と実際に受けるべきだった評価との間に乖離のあった曲」な訳だから、レコード会社としては素直に喜んでいるだけではいけない。もう少しプロモーションを工夫すれば発売時点でもっと売れていたのかもしれないのだから。

年々、どころかもう10年以上紅白は「全然知らない曲」と「聴き飽きた曲」で構成されるようになっている。80年代を「ザ・ベストテン」の週間周期生放送と共に過ごした身として紅白は一年スパンでのヒット曲を生で歌わせる番組だったので「微妙に古くてなんか流れからズレててちょっと懐かしい曲」を放送する時間、という感覚だった。今はそれに当てはまる曲が殆どない。まっさらな新曲と懐メロを聴く場になっている。いい悪いは別にしてそうだ。

それを考えると一昨年の『花束を君に』はそれにあてはまる久々の楽曲だったんだなと思い直す。2016年の前半から中盤を振り返るにあたってなくてはならない存在だった。披露の仕方も大掛かりな仕掛けとは無縁のマイク一本勝負。皮肉にも、NHKホール以外で歌ったヒカルがいちばん(少なくとも80年代90年代の頃の)"昔からの紅白"に忠実な効果を生み出したのだった。

今回(昨年)の紅白にヒカルは出ていない。しかし、バクナンの「瞬き」とともにこうやって紅白一色のソングチャートに居座る事で、例え出演しなくても一昨年と同じように2017年という1年を総括する場に居合わせてる感じになっているのが、何だかこそばゆかった。紅白云々以前に、年末総括にはヒカルの名が必要だったのだ。

コメント ( 1 ) | Trackback ( 0 )