桜井昌司『獄外記』

布川事件というえん罪を背負って44年。その異常な体験をしたからこそ、感じられるもの、判るものがあるようです。

モットー

2008-07-19 | Weblog
冤罪はゆるくない、北海道弁ね。辛いよね。
今日も暑かったし、部屋に入りっぱなしの刑務所、汗まみれだろうなと思う。
先日、冤罪仲間が千葉刑務所に送られた。俺たちが出て来てから12年。かなり変わったろうが、良く判る構造と日常だから、どんな思いで過ごしてるかと気になる。
俺は千葉へ移されたとき、とにかく目の前のことを全力でやる、それを目標にした。冤罪の苦しみに向き合い、なぜ俺が!なんて考えなかった。
千葉へ移ったばかりの彼は、そうは行かないみたいだな。身の不運を嘆いて、不運の思いに苛まれる毎日だとか。良く判るよ。
無実で刑務所にいて苦しくないはずは無い。苦しい、辛い、息をするのも辛くなる。でもさ、泣いても叫んでも続く毎日ならば、その中にある楽しみや喜びを見つけて闘って欲しいんだな。
彼の「明るく楽しくなんてムリ」の手紙を読んで、そうしろは、まだ早い注文だったかなと反省した。
俺は幾つかのモットーを持って千葉刑務所での月日を過ごしたが、みんなと楽しく、みんなが楽しく、なんてのもあった。今は、この先に、みんなを楽しくの言葉が入ってるけども、無実のムショ暮らしと言えど、決して無駄にはならない。彼にも、今の俺と感慨を持てる日が、1日も早くあるように願うばかりだ。
全力でやらなくちやあ、彼にも申し訳ないね、俺は。

矢野伊吉氏

2008-07-19 | Weblog
こういう名前の裁判官がいた。財田川事件の再審裁判に関わり、再審開始判断をしたが、陪席両名の反対に合い、棄却決定を出した後、裁判官を辞めて弁護士になり、財田川事件の救済をされた偉人だ。その後、財田川事件が再審開始になり、死刑台から救われたのは、歴史の通りだ。俺は冤罪に苦しんだ者として、矢野さんの存在は涙が出るほどに嬉しいし、その存在を以て裁判官を信じて良い気持ちになる。
布川事件に再審開始決定を書いた門野博裁判長は、名張事件の再審を取り消した人として有名だ。あの日、俺も名古屋高裁に行き、「カドノ、許さんぞ」と叫んだくちだが、全国のマスコミに批判された。でも、その評価は誤りではないかと、もしかすると門野裁判長は「矢野さん」だったのではないか?と思い始めた。そう考えると辻褄の合う話が沢山あるのだ。
人の評価は難しい。誤らずにありたいが、誤るのが人間。そのときは、せめて素直に誤りを正したいものだ。努々検察官のようにはなりたくないものだが、勿論、検察官には「矢野伊吉氏」など、見る影も無い。

検察庁

2008-07-19 | Weblog
田中森一という元検察官がいる。闇社会の弁護人になり、先頃、刑務所に入ったニュースを覚えている人もいるだろう。
この田中さん、多弁に自己弁護をしている。書籍も出していて、その中で、なぜ検察官が強引な捜査や起訴をするのかと言えば、、その理由は金にあると書いている。やはりだよね。
警察の裏金は有名になり、かなりの人が知っていよう。新人警官にありもしない超過勤務手当てや休日出勤手当てを与えて手懐け、5年過ぎると架空の領収書を作らせて裏金作りに加担させるのだと、つい先日、群馬県警を相手に身分回復訴訟をしてる元警察から聞かされた。なぜ正義感強い若者が裏金作りに巻き込まれるのかと不思議だった俺には、全面的に信用する気は無いが、そうだったのかと判る話だった。
田中元検察官の話も、また同じ思いになるものだ。検察官も金なんだね。
本来、検察庁は警察を指揮出来る組織のはずだ。でも、現実は指揮どころか、捜査能力の無さが致命的で、警察の思うままにやられている。警察の違法、無法な捜査能力にブレーキをかけるどころか、つるんで悪事をしてる始末。証拠隠しは、その骨頂だろう。弱味でも握られてるのだろうか。捜査力を持つ警察に従わねば裏金などの不正を捜査されたら困るので、何も抵抗出来ないとあれば、それは納得の行く話だが、まあそこまでは無いだろうね。
田中森一さんの本は、検察庁の裏側と汚さを知る上では、それなりに面白いね。頑張れ、ムショ仲間!

挑戦状

2008-07-19 | Weblog
検察庁から、布川事件への挑戦の意志が漏れて来た。どうやら最高裁判所に特別抗告をするらしい。出来なかろうと思っていたので、本当に抗告するのだとしたら、呆れると言うか、笑っちゃうと言うか、こうでなければ日本では検察官が勤まらないのかも知れないと、可哀相にもなった。
重大な事実誤認を理由に特別抗告をするらしいけど、無実の証拠を、今でも隠して俺たちを犯人にしておきながら、良くやるよなあ!
検事総長の樋渡利秋、東京高検検事長大林宏、どっちも俺と同じ世代。俺が布川事件の犯人にされたとき、この検察トップとナンバー2の二人は大学生かな。特別抗告の方針は、上層部で決めたとの情報だから、二人の意志も明確だ。樋渡、大林の二人は、俺たちにした検察の不正より、検察のメンツを守る意志を示した。
我が人生に重なる歳月を検察官として生きた二人が、証拠隠しに口を拭って検察庁の犯罪行為を恥じともせず、我々を犯人にするとするために、更に理不尽な主張を重ねると言うならば、この正義に反する二人の悪意が日本の検察の実態であることを、日本全国で話し、訴えて、裁判員制度においても信用の出来ない検察庁の姿を、俺はひたすらに語るだけだ。いや、俺が語るまでも無く、社会の常識は、俺たちの闘い続ける姿を見て、検察庁の卑劣さと汚さを理解してくれるに違いない。41年にわたる闘いの月日は短くない。その間、検察庁がしたのは、俺たちの無実の証拠を隠すことだけだった。
樋渡さん、大林さん、俺は盗みをしたが、アナタたちのように醜い開き直りはしていない。アナタたちに正義や公正を求めても不可能だと判ったが、アナタたちが国民に支持されるのか、俺たちが支持されるのか、これからの俺の行動を見てるがいい。必ず後悔させてやる。
日本には沢山の冤罪がある。沢山の仲間が獄中で、社会で苦しんでいる。その仲間の力になれるような決定を最高裁で得られるように、俺は全力を尽くす。
樋渡検事総長、大林検事長、アナタたちは、布川事件の証拠の総てを見てるよね。不見当、見当たらないなどど、明らかな嘘を言って隠し続けてる証拠は、何を示し、何を語るのか、総てを知ってるはずだよね。
証拠隠しの犯罪行為を国民が許すのか許さないのか、アナタたちが挑戦状を出すならば、俺は、アナタたちの挑戦状を胸を張って受けるよ。