さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

一躍、同級世界最強に躍り出た 田中恒成縦横無尽、元王者フエンテスを圧倒

2017-01-03 00:19:36 | 中部ボクシング


モイセス・フエンテスvs田中恒成戦は、大晦日当日、
CBCがネットでライブ配信したものを見ることが出来ました。

このあと、観戦のために向かった大田区総合体育館で、関東在住の方に聞いたところでは、
驚いたことに関東でも放送がなかったとのこと。
確か昨年末は中部と関東で放送、関西では放送無しだったと思うんですが、
今年はそこから一歩後退というか、より状況が悪くなっています。
(ちなみに関西では今年も放送無し。その時間は漫才の特番でした)

この手の話になると
「そういえば、畑中清詞vsペドロ・デシマの時は、関東は綱引き選手権だったなぁ」と
関東の方は必ずといっていいほど言います。
それに対して関西人は「チャナ・ポーパオインに新井田豊が挑んだとき、
関西ではハイヒールモモコ一家のハワイ旅行だったんですよ」と返し、対抗するのが常です。
お互いに自慢にも何にもならん話ですが...。

脱線しましたが、田中恒成のような逸材に、そのようなTV放送の取り扱いは相応しくない。
それを示した、田中恒成の圧倒的な勝利でした。


モイセス・フエンテスは長身、大柄なスラッガーで、スピードに欠けるが
打ち合いに持ち込んで右の強打を生かし、その駆け引きにも秀でた実戦派、という感じの選手です。
あのドニー・ニエテスと一分一敗、それ以外にもイバン・カルデロンに引導を渡した試合や、
来日もしたルイス・デラローサを初回で仕留めた試合など、あれこれ見たことがあります。
ひとたび好機を掴んだら怒濤、という、いかにもメキシコの強打者、というイメージがあり、
田中恒成がペースを渡したり、好打されて攻め込まれたりしたら危ないかも、と思っていました。

しかし実際は、田中恒成のスピードと強打が、フエンテスを圧倒し続けました。

初回からジャブ、右から左と好打。3回は右ストレート上下を突き刺す。
打っては鋭くバックステップ、フエンテスの反撃をほぼ外しきる。

4回はもう縦横無尽。左右に出ては多彩なパンチを上下に散らす。
5回、右にシフトした田中の左ボディが決まる。
フエンテスはロープに詰められ、右で崩れかけ、こらえたが容赦ない追撃にさらされ、ダウン。
レフェリーはそれまでの展開も考慮したか、カウントせずにすぐTKOを宣しました。

50キロ契約で闘ったノンタイトルのレネ・パティラノ戦と同様の、
或いはそれ以上のワンサイドマッチでした。
フエンテスが何らかの事情で不調だったにしても(前日3度計量オーバーしたそうですが)、
ここまで一方的な内容になったのは、田中恒成の圧倒的な強さによるものだと見えました。

凄いな、怖いな、とさえ思うのは、見た印象でしかないですけど、
田中恒成はまだ、テンポを完全に上げ、打つ手を出し切ったわけではないように見えることです。
スピードも手数も、パンチングパワーも、もっと出そうと思えば出せる。
しかしそこまで行かずとも、この日のフエンテスなら充分に攻め落とせてしまえた。

試合序盤から好調でしたが、それでも最初から力を振り絞り、手の内をさらしてはいない。
まだ余力はある。どの程度かまでは不明なれど、他にもまだ攻め口が残っている。
汲めども尽きぬ、とは言い過ぎかも知れませんが、田中恒成は強豪に圧勝してなお、
その膨大な才能を見る者に感じさせる、スケールの大きな逸材であることを、改めて示しました。

田中恒成は試合前日までは無冠の身でしたが、この試合内容とタイトル獲得により、
ドニー・ニエテス転級後の、108ポンド世界最強の座を手に入れてしまった。
そんな印象すら持ってしまいます。八重樫東、田口良一、ガニガン・ロペスという面々を
一気に追い越してしまった、と。

日本ボクシング界の未来は、井上尚弥と共に、この田中恒成の拳にかかっている。
そう評するべきかもしれません。
むろん、今後に様々な困難が待ち受けるにせよ、それに負けずに成長し、乗り越えていってもらいたい。
遠くない将来のフライ級進出も含め、その圧倒的な技量力量で、より開かれた「世界」の舞台で
その才能を解き放ち、闘ってほしい。そんな、壮大な夢を見てしまいます。


中部在住の友人の厚意により、放送された動画も見ることが出来ました。
以下、紹介しておきます。数日で消しますのでお早めに。


その1。



その2。




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この大晦日、岐阜の会場ではもうひとつ、注目の日本フェザー級タイトルマッチ、
林翔太vs下田昭文戦も、CBCによるライブ配信が行われていました。
これ、告知も何も見たことがなく、当日たまたまPCを開いたらやっていて、
慌てて見始めたようなことです。
TV放送は、中部で後日あるんでしょうかね。当日はなかったはずですが...。

試合展開は、序盤は下田リードで、5回終了の途中採点は、4対1で下田が二者、
あと一人は48-48でイーブン。2-0で下田。

まあ、ひとりは地元有利のジャッジがいても仕方なく(と言っていいのかは置くとして)、
あと二人の、まともな方々の支持をしっかり取り付ければいいだけのことですが、
6回くらいから林がペースを上げ、下田がヒットにより左右瞼を切ってしまうなど、
ちょっと展開が変わってきます。

下田は片方の出血がそれなりにあり、またヒットによるカットなので(実際そうだったと見えました)、
ドクターストップがかかると、負傷判定ではなくTKO負けになるということで、
ちょっとナーバスになったか、打ち込みにかかるかと思えば、足を使って捌く、という感じで、
ちょっと闘い方に迷いが見えました。そこへ林が果敢に打っていき、林が取る回が増え、
あとは微妙なのもあるが、林に流れるかな、という感じの回もあり、という具合。

そういう後半戦、9回終盤、微妙な感じだったところ、林にとっては良いタイミングで、
下田にとっては悪いタイミングで、林の右がヒットし、下田が尻餅をつくようなダウン。
足もかかっておらず、押されてもない、ヒットによるダウンでした。

林は勢い込んで最終回も出て、試合終了。
採点は正直微妙、前半の4対1、3ポイント差が覆るかどうか、でしたが、
その二者の判定が95-94、ダウンの分だけ林、と出て、あとひとりも当然、林。
3-0で林翔太の防衛となりました。

前半戦の劣勢をものともせず、諦めずに打ちかかっていった林の果敢さが、
際どい勝利を彼に与えました。
見方は様々にあるかも知れませんが、その健闘を称えないわけにはいかない、
そういう闘いぶりだったと思います。


昨年の細野悟戦に続き、下田昭文はまたも、際どく微妙な試合を落としました。
ことさら無茶苦茶な不当裁定、判定に出くわした、というのではない。
試合ぶりはどこが悪いというでなく、体調も悪くなさそうでしたが、
負傷などから展開を悪くしてしまい、僅かに及ばず、という負け方でした。
はっきり言えるのは、あまりに痛い、痛すぎる結果だ、ということだけです。

まだまだ老け込む歳でもなく、実力が衰えているとも見えませんが、
下田昭文は、またもそのキャリアにおける重大な岐路に立たされてしまいました。
彼の今後は、いったいどのようなものになるのか。注目でもあり、心配でもありますね。



コメント (18)
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