スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

外国人レスラー最強列伝&善悪と真偽

2018-02-03 19:01:10 | NOAH
 門馬忠雄の『全日本プロレス超人伝説』は,三部作の一作です。その前に書かれたのが『新日本プロレス12人の怪人』で,『全日本プロレス超人伝説』を挟んで『外国人レスラー最強列伝』で完成しました。『新日本プロレス12人の怪人』は僕は現時点では読んでいませんし,あまり読もうという気も起りませんが,『外国人レスラー最強列伝』の方はすでに読了していますので,簡単に紹介しておきます。
                                     
 『全日本プロレス超人伝説』のプロローグの中で,門馬は自身のことを馬場べったりの記者と書いています。これは全日本プロレスを中心に取材したという意味かとも思っていたのですが,そうではありません。『外国人レスラー最強列伝』の第1章の冒頭で,門馬は馬場党でアンチ猪木派であること,そしてテーズ派であってゴッチ嫌いであるとはっきりと書いているからです。なのでこれら三部作を読むときには,そういうフィルターも入り混じっているであろうことを念頭に置いておいた方がよいでしょう。
 体裁は『全日本プロレス超人伝説』とあまり変わらず,各章でひとりのレスラーについて言及されるという形で,13章まであるので全部で13人です。すでにこのブログでとりあげたレスラーがふたり含まれています。ひとりは第8章の人間発電所で,もうひとりが第11章の人間風車です。
 第1章のルー・テーズ,第2章のカール・ゴッチ,第5章のフリッツ・フォン・エリック,第7章のジン・キニスキー,第9章のディック・マードック,第12章のジプシー・ジョー,第13章の大木金太郎についてはいずれ個別に取り上げます。
 残りは第3章が噛みつき魔のフレッド・ブラッシー,第4章が黒い魔人のボボ・ブラジル,第6章が生傷男のディック・ザ・ブルーザー,第10章が柔道王のウィレム・ルスカです。馬場にとって最大の好敵手はブラジルだったのではないかと思える部分はあるのですが,これらの選手については僕には多くを語ることができませんので,個別には割愛します。

 不安metusすなわち恐怖metusも希望spesも,混乱した観念idea inadaequataとともにでなければあることができない感情affectusなので,Xに対して不安を感じようと希望を抱こうと,それはXに対しては必然的にnecessario虚偽falsitasです。よって恐怖にしろ希望にしろ,そこから生じる欲望cupiditasは虚偽に基づいた欲望であることになります。自由の人homo liberは真理の規範に自覚的ですから,それが虚偽であるということを理解します。つまり虚偽には陥るけれども誤謬errorには陥らないのです。なおかつ不安に関していえば,それは自由の人にとってはそれ自体で無用でありまた悪malumなのですから,不安から生じる欲望に流されるようなことはありません。そしてこれは同時に,希望から生じる欲望に流されることもないという意味です。なぜなら,第三部定理五〇備考にあるように,不安と希望は表裏一体の感情であるからです。
 このゆえに,自由の人が自身の恐怖をそれと相反する希望によって打ち消すことを,僕は全面的に肯定します。打ち消された不安も打ち消した希望も,どちらも虚偽であるということを理解した上で,このような対処法を意図的に採用しているとみられるからです。一方,不安に苛まれているより希望に満ち溢れている方がまだましなので,無知の人がこのような手法を採用しても,僕は絶対的な意味においてこれを否定はしません。ですが全面的には肯定しません。というより部分的には否定します。というのは無知の人は打ち消した希望が虚偽であるということには気付いてなく,よって真理の規範を見失い,誤謬を犯すおそれが大であるからです。
 同じ受動状態にあるなら悲しみtristitiaに沈んでいるよりは喜びlaetitiaに浸っている方がましであるというのは,善悪の観点からまだましだと僕はいうのです。これは第四部定理八がその論拠になります。したがって自由の人であろうが無知の人であろうが関係なしに,恐怖を希望で解消することは,少なくともその当人にとっては善bonumです。ところが,虚偽に基づく善について,それが虚偽であるということに気付かない場合には,その人間はただそれを善とみなすというだけではなく,真verumであるともみなすようになるのです。僕はこの点について,こうした不安の解消法を否定します。
コメント
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