町田市議会議員 山下てつや “獅子奮迅”

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視察報告 福岡市 久保田産婦人科麻酔科医院

2014年08月20日 | 活動日誌

久保田産婦人科麻酔科医院は、福岡県福岡市内にある久保田史郎医師(医学博士)が院長を務める医療法人である。

久保田医師は、元は大学病院の麻酔科の専門医であったことから、医院名にも、麻酔科を掲げている。父親が産婦人科医であり、医師になる当初から産婦人科医を目指していたが、産婦のお産の負担を減らすことを目的として、麻酔科に進んでいる。

麻酔科では、予防医学の視点から、患者の体温、顔の表情や筋肉の緊張など、体の変化を細かくチェックしていいたことから、大学病院で、麻酔科から産婦人科に異動した際に、お産の常識について、違った視点を持つようになる。

例えば、大学病院時代に、麻酔科から産婦人科に移り、生まれた赤ちゃんを見ると紫色をしていたが、麻酔科の視点では、寒がっているように見えたために、自分が担当した新生児を適温とされる温度(32~34℃)の保育器に入れたところ、ピンク色となり、嘔もなく糖水やミルクを飲めるようになったとの事例などがある。

久保田医師は、麻酔科医としての経験から、これ以外にも、お産の常識に対して疑問を持つようになる。例えば、新生児の黄疸や体重減少がある。10%以上も体重減少が起きるのは、生理的現象と考えられていたが、データ分析・研究により、新生児が低栄養状態であると判断。生後数日感の栄養不足が黄疸を強くする原因であるとし、早い段階で栄養を与えることにより、重症黄疸を防ぐことを確認している。

日本では、重症黄疸の治療が行われるケースは、10人に1人くらいとされているが、同院では、2013年のデータでは、1万783人中、発症は22人(0.2%)で、発達障害の危険因子であるビリルビン値20mg/dl以上は1人も出ていない状況だという。

久保田産婦人科の出産の特徴は、主に3つあげられる。栄養管理、水中散歩、産科麻酔である。

栄養管理では、食生活を指導する。妊娠中の体重増加が著しいと妊娠高血圧症や妊娠糖尿病の原因となる。また、赤ちゃんの育ちすぎ、微弱陣痛、産道の脂肪過多、予定日超過など起こす。

水中散歩は、冷え性、便秘、胎盤早期剥離、妊娠高血圧症などの予防や治療に効果発揮するとのこと。血液の循環を悪くする冷え性は、様々な病気の原因になるとして、特に妊婦の冷え性は、胎盤剥離、高血圧症、低出生体重児(未熟児)、便秘・頭痛・肩こり・浮腫など原因になるとして、生活習慣も含め改善する必要があると指導している。長時間のデスクワークは血流を悪くし、冷え性の原因になるために、就労環境についても、具体的に改善すべきとしている。

産科麻酔は、無痛分娩あるいは、和痛分娩とも呼んでいる。これは、分娩時の痛みを7割和らげる「陰部神経ブロック法」という局部麻酔を行うことである。分娩時に麻酔をすることについて、日本では理解があまりされていないが、欧米では麻酔を施す無痛分娩は、お産の9割以上にのぼるとのこと。同院では、和痛と呼んでいる手法を採用しているのは、お産の最大の痛みは取り除きながらも、産んでいる感覚は残り、誕生の瞬間を冷静に受け止めることができるとしている。また、痛みにより、産婦が過呼吸になると胎児仮死の原因となる低酸素血症を招くことがあり、予防の役割もはたしているとのこと。

同院の新生児管理の特徴は保育管理にある。1983年の開業以来、約12000人の全ての赤ちゃんに対して、出生直後の低体温症と低血糖症を防ぐために、保育管理を行っています。その結果、発達障害の危険因子である低酸素血症、低血糖症、重症黄疸、頭蓋内出欠を完全に予防した実績を得ています。

久保田医師は、日本では、厚労省の勧めにより生後30分以内のカンガルーケアと完全母乳が当たり前になっているが、このカンガルーケアと完全母乳が、日本における発達障害児が急速に増えている原因であると考えており、同院のでは、その問題点ともいえる体温管理と栄養摂取に着目している。

胎児は、分娩を境に急激な環境温度の低下に見舞われる。母体にとって快適な温度である分娩室との温度差は13℃くらいになるとも言われ、新生児は出生直後から寒冷刺激が与えられる。その状態で、分娩室が新生児にとって著しく寒い状態が続くことにより、新生児は低体温症に陥り、体温調節機能は、その回復のために著しくエネルギーである糖分を消費するために、低血糖症となり、自律神経機能に不具合が生じ、脳に障害を遺す可能性が生じてくると考えており、その大きな原因となっているのが、生後30分以内のカンガルーケアにあるとしています。また、産後24時間以内は、母乳は滲む程度しか出ず、新生児に必要な最小限のカロリー相当する母乳が出るのが、早くても生後3日以降からのであることから、新生児に完全母乳により対応すると生後3日間は、新生児は飢餓状態に陥り、脳に障害を遺す危険性が生じ、完全母乳はその大きな原因であると久保田医師は考えている。これらのことから、同院の新生児管理の特徴は、保育器による温度管理と糖水や人工乳などを与え低体温症と低血糖症を防ぐことにあります。そのため、同院では、医学的にみて、新生児の低血糖症・低栄養・脱水・重症黄疸・脳出血が発達障害の危険因子であることは常識であるとして、寒い分娩室に生まれ、生後3日間の低栄養を補い、体重減少を防ぐには、生後早期に糖水・人工乳を与える超早期栄養法が必要と判断しています。

今回の視察では、同院の母親教室を受講し、生活習慣が胎児発育に及ぼす影響について説明を受けました。冷え症や食生活による肥満が胎児に与える影響をわかりやすく説明し、その改善策のために水中散歩を、妊婦に勧めています。これは、母体の健康状態をよくするだけではなく、介護予防にもつながる健康法であることから、今後、健康増進策としても水中歩行を取り入れていくことを久保田医師は勧めています。血流をよくすることが、あらゆる器官の機能を正常に保ち、多くの病気の危険因子を取り除くことができるようになると考えられるためです。新生児が低体温、低血糖になることにより、多くの障害を遺す危険性を踏まえ、予防医学の視点からそれを回避していくことが望まれる点は、成人にとっても、健康維持をしていくための生活習慣の改善を、どのような視点で行っていくべきかということに通じてくると考えられます。これらの点を踏まえ、今後、市の健康施策に対しても提案していくことを試みたいと思います。

発達障害児の増加は明白なことであり、市は、国の対応を待たずに、この同院の考え方や取り組みについて、早期に調査研究を行い、実践として取り入れていくべきであると、多くの市民が望むところであると考えられ、これを少しでも前進させる提案を行いたいと思います。


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