スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

高松宮記念&しるしの無限遡行

2024-03-24 19:18:02 | 中央競馬
 香港から1頭が遠征してきた第54回高松宮記念
 少し押したビクターザウィナーが前に出て,その後で内からマッドクールが出てきたのでやや牽制し合いましたが,そのままビクターザウィナーの逃げとなってマッドクールが2番手。3番手にはルガルが上がり,その後ろはウインカーネリアンとママコチャ。さらにビッグシーザーとトウシンマカオが並んで続き,8番手にテイエムスパーダ。以下はメイケイエール,ソーダズリング,ナムラクレア,シュバルツカイザーの順で続き,ロータスランドとウインマーベルが併走。2馬身ほど開いてシャンパンカラーとディヴィーナ。マテンロウオリオンが続いて最後尾にモズメイメイ。前半の600mは34秒9の超スローペース。
 ビクターザウィナーが先頭のまま直線に入りましたが,少し外に持ち出しました。その外に並んできたのはウインカーネリアン。マッドクールはそのまま内を進出。内を回ったマッドクールの方が外の2頭よりも前に。マッドクールを追うように内を回ってきたのがナムラクレア。1頭分だけ外に出し,マッドクールを追い詰めてフィニッシュ。しかし届かず,優勝はマッドクール。ナムラクレアがアタマ差で2着。逃げたビクターザウィナーが3馬身差で3着。
 優勝したマッドクールは重賞初制覇での大レース勝利。ただこの馬は一昨年の5月から12月にかけて4連勝してオープン入りし,CBC賞の3着を挟んでオープンを勝利。昨秋のスプリンターズステークスも2着でしたから,十分に通用する能力をもっているということは明らかでした。直線で逃げた馬が外を回ったのに対し,そのまま内を突いたという騎手の判断がよかったということになるでしょう。着差を考慮すると,ペースには恵まれたといえそうです。
 騎乗した坂井瑠星騎手は全日本2歳優駿以来の大レース8勝目。高松宮記念は初制覇。管理している池添学調教師は一昨年のホープフルステークス以来の大レース2勝目。

 スピノザはDeusが存在するということを証明するよりも,現実的に存在する人間の知性intellectusが,神を十全に認識するcognoscereということの方を重視していました。この姿勢は『知性改善論Tractatus de Intellectus Emendatione』の時代にも同様です。ですから人間がいかにして神の十全な観念idea adaequataを有するのかということの方法論は『知性改善論』の主要なテーマになっています。スピノザはこのことについてかなり試行錯誤していて,『知性改善論』は未完のまま中断されています。ですからそこの部分でのトートロジーが『知性改善論』では目立っています。とはいえ,知性の道具instrumentumとしての真理veritasに関する無限遡行も,『知性改善論』の中では解決されているわけではないので,僕たちがそれを読む限り,スピノザは道具の無限遡行を解消するために,新たな課題としての真理の標識signumに移行したというように解せるようになっています。
                                        
 しかし一方で,國分自身が指摘している通り,道具の無限遡行についてはスピノザは軽視していたようにみえますので,もしかしたらスピノザはそれは解決済みであるとか,まだ済ませてはいないけれども簡単にけりがつけられることであると思っていた可能性がないわけではありません。もしその場合には,スピノザが真理のしるしsignumという課題を探求し始めたのは,道具に関する無限遡行を解消するためだったというわけでは必ずしもなく,単に道具とは別の課題であるしるしについて考察し始めただけであったかもしれません。そこのところにはっきりとした関係があったのかなかったのかということについては,スピノザの意図としては不明であると僕はしておきます。
 國分が指摘しているのは,実は真理のしるしを追い求めたとしても,道具と同様の無限遡行に至る筈だということです。これは次のように考えるとよいでしょう。もしもある何らかの事柄が真理のしるしになると仮定します。しかしその場合,それが確かに真理のしるしであるということを確証するためには,それが確かに真理のしるしであるというしるしが必要であり,それもまた真理のしるしのしるしであるということを確証するような別のしるしを必要とするといった具合に,この関係が無限に連鎖してくことになるのです。
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