スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

JRA賞&混乱した観念の排除

2016-01-09 19:17:06 | 中央競馬
 6日に2015年のJRA賞が発表になりました。競走馬部門のみ紹介します。
 年度代表馬はモーリス。条件戦を連勝してオープン入りするとダービー卿チャレンジトロフィーを制覇。その後は安田記念,マイルチャンピオンシップ,香港マイルと大レースを3連勝。6戦全勝でGⅠ3勝,単純な能力面からいっても昨年の最強馬ですから当然の受賞でしょう。部門別では最優秀短距離馬。1800mに1戦のほかは1600m。純粋な短距離馬というのとは違うと思いますが,このカテゴリーの代表馬に選出されるのも納得です。
 最優秀2歳牡馬は朝日杯フューチュリティステークスを勝ったリオンディーズで最優秀2歳牝馬は阪神ジュベナイルフィリーズを勝ったメジャーエンブレム。この部門についてはとくにいうことはありません。
 最優秀3歳牡馬は皐月賞ダービーを勝ったドゥラメンテ。後半はお休みになってしまいましたが,大レースを2勝しているのはこの馬だけなので順当でしょう。
                                  
 最優秀3歳牝馬はオークス秋華賞を勝ったミッキークイーン。満票だったようにこちらもきわめて順当でしょう。
 最優秀4歳以上牡馬は宝塚記念天皇賞(秋)を勝ったラブリーデイ。ほかに中山金杯,京都記念,鳴尾記念,京都大賞典も勝っています。これだけの実績なら選ばれて当然なのですが,これは多くの馬に受賞させたいという情実が働いたものです。最も優秀な4歳以上の馬がラブリーデイで,年度代表馬がモーリスというのは本来ならあり得ない選択。情実で投票する記者がかくも多いことを僕は残念に思います。モーリスが受賞するべきでした。
 最優秀4歳以上牝馬はジャパンカップを勝ったショウナンパンドラ。ほかにオールカマーを勝ちました。昨年のジャパンカップのレベルはさほど高くなかったと思いますが,牡馬相手に最高峰の大レースのひとつを勝ったのですから,当然の受賞であると思います。
 最優秀ダートホースはフェブラリーステークスJBCクラシックを勝ったコパノリッキー。東海ステークスも勝っています。JRA賞はまず中央競馬で行われたレースの勝ち馬が優先されるべき。この観点からいって妥当な選出であったと僕は思っています。
                                
 最優秀障害馬は中山グランドジャンプ中山大障害を勝ったアップトゥデイト。小倉サマージャンプも制しました。これはこの馬しかありません。満票にならなかったのが意外です。

 虚偽の積極性が真理veritasによって排除されないとは,具体的には次のことを意味します。
 まず,何らかの有限知性があると仮定します。知性intellectusは個々の観念ideaの総体です。したがって有限知性は数え上げることができるいくつかの観念によって組織されていることになります。そこでその観念のひとつに,Xの混乱した観念idea inadaequataがあると仮定します。次に知性がこの状態にあるとき,同じ知性のうちにXの十全な観念idea adaequataが発生すると仮定します。要するに同じ知性のうちに,観念対象ideatumが同一であるXの,混乱した観念と十全な観念の両方が現実的に存在すると仮定するのです。このとき,Xの混乱した観念が,Xの十全な観念が発生することによって,その現実的存在を除去されるということは生じないのです。
 これは『エチカ』で言及されている月の例から明白です。僕たちは月を実際にある位置より近くにあるように表象します。月と地球との間の距離を十全に認識していようがいまいが,この表象imaginatioには変化がありません。それは表象には虚偽falsitasの積極性が含まれているからです。だから僕たちはたとえ実際に月が自分からどれだけ離れているかを正しく知っていたとしても,月を見た場合には,それが実際よりはずっと近くにあるものとして認識するcognoscereのです。
 ここから分かるように,Xの十全な観念というのは,Xの混乱した観念を除去する原因causaにはなり得ないのです。これはそれらの観念が同一の観念対象であり,かつ同じ知性のうちにあるという場合に成立しているのですから,一般に十全な観念が混乱した観念を排除する原因にはなり得ないのは当然だといえます。
 しかし,この場合には次の点には注意しておかねばなりません。
 アルベルトAlbert Burghが感じた地獄に対する不安metusは,第三部諸感情の定義一三第三部定理五九から,アルベルトの知性の一部を構成する混乱した観念から生じる感情affectusでした。このとき,この不安という感情だけに注目し,不安を発生させている混乱した観念を考慮の外に置くとするなら,この不安が真理によって除去されるということはあり得ます。これはスピノザも,第四部定理一の後の備考Scholiumで示している通りです。
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