森田りえ子展風景・大丸京都店
江嵜企画代表・Ken
「パリ展帰国記念 森田りえ子展」も24日で閉幕となる。最後のギャラリートークがある23日をねらって会場の大丸京都店へ楽しみにして出かけた。正式な数字は分からないが毎日3000人近い人がつめかけているそうだ。トークショ―は午後2時からだったが森田りえ子さんは1時少し回ったところで恒例により日替わりの新品、少しシックな感じの着物姿で現れた。
姉上に伺ったら、夜いただいた濃いお茶で目が冴えてなかなか眠れず、そのせいもあってか、22日は疲労もピークだったそうだ。今朝は十分睡眠が取れたと言っていたので元気ですよ、と答えてくれた。この日は森田画伯のモデルを長年勤めたというご婦人がトークショーの会場にお見えで、森田さんから紹介された。
モデルの時は独身だった。今回はお母さんになっておられた、とにこにこしならがら話された。「絵とそっくりや」「よう似てはるは」、とまわりで口ぐちに話す言葉が聞こえた。このモデルさんとはある日電車の中で出会った。この人だと直感した。彼女が降りた駅で降り、追いかけ、頼み込んでモデルになってもらったエピソードがある。人生全て出会いで決まる。
絵描きは絵を描く。描いたものを見ていただく。画家とのキャッチボールだ。絵との出会いがきづなとなって共感がひろがる。今回の帰国展は大学院を出て丁度30年目の節目の年にあたり、ターニングポイントにしたい。明日から新たな船出を致します。南蛮船に乗って出かけます。南蛮船で難破せんようにせなあかんと、ジョークを飛ばして会場を沸かせた。
この日はめずらしく質問が次々出た。真っ先に初老の男性が手を上げた。牡丹の赤が好きだ。あんな色を始めて見た。どうして色を出すのかと聞いた。赤い色に陰に炎のような赤をいれた。朱であったり緋をいれたりもしますと答えた。絵を描いていて途中でいやになるときがあります。そのとき諦めないことです。諦めないことですとご自分に言い聞かせるようにニ度、三度、森田さんは繰り返した。ここにも彼女の真骨頂が出ている。
この日森田画伯は面白いことを話された。私、三重苦と画商さんから言われてるんです。ます女であること。次に京都に住んでること。そして無所属。ここでまた諦めたらあかんという言葉が森田さんの口から出た。そのときそのときを無心で絵を描き続けて来たと言葉が続いた。
黒沢明監督の『天使のように大胆に、悪魔のように繊細に』という言葉が私、好きなんです。黒沢監督は「ディテールに神が宿る」とも言っておられる。大胆と繊細の両方を兼ね備えていないといけないということだろう。そういう絵を私は描きたいと森田さんは話された。
フランス・パリ展では藤の絵が人気ダントツのトップだったと紹介された。藤に精霊が宿っていると言われた。特にアンケートに書かれたフランスの子供たちの文章力が実にすばらしい。子供のころから学校で文章を描く訓練をすると聞いたと紹介された。森田画伯の絵は当然素晴らしいが、彼女の文章も実に魅力的だと常々思っている。
森田画伯は、才能に恵まれておられる。それでなお日々黙々と努力をされる。スケッチを欠かさないと聞いた。健康に留意され、三重苦もいとわずこれからもさらに天女の如く空高く、素晴らしい絵を描き続けていただきたい。
「柊野五色椿」の絵の前にイスがあったのを幸いに、会場の様子をいつものようにスケッチした。(了)