さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

「日本対世界」の厳然たる差、されど 黒田雅之、ムザラネに判定負け

2019-05-15 20:37:55 | 関東ボクシング




ということで、所用のための上京にかこつけ、この月曜日、ホールで観戦してきました。
さすがにきついスケジュールで、今頃感想文になりますが、簡単に。


川崎フロンターレのサポーター有志も多数ご来場、水色のシャツが目につくホールは、
思った以上の盛況で、積極的に送られる黒田への声援も相まって、なかなか良い雰囲気でした。
その空気感の中、黒田雅之はなかなかの好スタートを切った、と見えました。

立ち上がり、今までにない、とは言い過ぎでも、力の抜けた、伸びやかな動きから、
左ジャブ、右クロスが飛び、左フックが返り、インサイドに右アッパーをのぞかせ、
ボディブロー、上下の散らしも。大半がブロックの上でしたが、それも承知、というところか。
良い軌道でワンツーが出た、と思ったら、その次のパンチが出るのが早い。
一言で、リズム良い、リラックスしてる、と見える動きでした。

王者モルティ・ムザラネは、見て立った感じでしたが、ブロックの上で撥ねる
黒田のパンチが、単に強いというでなく、リズムに乗っていて、厳しいものだと感じたのでしょう。
初回半ばにはもう「これは思っていたのと違う」という感じで、構え直した、という風。
探りでなく、鋭く狙うジャブを飛ばし、右クロス。黒田を「抑え」にかかりました。


初回は微妙、ヒットの精度でムザラネ?。
2回、3回はムザラネのジャブが鋭いが、黒田の左ボディ好打に振れるか?というところ。
黒田は左ボディから右アッパー、或いは右クロスの対角線コンビも出始める。
4回も黒田が攻めるが、左ボディはムザラネのガードに防がれるか、その下へ。

5回、ムザラネのワンツー好打。当たるコンビをまとめてくる。この辺が巧い。
黒田出血、パンチによる。かなり打たれ始める。
6回、ムザラネはさらに逆ワンツー含め、攻める。最後に黒田の右ヒット。
7回、ムザラネの左がほぼ支配。黒田の左レバーパンチが出ると場内沸くが、ほぼ防がれている。
8回、黒田は劣勢を覆そうと、左右ボディで攻める。ムザラネ軽いが速い連打。
黒田右ヒット。この回は微妙か。

9回、黒田劣勢の色濃く、ムザラネのジャブ、連打が支配。
10回もムザラネが、インサイドに正確なヒットを重ねる。黒田のガードが目に見えて崩れている。

11回、打ち合いになるが、黒田のパンチはムザラネのブロックの上で撥ね、
ムザラネの拳は、黒田の腕の間をすり抜けて入る。
この回最後に、果敢に攻める黒田の右ストレートが入り、ムザラネが慌ててホールドに出る。
しかし間もなくゴングが鳴る。

最終回、場内の声援に押され、黒田が果敢に攻めるが、ムザラネの正確な連打が決まる。
黒田の連打に、ムザラネがクリンチに出る場面もあるが、挽回には遠く、試合終了。



判定は116-112×2、117-111の3-0でムザラネ。
さうぽん採点は、ム黒黒ム、ムムム黒、ムムムム、117-111でムザラネ。
試合後、同道した友人ほか、各方面から「感動採点だね」と笑われました(ーー;)
良いじゃないですか、黒田頑張ったんだし、と反論?しましたが、
そういうものじゃないんだよ、と。そりゃ、そうかもしれませんが...。

実際、内容的には完敗でした。客観的に見て、フルマークの採点が無かったことを、
意外に思ったりもしました。案外甘いんやな、と。
...言えた義理か、というツッコミは甘んじてお受けします、ハイ。



それはさておき、黒田雅之は、日本王者として、世界上位の強豪ムザラネ相手に、
及ばずとも健闘、と言える試合をしたと思います。
違う言い方なら、持てる力を全て出し切って闘い終えた、ということでしょうか。
立ち上がりから、良い感じで拳が、肩が、腰が回り、打ち抜きの利いたパンチを、
矢継ぎ早に打ち込んで行って、ムザラネに一種の緊張を強いた立ち上がりの展開に、
それだけである意味「ああ、これを見せてくれだだけで充分かな」と思ったものでした。


しかし、その後、試合が進むにつれて見えてきた「日本対世界」の差もまた、
違う角度から言えば、見られて満足、しかし黒田応援の視点から言えば、
現実はかくも厳しい...と実感させられるものでもありました。


両者、一見して堅牢に見える構えながら、徐々に「防御率」の差が明白に見え始める。
黒田の強い左ボディーブロー、ことにレバーを狙ったパンチは、
場内のファンを再三沸かせていましたが、リングサイドから見ていると、
その大半がムザラネの右腕の上で撥ね、或いはヒジの下へと「追いやられ」ていました。

時にボディ中央に入ったパンチがあったように見えましたが、数が少ない。
上へのパンチは、時にヒットもありましたが、その途中でガード、ブロックに
引っかかっているものも多い。本当に強打したのは11回終盤の一発くらいだったか。

対する黒田の防御は、高い構えでスタートしたものの、ジャブの戻りが遅く、そこにリターンを食うし、
中盤以降はダメージも疲弊もあり、敢えて高く構えるのを諦めた、という時間帯もありました。
半ば捨て身で、ムザラネを誘う意味もあったのでしょうが、当然、その狙いは奏功せず終い。

総じて、果敢に攻め続けたものの、ムザラネの心技体、いずれをも崩すには至らず。
逆に言えば、36歳のフライ級ボクサーとしては、最後まで攻防共に精度が落ちず、
体力的にも、フォームがぶれず、安定したまま闘い終えたムザラネを、驚異として語るべき、なのでしょうが。


黒田雅之は、日本チャンピオンとして、持てる力の全てを出し切った、と思います。
しかし、世界との差は、様々な面において、歴然と存在し、それは試合展開の中において、
余すところなく見られました。
しかし、モルティ・ムザラネにとり、技や力を出し惜しみ、楽をして流せるような試合でもなかった。
それもまた、確かなことだと見えました。

日本開催、場内の雰囲気などのロケーションが、例えば先のアンカハス、船井戦と違い、
黒田雅之に幸いした、というか、少なくとも健闘、奮闘を「させてもらえる」ものだった、という
事実も理解した上で、甘いと言われようと、私はこの試合を「健闘」と見たい、と思う側です。
見終えて、様々に納得感のある試合だった、清々しい印象が残った、そういう試合でした。



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ということで、一曲。
Eve「君に世界」。






コメント (3)
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