スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

新会長&勝負の視点

2022-01-22 19:22:17 | 将棋トピック
 動議と解任によって日本将棋連盟が自浄能力があるということを示した時期より前のことになりますが,会長である谷川は辞任していました。このために新しい会長を選出する必要がありました。
 将棋連盟の会長は,会社に喩えれば社長です。その観点からは経営能力や実務能力が問われるのであり,棋力は無関係です。ですが将棋連盟は会社ではなく,社団法人ですので,会長は将棋界の顔,少なくともプロの将棋棋士の顔という面を合わせもちます。この面からは棋力や実績というものが求められます。たとえば会長がスポンサーなど,外部の組織の実力者と対面するとき,会長に将棋そのものの実力や実績があるかないかということは,おそらく重視される要素になり得るからです。このために将棋連盟の会長というのは,棋士としての実績を持つ者がずっと務めてきたという歴史があるのです。
 しかしこのときは,単に実力や実績があればよいというものではありませんでした。それはいうまでもなく,谷川が辞任した理由というのが,三浦九段に対する処分の不適切さにあったからです。したがって,次の会長は,ただ棋力や実績があるというだけでは不十分で,三浦九段本人や三浦九段の無実を支持して支援した棋士たちが納得することができる人材でなければならなかったからです。辞任する谷川が白羽の矢を立てたのは佐藤康光で,佐藤は谷川が辞任した後の理事選挙に立候補し,会長を務めることになりました。
 棋士としての実績でいうと佐藤は谷川には劣りますが,永世称号を獲得している棋士であり,将棋連盟の顔になるには十分です。一方で,処分が明けて復帰することになった三浦は,それに先立つ記者会見の中で,佐藤は十分に信頼に値する人物であるという主旨の発言をしていて,こちらの面でも問題は生じることがありませんでした。
 このとき,佐藤のような,棋士としての実績が十分でかつ三浦からも信頼されている人材が将棋連盟の中に存在したことは,まことに幸運だったと僕は思います。もし佐藤が存在しなければ,その後の将棋連盟の進路は大きく変わってたかもしれません。

 ことばと観念というのが異なったものであるということ,そしてそれがどのように異なっているのかということは理解できたと思います。そしてこのために,自身の精神mensのうちにある観念ideaがあるからといって,だれであってもそれをうまく言語化することができるわけではないのです。もちろんそこには得手不得手というものがあるのですが,飯田はおそらくそれがきわめて不得手な人物であったのだろうと推測されます。飯田は確かに第三種の認識cognitio tertii generisに依拠して麻雀をプレイしていて,その第三種の認識を発揮するだけの第二種の認識cognitio secundi generisが知性intellectusのうちに蓄積されていたのですが,その第二種の認識によって形成された観念がいかなる観念であるのかということを,他者に伝わるような仕方で言語化することはできなかったのだろうということです。
 近藤は,僕のようにスピノザの哲学に依拠した理解ではなく,右脳と左脳の働きの差異によって飯田のことを理解していますので,記述上の説明は異なります。すなわち飯田は,右脳の働きのあり方を,左脳によって言語化することができなかったというように理解しています。ただこれは手法の違いであって,それを脳の働きで説明するか哲学で説明するかの相違だと僕は解します。近藤がなそうとしているのは,飯田が言語化することができなかったことを,自ら言語化しようということだともいえます。最初に紹介したように,飯田は最強のプロの麻雀のプレイヤーであった可能性があると僕は思っていますが,飯田のどこが強かったのかとか,飯田がなぜ強かったのかということは,飯田自身が言語化して説明できなかったので,よく知られていないというのが実際のところです。近藤の著書は自身のプレイの解説に終始していますが,近藤は飯田の強さを言語化して広く伝えようという意図はおそらくもっていて,著書はそのような試みのひとつであるという見方もできるかと思います。
                                            
 この右脳と左脳の働きの相違については,同じようにそれに着目していた将棋の棋士がいます。青野照市です。青野に『勝負の視点』という著書があるのですが,その中に週刊将棋に寄せた「右脳が左脳に勝つ日」という文章が含まれています。
コメント
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