スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

戸口の雑感⑰&万有引力説

2024-03-02 18:51:19 | NOAH
 の最後のところでいった,戸口が家族を日本に呼び寄せるための飛行機代を馬場が出してくれなかったというのが誇張であるというのは,まずそのこと自体から説明できます。戸口が全日本での仕事をやめて新日本に移る理由として,それだけではあまりに弱いといえるからです。しかしその他の事情から,これは契機にはなったとしても,それだけが理由ではなかったということは明らかにできます。
 戸口は全日本の経営にはタッチしていませんでしたから,この当時の全日本の経営状態が厳しいということは知らなかったようです。だから,馬場がジャンボ・鶴田と戸口を呼んで,もうすぐ身を引くからふたりで会社を仕切っていくように言われたとき,その馬場のことばを文字通りに受け止めました。だからこれは引き留め工作だったのではないかと戸口は推定しているのですが,おそらく馬場にはそういう意図はなかったのではないかと僕は推測します。
 戸口は馬場のことばを真に受けたので,鶴田とふたりで頑張ろうと思っていました。ところが馬場は身を引くどころかリングシューズを新調しました。つまりまだ現役を続けるつもりだったのです。もとより馬場はそのつもりではあったでしょう。ただ戸口はそれをみて,馬場が現役を続行する意志があることを知ったのです。そのときに東京スポーツで新日本プロレスを担当していた記者に声をかけられ,猪木の懐刀であった新間寿に会いました。それで新日本に行くことになったわけです。
 ここから分かるように,戸口は全日本をやめる気はあったかもしれませんが,その後の仕事先のあてがあったわけではないのです。むしろやめようと思った後で新間に会うことになったので,スムーズに新日本に移籍できたのです。しかも,それは馬場が現役を引退すると自分たちに言ったのだと思ったのに,実際はそうではなかったからだということによって戸口のうちに生じたのですから,仮に馬場が戸口の家族を呼ぶための飛行機代を出したところで,やはり戸口は新日本に移籍することになったであろうと僕は思います。なので飛行機代の件を移籍の主要因としている戸口の発言には,誇張があると僕は思います。

 その当時の科学者たちがそれをどのように考えていたかは不明ですが,現代に生きる僕たちからすれば,遠隔作用論すなわち万有引力説が空虚vacuumを必要とするというのは,明白に誤りerrorであると断定することができると僕は思います。俗にニュートンIsaac Newtonはリンゴの実が木から落下するのをみて万有引力説を思いついたといわれています。しかしこの種の落下運動は地球上の至るところで発生する運動motusなのであって,かつそれが万有引力によって生じる運動です。ですから万有引力が作用するために空虚が存在しなければならないというのであれば,地球上の至るところに空虚が存在するといわなければならないでしょう。しかしそれが不条理であるということは,僕たちがよく知っているところです。この空虚は,真空という語を置き換えたものなので,それを文字通りの真空という意味に解すれば,それが不条理なことは容易に理解することができるでしょう。僕たちが地球上で生きていくことができるのは,地球上の至るところが真空ではないからなのです。
                                        
 國分はここのところをまったく説明していないので,事の真相は僕には分かりません。近接作用論と遠隔作用論の対立はデカルトRené Descartesやニュートンの死後,18世紀の半ばまでは続いたと國分はいっています。万有引力説が定着していったのはその後のことでした。そしてデカルトが自説として主張した渦動説は,荒唐無稽な説であると斥けられるに至ったのです。これは確かにその通りなのですが,だから空虚の存在existentiaが定着し,空虚の不存在は斥けられるに至ったということにはならないのではないかと僕は考えます。したがってこの部分は,空虚が存在するかしないかという対立であるよりは,遠隔操作論と近接作用論,すなわち万有引力説と渦動説との対立に絞って,國分のいっていることは事実であるというように僕は解します。
 ところが,遠隔作用論と近接作用論の対立だけをみても,必ずしも遠隔作用論が勝利したとはいえないと國分は指摘しています。なぜなら,アインシュタインAlbert Einsteinは重力を,非ユークリッド的な場の概念notioを導入することで説明するのですが,この説明は,遠隔作用論ではなく近接作用論に近いからです。
コメント
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