浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

2013-04-13 01:09:43 | 村上春樹
今日の話はずいぶん独りよがりで偉そうな話になると思います。まぁいつもなんですが。

村上春樹の新刊の話なんだからどうか許していただきたい。

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」を読みました。

たぶん平均的な30代男性よりは小説を読むほうな僕が、一番好きな作家が村上春樹です。だから、独りよがりな感想を言うことくらいは許して欲しい。

「1Q84」もそうだったけど、最新作を読んで本当に思うことがある。

それは、「なんでこんな小説が数百万部も売れるんだろう」ということです。

もちろん「こんな小説」と言うのは「こんなにつまらない、くだらない小説」と言う意味じゃない。

繰り返すけど僕が一番好きな作家は村上春樹なんだから。

この最新作もたいそう楽しんだ。

読んでて、うまく表現できないけど、足元が崩れるような、よく分からないけど「身体に直接響くような」感覚があった。

でも、読んでいる間、思っていたことは「これを本当に心から理解できるのは僕だけなんじゃないか」と思った。

主人公は36歳の独身男性。高校時代に大きな出来事があって、それは彼を深く傷つけている。

そんな彼の「巡礼の年」に起こった出来事を、まるで自分のことのように理解できるのは、世界中で僕だけなんじゃないかと思う。

もちろん現実的にはそんなはずが無い。

村上春樹が「僕だけのために」小説を書いているわけがないし、「これは自分のために書かれている」と感じる人は世界にたくさんいるだろう。

この小説が数百万部も売れているということはつまり、この小説を読んで「この小説は、世界中でたった一人、自分のためだけに書かれている」と思う人が世界には数百万人いる、ということだろう。

そういう人が数百万人もいるこの世界を、僕は案外きらいじゃない。