さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

あまりに端的な欠落と不足 日本の元王者ふたり、中国で敗れる

2019-05-27 13:42:05 | 海外ボクシング




ということで、昨日はWOWOWオンデマンドにて、夜も生中継が見られるということで、昼間の無念を引きずりつつ、何とか良い試合を、と期待して見ていました。
しかし、配信は夜8時を大きく過ぎて始まり、しかもアンダー込み、第1試合から。

まあ、それはそれで、普段見ることのないものを見られるので、のんびり眺めておりました。
場内の雰囲気、観客が盛り上がるタイミング、その頻度などなど、いろいろ興味深くはありました。

で、日本の元タイトルホルダーふたり、久保隼と木村翔が出たダブルタイトルマッチですが、結果は共に敗戦。
まあそれは仕方ないにせよ、内容的にも、それぞれに「如何なものか」という印象が強く残りました。


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WBAフェザー級第二王者のシュー・ツァンは、4回戦の頃に来日経験あり。
そのときは金沢のリングに上がったのですが、ウェルター級の体重で試合をした、と。
それから徐々に身体を絞り、階級を下げてフェザー級、という、なかなか珍しい経歴の持ち主です。

体つきを見ると、長身、リーチに恵まれる上に、筋肉質で厚みもある。
スーパーバンタムから上げて来て、見るからに痩身、という久保隼との差は歴然でした。


初回は、久保のインサイドへのヒットを採れるか、という印象でした。
左ショートがガードを破り、左ボディアッパーは再三決まる。
シューの反撃に場内沸くが、正確に当てているのは久保、と見てもいいかと。

しかし久保、再三好打するものの、過去の対戦相手の中で、大沢宏晋以上に大柄なシューにダメージを与えられるものか、見ていて不安になってくる。
しかも、打った後、動いて外して、そこから別の手立てで試合を組み立てる、という普通の動きを見せず、打った後に止まってしまう。
なら、その位置に踏ん張って、そこからさらに打ち続けるのかというと、そうではない。
当然、シューが打ち返して来て、打たれる。

シューにしても、良い角度で当ててくる久保の左上下は、まったく堪えないわけではなく、もっと変化をつけた組み立ての上に、あの好打が重なれば、打たれて耐えるにも、限度があったはずです。
しかし攻め口は最初から全部同じで、右リードで距離やタイミングを測ったり、変えたりするでもないので、体格や耐久力の差もあり、耐えて打ち返せた。

そして久保が、過去の試合を見れば明らかな通り、長身とリーチを生かして距離で外す選手であるにも関わらず、互いに打てる距離に留まり、シューと比較すれば「防御率」で劣るガード、ブロックを主体に防御して打ち合ったこともまた、シューを大いに助けていました。
ことに久保の右ガードは、このレベルで、この距離での攻防においては甘いと言わざるを得ず、シューの左フックを再三打たれていました。

5回、このパンチで倒れる前にも、右リードが少し出た後は、後続の左など、良いヒットもあったのですが、これなら倒せるという手応えでもあったならともかく、現実に打ち返してくるシューに対する対応が実に悪く、相手がまさっている打ち合いの展開を続けてしまいました。
結果、6回でストップとなりましたが、闘い方の選択、相手との相性をどう見ていたのか、等々、単に優勝劣敗の話以前の部分で、首を傾げたくなるような試合でした。

セコンドの指示と、選手の闘いぶりが一致しないような場面も散見されましたが、単に相手があることだから、という話で済むものとも思えません。
試合前の段階で、様々な面での「合意形成」がないまま、陣営と選手がリングに上がってしまっている、という印象でした。
もっともそれは、久保隼の試合ぶりを直に何度か会場で見たときに、程度の差こそあれ、どの試合にも通じて抱いた印象でもあるのですが。


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木村翔は、一階級下げて、こちらもWBAライトフライ級第二王者カルロス・カニサレスに挑戦。
日本でやるよりも、比較的好条件での挑戦だったのでしょうが、カニサレスの止まることのないフットワークに、終始苦しんだ試合でした。

序盤のうちこそ、重みを感じる左のボディーブローを組み込んだ左のダブル、トリプルなどを好打していた木村でしたが、右の追撃は、ヒットがあっても浅い。
対するカニサレスは、序盤早々から、ジャブで木村を止められないとみるや、打つたびにいちいち呻き声を上げ、オープン気味の左右を外から引っかけては足を使う、という、良く言えば懸命、悪く言えば見た目構わず、なアウトボクシングに徹する。
ポイントはカニサレスに流れているだろうが、「絵」として見て、木村はこれなら捉えて打ち込める、という自信を持っているのでは、と思ったのですが、カニサレスの足がなかなか止まらない。

ここでパワーの差を生かして攻め上げられなかったのが、後々に響いてきます。
木村の攻め手が減っていき、6回にはカニサレスの右カウンターが命中。
木村が堪えて前に出続けるが、ダメージあった模様で、これ以降見るからに鈍り、フォームが乱れ始める。

手応えを感じたか、カニサレスは逃げ一辺倒から、機を見て右を打ち込んでくる流れに。
7、8回、木村は右ロングを浅くヒットさせるが、カニサレスの動き止まらず、ヒットは増える。
9回、カニサレスの右またヒット。木村はアゴを気にする仕草、口も開き加減。

終盤になると、木村がボディを打ってもカニサレスが怯まなくなる。
10回、空振りで体勢崩す木村、カニサレスはまた右を決め追撃。木村堪えてボディ返す。
ラストふたつは木村、さらに苦しそうで、自らよろめいてコーナーへ下がり、攻められる場面も。

判定は大差でカニサレスでした。さうぽん採点も10対2、というところ。
仮に中国で大人気だという木村が、彼の地で優遇されている面があるのだとしても、これではやりようもない、という内容でした。
もちろん、最初からそんな事実は無いわけですが。


立ち上がりは、木村の様子に変わったところは見えませんでしたが、徐々に、もっと攻めていけないものかな、と見え始めました。
この辺は、やはり階級を下げたことの悪影響だったのでしょうか。
加えて、一度足使うと決めたら、とにかくそれに徹するカニサレスの足捌きが止まらなかったこと、そして中盤以降打たれたダメージが重なって、木村にとっては何とも苦しく、もどかしい12ラウンズだったことでしょう。
最後の方は、空振りして身体が一回転、というような場面もありました。もう、自分の身体を支えることも難しくなっていたのでしょう。
試合終了後、判定を待つまでの間も、勝利のアピールひとつせず、コーナーに座り込み、精も根も尽き果てた、という様子でした。

今後については、試合の間隔がタイトであるにも関わらず、階級を変えて失敗した今回を踏まえて、慎重なマッチメイクが必要だと思います。
本人が、プロとして高い条件を求めて闘う、と言っていること自体は極めて正しく、ある意味清々しいとさえ思いますが、それをもって、コンディショニングに対して慎重さに欠けた決断をするのは、本末転倒です。それが招いた結果が、今後の「条件」に大きく響くわけですから。

残念ながら、今回の木村には、その辺が原因としか言い様のない、力の不足が見て取れました。
やはり、階級は元に戻して、試合に至るまでの調整を、もう一度見直した方が良いのでは、と思います。


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そんなことで、一曲。
the pillows「雨上がりに見た幻」。






コメント (7)
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