喫茶「いけだ」のお馴染みの客人のひとりが、店に
入ってくるなり、昭和13年7月はじめに起こった
神戸大水害の体験談を突然、話しはじめた。
聞くともなしに聞いていると、小学校4年生の時だというから
10歳か11歳であろう。67年前の話だから歳がわかる。
住吉川がアッという間に氾濫し瞬く間に自宅は冠水したという。
住吉界隈でも多数の行方不明者が出たそうだ。
阪急電車の御影駅は現在、住吉川から数百メートル
西に位置しているが、水害まえは住吉川をまたいで川の上に
建てられていた。いまの芦屋川駅や夙川駅と同じスタイルであろう。
元駅のあった付近には戦後かなりの期間、水害時、
山から転がり流れた巨岩がそのまま放置されていたのが
見られたものだ。
谷崎潤一郎は、名作『細雪』に、水害当時の
芦屋、住吉の悲惨な状況を実に生々しく描写している。
筆者はその水害を神戸の三宮で生後5日目に
経験したことを大きくなってから聞いた。
産後の肥立ちの悪かった母を助けて、85歳でいまなお健在の
母の従妹が布引の滝近くまでオムツの洗濯に出かけたそうだ。
その母の従妹の父上が加古川の別府というところから
伝馬船に飲料水を積み込み水が手にはいらない
神戸三宮まで運んでくれたという話も聞いた。
また、祖母の話では三宮の表通りを歩いていた多くのひとが
暗渠(あんきょ)にスポイドに吸い取られるように消えていったと
いうから水流の多さ早さそして水害の恐ろしさに驚かされる。
筆者の従姉の連れ合いの話では、そのとき、小学2年生で、
長田小学校の横を走るバス道を濁流が襲ってきたので、
自宅の2階に避難したそうだ。
いろいろ話を総合すると、神戸大水害時、
東は芦屋、西は長田界隈まで広範囲に
濁流が襲ったことになる。
いまは緑鮮やかな六甲は当時は禿山だった。
大水害の教訓を生かして砂防ダムが築かれそのごの
大雨でも、幸いなるかな、大きな被害は起こっていない。
暦では夏至が過ぎたが、梅雨最中なのに雨が降らない。
神戸は風が流れているから好きだと日本画家、森田りえ子さんは
いつもおっしゃる。神戸に長年住んでいるとそれを実感する。
その神戸が梅雨最中の連日の熱帯夜だからまさに異常気象以外
なにものでもない。
67年前の神戸大水害を知るひとがどんどんいなくなり
淋しい限りである。
しかし、災害は忘れたころにやってくるという言葉もある。
喫茶『いけだ』での今朝の何気ない一言が
いろいろなことを教えてくれているのかもしれない。(了)
Kenさんのスケッチは、ブログ容量の関係で削除させて頂きましたが、11月1日に、「かんぽう」さんから『ユニークに乾杯』というタイトルで出版予定です。定価2.000円。
ISBN978-4-904021-03-3 C0071 1905E
株式会社 かんぽうサービス ℡06-6443-2173
大阪市西区江戸堀1-2-14 肥後橋官報ビル6F(〒550-0002)
入ってくるなり、昭和13年7月はじめに起こった
神戸大水害の体験談を突然、話しはじめた。
聞くともなしに聞いていると、小学校4年生の時だというから
10歳か11歳であろう。67年前の話だから歳がわかる。
住吉川がアッという間に氾濫し瞬く間に自宅は冠水したという。
住吉界隈でも多数の行方不明者が出たそうだ。
阪急電車の御影駅は現在、住吉川から数百メートル
西に位置しているが、水害まえは住吉川をまたいで川の上に
建てられていた。いまの芦屋川駅や夙川駅と同じスタイルであろう。
元駅のあった付近には戦後かなりの期間、水害時、
山から転がり流れた巨岩がそのまま放置されていたのが
見られたものだ。
谷崎潤一郎は、名作『細雪』に、水害当時の
芦屋、住吉の悲惨な状況を実に生々しく描写している。
筆者はその水害を神戸の三宮で生後5日目に
経験したことを大きくなってから聞いた。
産後の肥立ちの悪かった母を助けて、85歳でいまなお健在の
母の従妹が布引の滝近くまでオムツの洗濯に出かけたそうだ。
その母の従妹の父上が加古川の別府というところから
伝馬船に飲料水を積み込み水が手にはいらない
神戸三宮まで運んでくれたという話も聞いた。
また、祖母の話では三宮の表通りを歩いていた多くのひとが
暗渠(あんきょ)にスポイドに吸い取られるように消えていったと
いうから水流の多さ早さそして水害の恐ろしさに驚かされる。
筆者の従姉の連れ合いの話では、そのとき、小学2年生で、
長田小学校の横を走るバス道を濁流が襲ってきたので、
自宅の2階に避難したそうだ。
いろいろ話を総合すると、神戸大水害時、
東は芦屋、西は長田界隈まで広範囲に
濁流が襲ったことになる。
いまは緑鮮やかな六甲は当時は禿山だった。
大水害の教訓を生かして砂防ダムが築かれそのごの
大雨でも、幸いなるかな、大きな被害は起こっていない。
暦では夏至が過ぎたが、梅雨最中なのに雨が降らない。
神戸は風が流れているから好きだと日本画家、森田りえ子さんは
いつもおっしゃる。神戸に長年住んでいるとそれを実感する。
その神戸が梅雨最中の連日の熱帯夜だからまさに異常気象以外
なにものでもない。
67年前の神戸大水害を知るひとがどんどんいなくなり
淋しい限りである。
しかし、災害は忘れたころにやってくるという言葉もある。
喫茶『いけだ』での今朝の何気ない一言が
いろいろなことを教えてくれているのかもしれない。(了)
Kenさんのスケッチは、ブログ容量の関係で削除させて頂きましたが、11月1日に、「かんぽう」さんから『ユニークに乾杯』というタイトルで出版予定です。定価2.000円。
ISBN978-4-904021-03-3 C0071 1905E
株式会社 かんぽうサービス ℡06-6443-2173
大阪市西区江戸堀1-2-14 肥後橋官報ビル6F(〒550-0002)