さうぽんの拳闘見物日記

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拳闘見聞の日々。

強敵の「決意」をも、早々に粉砕 井上尚弥、ロドリゲスをKO!

2019-05-19 07:16:21 | 井上尚弥



ということで待望の井上尚弥、同年代のタイトルホルダーとの王者対決、でしたが、
またしても...なんかもう、試合のたびに同じ事書いてますが、
毎度の通り、とりとめもなく。



試合前に、予想というか展望というか、まとめて書けば良かったんですが。
当然、どんな試合にも不安とか懸念はあるもので...
ただ、井上尚弥に関しては、過去にことごとく、そんなものは無意味であった、
ということが繰り返されていて、こちらもなかなか書きにくかったりしますが。

とはいえ今回は、功成り名を遂げた名王者、元王者、という類いではなく、
共に上昇期にある年齢とキャリアの、IBF王者エマヌエル・ロドリゲスが相手。
その過去の試合ぶりも、正統派でパンチもあり、手強そう。

直近の試合が苦戦だったこともあり、少々軽く見られている風でもあるが、
一見スピードでは井上に劣りそうに見えても、全体のリズムがゆったりとしているだけで、
動き自体は滑らかで、かつ打ち込む時の一瞬の速さは、充分なものがあり。

好機を掴んだときの攻め、特に左フックのダブル、上下の打ち分けでなく、
効かせたときに「上上」と二発、同じところに打つ攻撃など、なかなか怖いなと。
プエルトリコの先達、ウィルフレド・バスケスを、より多彩にした攻撃力の持ち主、
というようなイメージを持っていました。

もちろん、機動力、という面で井上が優位ではあろうが、
パンチ力も体格もあり、左フックの強打を狙う井上が、同じ間合いに捉えられた場合、
危機に陥る可能性も充分ある。試合前はだいたい、こんな風に思っていました。



初回、ロドリゲスの体格が、一階級分くらい、井上を上回っているように見えました。
井上がこの回に数度見せた左の空振りは、体格に押されている選手の空振りの仕方そのもの。
左ジャブを当て、右クロス、動きで外して左。しかしロドリゲスも際どく右を飛ばし、左フック。

ヒット、という食い方はわずかなれど、かすめるようなのも含めると、けっこう危ない感じ。
ポイントは、よく見ればより正確に井上の方が当てている、という内容でしたが、
ロドリゲスの体格、圧力が、さらに言うなら、早々に自ら「出て」、攻めて行こう、という闘い方を
選択したロドリゲスの、この試合に賭ける「決意」が、井上を時に危ない距離、位置に追い詰めてもいました。


今日という今日こそ、序盤のKOなどはない。際どい展開が続くかもしれない。
外して打つ流れで、強打するより正確に当て、セーフティーに外せるか、
大橋会長の言う「技術戦」で巧くやれるかが問われる試合になりそう。
攻め崩しに出られるとしても、中盤以降ではないか。
初回を見終えて、そんなことを思っていました。


毎度の通り、なのですが、全くの的外れでした。
井上尚弥は、こちらの思うところにすんなり収まるようなボクサーではない、
それを改めて、思い知ることになりました。


2回早々、速いスリーパンチ、左フックが上に返り、追撃。
次の攻めが、インサイドに入って右ボディ。返しの左が、低く抑えた軌道を描き、
ロドリゲスのガードの隙間に、カウンター気味に突き刺さる。ダウン。

ロドリゲス立つが鼻血が見える。井上追撃。まさに「残忍な」意図を秘めた左右のボディ。
二発目の右は、腹筋を締めるタイミングを外されていて、見るからにきつい。
洒落じゃないですが「胃の上」に入った?ようにも見えました。
ソーラープレキサス・ブロー、ってやつでしょうか。

倒れたロドリゲス、立とうとするが、初回に見えた「決意」は完全に打ち崩され、
コーナーに向けて弱気そのものの貌をさらしてしまっていました。
再び立ったものの、ここからは蛇足でした。三度目のダウン、ストップとなりました。


まあ、言い訳というかなんというか、初回3分、あの展開を見たあとで、
2回以降を、外しにかかるんではなく、切り込んで行って、すぐに懐取って、
そこからカウンター取って倒して、なんて、ちょっと想像しませんでした。
こんな展開の変え方、ありますかね。びっくりしました。

まあ、井上尚弥を語るのに「普通」の考えなど、無意味なのだというのは、
過去に何度も思い知っているはずなんですが、それでも改めて驚かされました。
中立地である欧州、スコットランドのリングで、同年代の対立王者、
しかも、水漏れ無しで仕上げてきた相手が、一歩も引かぬ決意を押し立てて向かってきた。
にも関わらず、その決意を早々に打ち崩しての、衝撃のKOを実現してしまう。


やっぱり、この人は凄いとしか言いようがありません。
試合後、決勝で対戦するノニト・ドネアと顔合わせをして、
互いに敬意を語り合っていましたが、
本当に、若い頃のドネアに匹敵するか、ことによると超えているか?とさえ思います。

今後について、トップランク社と契約か、という話も出ていたようですが、
米国のリングで継続的に試合が組まれるようなら、井上尚弥はドネアやロマゴンのキャリアをなぞる、
或いはそれを超える成功を掴むことだって、充分出来そうに思います。
マニー・パッキャオと同様、とまではさすがに難しくても、軽量級としては、
過去最高のスターボクサーとなりうるのでは、と。


それにしても、こんな試合を全世界注視の中でやってしまうと、
その評価は、いよいよもって「捨ておけん」レベルにまで高まってしまいそうですね。
ドネアとの決勝戦、日本でやってくれたら、当然見に行くところですが、
これまた試合前に出ていた、サウジアラビア開催、という話とはまた別に、
これなら充分、米国でも興行になるんではないか、という機運にもなりそうです。
それはそれで、困ったなぁ...という感じですね。


試合前は、当然期待するところ大、しかし何しろ真剣勝負、何があっても不思議なし、
という、まあ言ってみれば普通の前提で、楽しみだったり心配だったり、というところでしたが、
終わってみれば、やはり井上尚弥は偉大でした。
この試合に賭けられた、リングマガジンベルトを肩に微笑む井上の姿は、
我が国ではファイティング原田以来、史上二人目の「世界バンタム級チャンピオン」そのものでした。


欧州の試合を生中継で見るというのは、サッカーなどを愛好する方々にとっては日常なのでしょうが、
我々ボクシングファンにとっては、ちょっと不慣れな行いだったりもします。
しかし、今朝は本当に、清々しい朝のひとときを過ごすことができました。
井上尚弥に改めて脱帽、そして感謝です!お見事でした!




コメント (13)
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