ハリックの診断即治療&虹彩と、Kenさんの経済学&スケッチ

虹彩には、体質や、現在、過去、未来、のデータが秘められています。虹彩学による虹彩分析を針灸、巨針、食事療法の指針に!

森田りえ子・美人画を語る(スケッチ&コメント)

2009-11-09 16:39:40 | スケッチ


森田りえ子・美人画を語る

江嵜企画代表・Ken



 日本画家、森田りえ子さんが「美人画を語る」イベントが、11月3日、京都美術倶楽部(「思心閣」主催)で開かれるというので、楽しみにして出かけた。当のイベントには、「ザ・モダニズム」という副題がついていた。個人が所蔵する大正から昭和初期にかけて活躍した画家による美人画53点が一堂に会して、目と鼻の先で見られるまたとない機会を堪能することが出来た。

 講演会場は畳の部屋だった。定員50名である。一部に折りたたみ椅子が用意されていたが、座布団が部屋一杯に敷き詰められていた。森田りえ子さんが、美人画についてどんな話をされるのか、興味深々、聞き入った。元「森田りえ子日本画教室」の生徒たちも、筆者を含め大勢詰めかけていた。会場の様子をいつものようにスケッチした。

 森田りえ子さんは、彼女の知人のさる染色家がデザイン、染めて仕立てた、その日着おろしの着物姿で登場した。プロ意識を感じるのは、彼女が常に笑顔をたやさないことである。頭の回転がいいのであろう、それでいて、司会の質問に対しては当意即妙に、また、さすが落語が大好きと言うように、ユーモアあふれた語り口調はいつもながらに見事であった。

 岡本栄氏(関西テレビアナウンサー)が、森田りえ子さんと「開運!なんでも鑑定団」にも出ている「思文閣」社長の田中大氏それぞれに、特に選ばれた、プロジェクターに写される美人画について感想を聞くと言うか、質疑応答の形式で進められた。午後3時から約1時間半があっという間に過ぎた。

 山川秀峯の「花簪の女」は、会場に配られた美人画パンフレットの表紙絵にも選ばれた舞妓さんの絵である。その絵が写された時、森田さんは「いま舞妓の絵を描いています。この絵の舞妓の顔は、カメラ目線で描かれている。80数年前なのに、非常に今風なんですね」と答えた。田中社長は「わずか15年ほどの時代だったが、さまざまな日本画家が、形式にとらわれず、内面に深く入り込んで描いた。」と言葉を添えた。

 樋口富麻呂の「化粧」は、鏡台に向かって化粧する舞妓が描かれている。舞妓になって一年間は、口紅を下唇につけることしか許されない。この絵は上唇に今まさに紅をさそうとする時の姿を描いている。「手の表情は軽く描いています。乳房をはっきりと描いているんですよ。わたしはそこに男目線を感じます。」と森田さんは答えた。

 寺島紫明の「夕月」という絵は、年若い日本の娘が素肌に部屋着をひっかけて、積み荷にもたれ、花簪の房を弄ぶ姿を描いている。森田さんは「わたしはこの絵の身八口(みやつくち)に目が行きました。」と答えた。「身八口」とは、和服の身頃の脇明けである。袖付けの下、脇縫いの上の部分と広辞苑にはある。「絵描きがそこを見つけた時の嬉しさをこの絵に感じますね。」と森田さんは話をつづけた。

 森田りえ子さんがパリ特別展に出展した「KAWII」がプロジェクターに特別「出演」した。3人の若い女の子が思い思いの服装を着て楽しそうにスキップしている絵である。「バックは白を基調にあっさりした色づかいにしました。色と構図で勝負しています。」と森田さんは答えた。以前、見事な群青色の菖蒲を描かれた時、「私は菖蒲で勝負した」と話した時があった。絵は格闘技だと、彼女は常に口にするが、日々勝負する姿勢が森田りえ子さんの真骨頂なのであろう。「あるテレビを見ていた時この絵を描こうと思いました。テレビに映っていた原宿へすぐに出かけました。いろいろな店を回りました。服を片っ端から買いました。一日では終わらず次の日もまた次の日も出かけて買いました。モデルさんにとっかえひっかえ着てもらいスケッチしました」と裏話を森田さんは披露した。

 森田りえ子さんが絵描きになると決めた時、京都のさる画材店で、「そこにある絵具全部買います」といったという話をご本人から聞いたことがある。森田りえ子という画家はそういう画家である。舞妓さんの絵を描くとき、画材に使う簪(かんざし)や櫛(くし)も入れて、鬘(かつら)まるごと、大枚はたいて買ったと言う話も聞いた。プロの画家なら当たり前のことだとご本人は答えるが、このあたりが並みの画家でない証査の一つかもしれないと思っている。

 「かぎりある命です。毎日を大切にして、絵描きをこれからもつづけます」と森田さんは最後に挨拶された。健康に恵まれたとおっしゃるが生身の人間である。くれぐれも健康にだけは注意して欲しい。それが日本画の手ほどきを森田りえ子先生に受けた生徒全員の気持ちであろう。(了)

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする