ステージおきたま

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言葉を届ける:50(歳)を過ぎれば板(舞台)地獄⑥

2007-04-22 22:05:07 | 演劇

 川西町フレンドリープラザ演劇学校で教わった、一番大切なこと、それは、 「言葉を届ける」ってことだ。言葉なんて、いつだって、誰だって使ってるし、使ってる以上、相手に届いてるんだろ?そう思うよね、だれだった。でも、周りをぐるっと見回してみると、うっ、こいつ聞いてない!とか、それ誤解だって、なんてことが結構ある。商売柄、生徒と話すこと多いけど、ああ、ダメだ!こいつら聞いてないゾ、なんて経験はしばしばだし、僕の方だって、同僚の話に適当に相づち打ってることもなくはない。うそ、それのが多いだろって、まあまあ、世の中渡るに方便も必要だって。

 「言葉を届ける」最初の稽古、これには面食らった。舞台の上手下手にわかれて、一対一で言葉の投げっこをするんだ。例えば、こんにちわ、とか、青空、とか、夕日がきれいです、とか。遠いったって、たかだか10メートルってところだから、どんなに小さな声だって聞こえる。でも、佐藤先生は、聞こえたかどうかでなく、届いたかどうかを聞くんだ。ええーっ、聞こえたら届いてるってことじゃないの?いいえ、届いてません!横で一緒に聞いていた佐藤先生の非情なダメだし。これが何度も続く。そう言われれば、なんか、こっちの心にも入ってきていないような?・・・お互いに相手の言葉に耳を研ぎすまし、懸命に聞く。そして、必死で声を張り上げる。声の調子を変えてみる。相手の目を見て言葉を投げてみる。もうともかくめったやたらと言葉の応酬だ。届いた?うーん、ちょっと?じゃあ、これなら?あっ、いいかも?・・・・そのうち、なんとなく感じが掴めてきた。手前で声が落ちた。あっ、頭の上を通過した、良し、今の声、届いた!ほんと、微妙だけど、たしかに、届く言葉と届かない言葉がある。そのことをとことん、たたき込まれた。

 自分の言葉をしっかり相手に届ける。相手の言葉が届いているかどうか聞き分ける。微妙な訓練だけど、実は、これが舞台での対話の基本だってことを教えてもらえた。今、演劇部でもこの稽古は使わせてもらっている。部員達には厳しい稽古だ。以前の僕と同様、よくわからない。首を傾げながら、夢中で声を投げ合っている。果たして、届いた実感を得たのかどうか、僕にもよくわからない。でも、少なくとも、相手の声や言葉に全神経を集中するって経験は、絶対貴重だね。あと、届く言葉と届かない言葉がある、らしい?ってことを知っておくこともね。芝居の稽古に入ってからだって、相手のセリフを聞かないで芝居やってることが多いから、そんなときには、この稽古のことを思い出させるんだ。

 芝居以上に、実生活でこの訓練は重要だと思う。特に、教師にとっては必須だね。教師には、生徒達が言うことを聞く先生と、相手にしない先生とがいる。理由は様々だけど、その一つに、言葉の力があるってことに気付いたんだ。声の大きい小さいではない。男か女かってことでもない。人柄でもない。話しの中身ですらない。いやいや、中身も大事だけどね。言葉の力なんだよなぁ。

 どんなに生徒思いの先生でも、生徒に理解されない人がいる。大切なことを話しても生徒が聞いてくれない人がいる。そんな時、その人の話す言葉は、生徒の心に届いていないんだ。生徒の心に刺さっていかないんだ。こんな先生のクラスはおうおうにして、荒れる。一方、中身はたわいない話でも、生徒はひどく感心して聞き入っていたりする。これは、逆に言葉に力のある教師だ。こんな先生はクラス経営が上手だ。

 学年が進み、人間理解も深まった生徒なら、言葉の力を越えて、先生の人間性を評価するようにもなるのだけれど、そこは、やはり高校生だ。大多数の生徒は、言葉の力の前に姿勢を正す。だから、教師にとって、届く言葉が話せるってことは、絶対必要なことだと思う。特に、教科指導と同等以上に生き方指導が求められる学校にあってはそうだなんだな。

 そんなことが、演劇学校の稽古を通して理解することができた。で、今では、若い先生達にこのことを繰り返し繰り返ししつこく!語り続けている。教師は絶対、自分の言葉を鍛えなくちゃだめだ。語るべき中身の蓄積と並行して、それを生徒の心に届ける技術を磨かなくちゃいけないよ。それには、演劇が一番だ!

 で、どう?菜の花座入らない?これで、顰蹙を買う毎日なんだよね。

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