ということで、所用のための上京にかこつけ、この月曜日、ホールで観戦してきました。
さすがにきついスケジュールで、今頃感想文になりますが、簡単に。
川崎フロンターレのサポーター有志も多数ご来場、水色のシャツが目につくホールは、
思った以上の盛況で、積極的に送られる黒田への声援も相まって、なかなか良い雰囲気でした。
その空気感の中、黒田雅之はなかなかの好スタートを切った、と見えました。
立ち上がり、今までにない、とは言い過ぎでも、力の抜けた、伸びやかな動きから、
左ジャブ、右クロスが飛び、左フックが返り、インサイドに右アッパーをのぞかせ、
ボディブロー、上下の散らしも。大半がブロックの上でしたが、それも承知、というところか。
良い軌道でワンツーが出た、と思ったら、その次のパンチが出るのが早い。
一言で、リズム良い、リラックスしてる、と見える動きでした。
王者モルティ・ムザラネは、見て立った感じでしたが、ブロックの上で撥ねる
黒田のパンチが、単に強いというでなく、リズムに乗っていて、厳しいものだと感じたのでしょう。
初回半ばにはもう「これは思っていたのと違う」という感じで、構え直した、という風。
探りでなく、鋭く狙うジャブを飛ばし、右クロス。黒田を「抑え」にかかりました。
初回は微妙、ヒットの精度でムザラネ?。
2回、3回はムザラネのジャブが鋭いが、黒田の左ボディ好打に振れるか?というところ。
黒田は左ボディから右アッパー、或いは右クロスの対角線コンビも出始める。
4回も黒田が攻めるが、左ボディはムザラネのガードに防がれるか、その下へ。
5回、ムザラネのワンツー好打。当たるコンビをまとめてくる。この辺が巧い。
黒田出血、パンチによる。かなり打たれ始める。
6回、ムザラネはさらに逆ワンツー含め、攻める。最後に黒田の右ヒット。
7回、ムザラネの左がほぼ支配。黒田の左レバーパンチが出ると場内沸くが、ほぼ防がれている。
8回、黒田は劣勢を覆そうと、左右ボディで攻める。ムザラネ軽いが速い連打。
黒田右ヒット。この回は微妙か。
9回、黒田劣勢の色濃く、ムザラネのジャブ、連打が支配。
10回もムザラネが、インサイドに正確なヒットを重ねる。黒田のガードが目に見えて崩れている。
11回、打ち合いになるが、黒田のパンチはムザラネのブロックの上で撥ね、
ムザラネの拳は、黒田の腕の間をすり抜けて入る。
この回最後に、果敢に攻める黒田の右ストレートが入り、ムザラネが慌ててホールドに出る。
しかし間もなくゴングが鳴る。
最終回、場内の声援に押され、黒田が果敢に攻めるが、ムザラネの正確な連打が決まる。
黒田の連打に、ムザラネがクリンチに出る場面もあるが、挽回には遠く、試合終了。
判定は116-112×2、117-111の3-0でムザラネ。
さうぽん採点は、ム黒黒ム、ムムム黒、ムムムム、117-111でムザラネ。
試合後、同道した友人ほか、各方面から「感動採点だね」と笑われました(ーー;)
良いじゃないですか、黒田頑張ったんだし、と反論?しましたが、
そういうものじゃないんだよ、と。そりゃ、そうかもしれませんが...。
実際、内容的には完敗でした。客観的に見て、フルマークの採点が無かったことを、
意外に思ったりもしました。案外甘いんやな、と。
...言えた義理か、というツッコミは甘んじてお受けします、ハイ。
それはさておき、黒田雅之は、日本王者として、世界上位の強豪ムザラネ相手に、
及ばずとも健闘、と言える試合をしたと思います。
違う言い方なら、持てる力を全て出し切って闘い終えた、ということでしょうか。
立ち上がりから、良い感じで拳が、肩が、腰が回り、打ち抜きの利いたパンチを、
矢継ぎ早に打ち込んで行って、ムザラネに一種の緊張を強いた立ち上がりの展開に、
それだけである意味「ああ、これを見せてくれだだけで充分かな」と思ったものでした。
しかし、その後、試合が進むにつれて見えてきた「日本対世界」の差もまた、
違う角度から言えば、見られて満足、しかし黒田応援の視点から言えば、
現実はかくも厳しい...と実感させられるものでもありました。
両者、一見して堅牢に見える構えながら、徐々に「防御率」の差が明白に見え始める。
黒田の強い左ボディーブロー、ことにレバーを狙ったパンチは、
場内のファンを再三沸かせていましたが、リングサイドから見ていると、
その大半がムザラネの右腕の上で撥ね、或いはヒジの下へと「追いやられ」ていました。
時にボディ中央に入ったパンチがあったように見えましたが、数が少ない。
上へのパンチは、時にヒットもありましたが、その途中でガード、ブロックに
引っかかっているものも多い。本当に強打したのは11回終盤の一発くらいだったか。
対する黒田の防御は、高い構えでスタートしたものの、ジャブの戻りが遅く、そこにリターンを食うし、
中盤以降はダメージも疲弊もあり、敢えて高く構えるのを諦めた、という時間帯もありました。
半ば捨て身で、ムザラネを誘う意味もあったのでしょうが、当然、その狙いは奏功せず終い。
総じて、果敢に攻め続けたものの、ムザラネの心技体、いずれをも崩すには至らず。
逆に言えば、36歳のフライ級ボクサーとしては、最後まで攻防共に精度が落ちず、
体力的にも、フォームがぶれず、安定したまま闘い終えたムザラネを、驚異として語るべき、なのでしょうが。
黒田雅之は、日本チャンピオンとして、持てる力の全てを出し切った、と思います。
しかし、世界との差は、様々な面において、歴然と存在し、それは試合展開の中において、
余すところなく見られました。
しかし、モルティ・ムザラネにとり、技や力を出し惜しみ、楽をして流せるような試合でもなかった。
それもまた、確かなことだと見えました。
日本開催、場内の雰囲気などのロケーションが、例えば先のアンカハス、船井戦と違い、
黒田雅之に幸いした、というか、少なくとも健闘、奮闘を「させてもらえる」ものだった、という
事実も理解した上で、甘いと言われようと、私はこの試合を「健闘」と見たい、と思う側です。
見終えて、様々に納得感のある試合だった、清々しい印象が残った、そういう試合でした。
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ということで、一曲。
Eve「君に世界」。