タクシーの規制緩和と格差社会。
11月21日(水)の信濃毎日新聞の報道で、「タクシー 長野など増車規制強化 競争激化で国交省」との見出しで、下記の概要の記事が掲載されました。
それは、「国土交通省は21日、タクシーの台数が多すぎるとして運転手の労働条件悪化や安全性の低下が懸念されるケースが目立ってきたとして、人口30万人以上の都市を含む地域を対象に『特定特別監視地域』を新設し、長野交通圏(豊野地区を除く長野市、千曲市、埴科郡坂城町)など6地域を指定した。労働条件が適切でない場合は、事業者に対し必要なに応じて減車や増車の見合わせを勧告する。
長野県内では2002年の規制緩和で参入が自由化されて以降、長野市を中心に新規参入する業者が相次ぎ、競争が激化。一時期は運賃を値下げする業者も出て、運転手の所得減少も問題になっていた。」・・・・・・。
「今回の指定は期間は20日から08年8月まで。長野地区以外では札幌、旭川、仙台、富山、広島の5地域が指定された。」・・・・。
「冬柴鉄三国交相は20日の記者会見で、今回の措置について『供給過剰があまりにも行き過ぎているためで、規制緩和の流れを止めるとか逆戻りさせる考えは一切ない』と述べた。」というものです。
長野地区のタクシーの過当競争とドライバーの皆さんの実態については、過去にもこのブログで「タクシーの料金と格差社会」として取り上げました。
また、最近のテレビ報道でも東京都のタクシーの過当競争とドライバーの給与の実態等について、特集番組が報道されていました。
長野駅善光寺口のタクシープール
そうした、実態に今回、国土交通省が「『特定特別監視地域』を新設」し監視に乗り出したことは、歓迎するものです。
しかし、全国の6地区を指定した理由を「供給過剰があまりにも行き過ぎているため」としていますが、ドライバーの皆さんの生活実態は、全国的なものだと思います。
小泉内閣が進めてきた規制緩和によって、過当競争が強いられたタクシー業界は格差社会の拡大の象徴と言ってもよいでしよう。今回の措置について、国交省は「規制緩和の流れを止めるとか逆戻りさせる考えは一切ない。」などと言い訳せず、率直に「規制緩和の破綻」を認め、もっと抜本的な対応を行うべきです。
今回の措置は、小泉内閣が「改革」の名のもとに進めて来た「規制緩和路線は破綻」したと認識し、格差社会の解消に向けて全ての分野で見直しを行うことを願うものです。
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追 伸
今日取り上げたのは、タクシー業界の規制緩和の話しですが、県内においては貸し切りバス等の分野でも、大変な過当競争が起こっています。
規制緩和が導入されて以降、本県の貸し切りバス事業者は平成12年度93社でしたが、平成17年度には158社となり、現在では170社を越えていると言われています。
また、貸し切りバスの台数も平成12年度947台でしたが、平成17年度には1,330台となっています。
そして、その結果、旅行者などから安い値段での過当競争が煽られ、人件費の削減(最小の人数で低賃金)や無理な運行計画が強いられ、安曇野観光バスの事故など安全性も脅かされています。
このことは、ただ単に、事故を起こした当事者だけの責任にしてはいけません。規制緩和を見直すべきです。
また、行政もコミニュティーバスやスクールバス等を業者委託する場合、「安ければ良い」という姿勢を改め、安心・安全を担保するための総合評価入札制度の導入を行うべきと思います。