トシの読書日記

読書備忘録

血沸き肉踊る大活劇

2011-12-05 16:14:20 | か行の作家
曲亭馬琴著 石川博編「南総里見八犬伝」読了



「八犬伝」といえば知らぬ者はないくらいの江戸時代の名著であります。本書を読むまでまったく知らなかったんですが、この小説は、日本の古典中、最長の作品ということで、全106冊、あの長い物語といわれる「源氏物語」の2倍以上といいますからびっくりします。今回選んだのは、角川ソフィア文庫のビギナーズ・クラシックス日本の古典というシリーズで、この長い長い物語を、29のクライマックスとあらすじにまとめたもので、まぁダイジェスト版といったものです。


いや、面白かったです。読んで思ったのは、この小説は儒教の教えを内容にかなり反映させているということ。伏姫のお腹から飛び出した八つの玉、すなわち「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」の文字を刻んだ玉が八人の剣士を導くようにして次第に集まり、ついには八剣士が揃い、里見家のために戦うという、典型的な勧善懲悪の物語であります。


ラストの場面が印象的でした。悪者を懲らしめて、里見家とその地域に平和が訪れると、八人の剣士は、忽然と姿を消してしまうんですね。勧善懲悪という思想が目指す世界は、悪人のいない世界なのであって、それが達成できたということは、この八剣士はこの世に必要ないということなんでしょう。


子供のころにNHKでやっていた「新八犬伝」の辻村ジュサブローの人形がなつかしく思い出されます。

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