浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

地獄でなぜ悪い?

2013-10-05 20:39:07 | DVD、映画
園子温監督作品ってもちろん嫌いじゃない。

と言っても観たことあるのは「愛のむきだし」「冷たい熱帯魚」「ヒミズ」「希望の国」くらいだけど。

今まで観た中では「冷たい熱帯魚」が一番好き。(共同脚本は2・3映画評論家であり世界一のイウォークファン、高橋ヨシキ大先生)

嫌いじゃないし、観れば観たで「おお!」と思うところはあるんだけど、なんとなく全体として「超いい!」という感じにならないんだよなぁ。

たぶん終わり方が僕にあんまり合わないのかな、とも思う。

で、最新作の「地獄でなぜ悪い?」を観ました。



超いい!

最高です。

服役中の妻のためにヤクザの親分が自分の娘を主役に映画を撮る。それに巻き込まれた普通の男と映画バカの男、抗争相手のヤクザの組長、の話。

エキセントリックなところもあるしオーバー気味な演技(特に堤真一の顔芸。僕は好きだけど)もあるから合わない人は合わないと思うけど、僕は大興奮しました。

まず冒頭10分で笑った笑った。組長の妻役、友近の名演。この人はいい女優さんだねー。血まみれ、というかプール並みの血のリビング。街中を血まみれで出刃包丁片手に走り回る友近。最高でした。

昨今、暴力表現とかが日本ではうるさいけど、なんなの、園子温は何やってもいいの? もうぐっちゃんぐっちゃんの血まみれでした。巻き込まれた男がコカイン吸っちゃって日本刀で○が真っ二つになってるのに虹色の幻覚視るとかすごいよ。

映画バカの男が「いつか映画の神が来る!」と叫ぶ。「いつ来るんだよ!?」と聞かれて「いつかは分からない。でも必ず来る。今日までそれを信じてきて、その日が今日かも知れない。なのに今日あきらめるのか?」と答える。「その日」を信じてまともな仕事もせず30近くになるのにバカみたいな映画を撮っている。本当にどうしようもない。手の施しようもない。だけど僕は笑えなかった。桐島でドラフトを待っていたキャプテンとおんなじなんだもん。仏教では弥勒菩薩が56億7千万年後に現れてすべての人を救うと言われている。その話を思いだした。

そしてラストの抗争シーン。なぜか泣けて仕方無かった。「なんでこんなシーンで自分は泣いているんだ?」と不思議に思いながら泣いていた。この感覚は桐島の最後のゾンビシーンで泣いたのと近い。

たぶんこの世は地獄でそれは仕方ない。弥勒菩薩が来るのだって56億7千万年後。でも好きな事を好きなようにやれるなら、地獄だって悪くない。