浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

過去は

2011-10-14 23:27:39 | 
誤解を招くかも知れないけど僕は「いいから黙ってこれやれ!」って教育があってもいいと思ってます。

よくドッピオさんと話すんだけど。

日本的な教育の基本というのはこれでしょ?

だいたい弟子入りするとまずは雑巾がけとかなわけじゃないですか。

で、「俺は空手を習いに来たんだ、掃除しに来たわけじゃない!」と弟子が反発しても師匠が「いいからやれ!嫌なら帰れ」ですよね。

そして弟子が嫌々ながら雑巾がけしつつ「そうか、これは単に雑巾をかけてるわけじゃなく足腰の鍛錬なんだ」でもいいし「そうか、こうやって道場をきれいにすることで心の鍛錬になってるんだ」と弟子本人が気づく、これが本当に大事。

振り返ってみると僕自身「これを勉強するとこういう効果があるよ」と言われて勉強したことより、意味はよく分からないけどやらせているうちに「あ、これってこういうことか」と気づいたことのほうが心に残ってる。

もちろん「あれ、ほんと意味なかったよなぁ」と思うことだってたくさんあるんだけど。

つまり「いい弟子」というのは師匠から何を言われようと勝手に「あ、これはこういう意味か」と気づくことが出来る。それが完璧になったらもうその人は何からでも学べるよね。「我以外皆師」の境地。

そういうことを思ったのはね、こないだある研修を受けたんですよ。

講師は一部では超有名人、原田隆さんという方。

元々僕がこの人を知ったのはこの本を読んだから。



どういう人かと言うと、大阪の公立中学校の体育の先生だった人。荒れに荒れていた松虫中学校という中学校の陸上部の顧問となり日本一にした。その方法が解説されている。

公立中学校の部活というのはかなり不安定なんだよね。

公立だから陸上のいい生徒を集めるということが出来ない、入って来た生徒たちでなんとかするしかない。公立でも高校ならまだ「陸上やるためにあそこに行こう」と入ってくる生徒もいるだろうけど中学は地域で分けられてしまう。

顧問は陸上の専門家とは限らない。教員なんだからメインは授業。

更に、いい顧問がいても教員だから定期的に転勤してしまう。いくらいい顧問がいて強くなってもその先生が転勤してしまえばゼロからスタート。

そういう状況な上に松虫中学校というのは当時非常に荒れていて部活どころか通常の学校生活もままならないほどだった。

まさに「スクール☆ウォーズ」の世界。

そこでこの原田先生と言う人は数年で陸上部を変え日本一にさせた。更に言うと原田先生が転勤して数十年経った今でもここの陸上部は強い。一昨年が全国大会二位で今年が一位だったかな?たぶん。

つまりこの人は単に自分が陸上部を鍛えただけでなく、自分がいなくなっても続く「仕組み」を作った。

その仕組みとはどういうものか、ということがこの本に書かれている。

僕が読んだのはたぶん5年ほど前だけど非常に興味深かった。

色々な方法があるけどその一つが「心を磨く」ということ。荒れている生徒たちを前向きにさせるためにいろいろモチベーションをかけるわけだけど、それに加えて「小さい約束」を徹底的に守らせた。たとえば「毎日必ず家で皿洗いをします」と決めた生徒にはたとえ合宿所でも合宿所の皿を洗わせた。

一見、「そんなことが陸上と何の関係があるんだ?」と思うけどやっぱり半年間毎日皿洗いをした生徒は陸上でもしっかり成果を出す。

おそらくだけど陸上の試合でしんどいときに「でも、俺は半年毎日皿を洗ったんだ」と自信になったんだろう。それこそ最初は「先生がやれって言ったから」嫌々やっていたんだろうけど、それでもやってるうちに「これだけやってるんだから俺は負けない」と気づいたのかも知れないね。

この人がいま教職員や企業向けに研修を行っていて、その研修を受けたんです。

色々、気づきの多い研修でねぇ。

原田先生自身はちょっと怖い人かな、と思っていたら腰の低い明るい元気な真っ当な人でその人の話聞いてるだけで楽しかった。

終わった後に「よっしゃ、がんばろ」と思える研修はいい研修だね。

その中で小さいけれど衝撃だったのが、過去についての話。

僕自身は「他人と過去は変えられない、変えられるのは自分と未来だけ」と思っているんだけど、研修でも原田先生が出席者にこう尋ねた。

「過去は変えられません。じゃあ過去はどうしたらいいでしょうか?」

出席者が口々に「忘れる」「気にしない」とか言ってたら先生が大きくこう言った。

「過去は無視!無視です!関係ない!完全無視!」

あはは。いいね。

そう、無視ですよ、やっぱね。
コメント
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