レイモンド・カーヴァー著 村上春樹訳「英雄を謳うまい」読了
本書は平成20年に中央公論新社より発刊されたものです。レイモンド・カーヴァーは自分がリスペクトする作家の一人なんですが、本書はずっと手元にあったものの、読まずに今日に至っておりました。
短編集ではなく、詩、評論、書評など、もちろん、ごく初期の短編も収められているんですが、訳者村上春樹が言うように、いわゆる落穂拾い的な性格の本で、未発表の原稿をとにかく寄せ集めたといった体のものになっています。なので、ちょっと手を出しにくい気持ちになっておりました。
でもやっぱり読んでよかったです。初期の短篇は、やはり荒削りで、実験的な要素も多分に含んでいて、これは小説として成り立っているのかと思わせるような作品も散見されましたが、でもやっぱり後年のカーヴァーの世界の片鱗はしっかり見せています。
あと、書評がいくつかあったんですが、カーヴァーの好みが色濃く反映されていて、読み物としてなかなか面白かったです。その書評でカーヴァーが強く推す本がいくつかあったので、それを覚え書きとしてここに記しておきます。
ドナルド・バーセルミ「雪白姫」
ジム・ハリスン「レジェンド・オブ・ザ・フォール」
ウィリアム・キトリッジ「ヴァン・ゴッホ・フィールド」
ヴァンス・ブアジェイリ「男たちのゲーム」
ジョナサン・ヨーント「ハードキャッスル」
リチャード・ブローディガン「アメリカの鱒釣り」
リチャード・フォード「究極の幸運」
リン・シャロン・シュウォーツ「ラフ・ストライフ」
上記の本が果たして日本語訳で手に入るのか、怪しいものですが、とりあえずネットで調べてみることにしてみます。
29年前に50才の若さでなくなったカーヴァーゆえ、新作を望むことはもちろん無理な話なんですが、なんとも残念至極です。