さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
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拳闘見聞の日々。

望外の完全勝利を生んだ冷静と胆力 小國以載、強打グスマンを下し戴冠

2017-01-02 16:15:02 | 小國以載



この試合が決まったとき、少しだけ記事も書きましたが、相性自体は悪くはないと思っていました。
ジョナタン・グスマンは和氣慎吾戦で強烈な印象を残しはしたものの、反則込みの勝利でもあり、
突出した強打はあるが、全体的に完成度が高いボクサーというと、まだそうとも言えない。

長身、リーチにまさる小國以載が、距離の差を生かして闘えば、
その上で過去の試合で見せた、序盤からダウンシーンを何度も生んだ長い右で先制し、
遠くからでも打てるボディブローを決められれば勝機はある...と書きかけて、
いくらなんでもこれだけ連ねると、予想じゃなくて願望だなぁ、と思い直したようなことです。
実際の試合が、こんな、何もかも良いように回るわけがない、やはりパワーの差が大きいし、と。


大晦日、大田区総合体育館で、同道した方のスマホにより結果を知りました。

TBSが当日、どういう番組を放送したのか、全てをチェックはしていませんが、
いわゆる例年通りの「スポーツバラエティ」を延々と流したあと、
9時過ぎから井岡一翔の試合を生中継し、その後にこの試合を録画で放送したようです。
えらく遅い時間の放送で、それは如何なものかと思ったものの、そのおかげもあって、
私は会場から戻ったホテルの部屋で、それを見ることが出来ました。
思った以上にクリアな勝ちでした。
もう少しグスマンの追い上げがあったのかと思っていましたが、採点以上の差が見えた試合でした。


序盤から、好調時の足の動きがあり、なおかつほどよく重心が降りた構え。

相手の身体の軸、正中線をインサイドから打てる長いジャブ、右ストレート。
ボディ攻撃は右ストレート、左アッパーを内外に打ち分け、またこれを、遠近両方で打てる。

好機の詰めがやや甘く、派手な連続攻撃はないが、打つべき手は打ち、下がるときは躊躇なく下がれる。
長身、リーチを利して懐深く、防御動作に無駄がない。

序盤に好打で先制、ないしはダウンを奪うなどでリードした試合展開の場合、
その優勢な状況を生かして、その後の試合を巧く運ぶ勝ちパターンを持っている。
総じて機を見るに敏、冷静。


これら、過去の試合で小國以載が見せてきた特徴が、最初から最後まで十全に出た試合でした。

見ていて、この大舞台で、これだけほぼ完全に自分の良さを出し切れるものか、と驚嘆しました。
試合運びは徹底的に冷静で、その闘いぶりは、見た目からは窺い知れない、
彼の「胆力」といったものに支えられているのでしょう。

しかし、思い返せば彼がOPBF王座を獲った時も、大橋弘政を攻略したロリ・ガスカ相手に、
当時ランク15位だった小國が勝つとは、少なくとも私は思っていませんでした。
彼はその時の驚きを、今度はIBFのタイトルマッチで再現してみせたわけです。

序盤から長い距離を構築し、望外のノックダウンを奪い、そのリードを次の展開に生かす。
グスマンの反撃を、ダウン奪取時にダメージを与えたボディ打ちで食い止め、断ち切る。
距離の違いを最大限に生かし、ジャブだけでは止まらなさそうなグスマンを、
時に右ストレートで狙い打ち、突き放し、リードを守って試合終了。
大まかな流れは、こうして振り返ると、丸ごとガスカ戦のそれを踏襲していました。

ガスカ戦との違いは終盤です。かつては終盤、失速する傾向もありました。
ところが今回は、終盤にもしっかりヒットを重ね、打ち込み、その追撃の流れで
またも強烈なボディ打ちを決め、グスマンを再度ダウンさせました。
レフェリーが不自然なほど酷い誤審をしましたが、あれは実質、KO勝ちだったと思います。
このあたりは明確に、成長した部分だと言えるでしょう。

ここに至るともう、改めて脱帽というか、お見それしました、という感じで、
見ていてとても嬉しい気持ちにさせてもらいました。


出来れば実際に、会場で彼の戴冠を見たかったという思いもありますが、
初防衛戦はどうあっても、そうさせていただくことにします。
その初防衛戦は、岩佐亮佑で決まりのはずなので、ちょっと複雑ですが楽しみですね。

小國の唯一の敗戦の相手、和氣慎吾と同じくサウスポーなのが、ちょっと気がかりですが、
自分の良さを確実に伸ばして、予想不利の試合を覆してきた小國ならば、
また我々を、大いに驚かせてくれるのかもしれません。

翌日会見はこんな感じだったそうです。
さっそく飛ばしてますね(笑)


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井岡一翔は、暫定王者スタンプ・キャットニワット18歳を7回TKO。
2回に、ヒットを取ったあとの「移動」を怠るポジショニングミスをしたところを打たれ、
ダウンしたのにはちょっと驚きでしたが、4回くらいから左で立て直し、断続的に連打で攻め、
7回にボディ攻撃でフィニッシュしました。

ついに実現、夢の対決、統一戦...というような試合では全然なかったですが、
それでも闘志に溢れる若い挑戦者を、ダウン以外は問題なく退けた井岡一翔の実力は、
一流王者や上位が次々と転級し、大げさに言えば過疎状態にあるフライ級においては
高く評価されるべきものだと、改めて示した一戦でした。

しかし、まあ「いつもの感じ」ではありましたね、良くも悪くも。
距離が長いとか、抜群に速いとか巧いとかでもない、
井岡一翔のコントロール出来る範囲内に収まる相手を、今回も慎重に選んだのだなぁ、と。
もちろん、その目論見通りに勝つ技量は、一定の水準において、大したものではあるんですけど。

名のある王者がいなくなって、翌日会見では毎度の通り、あれこれ言ってはりますが、
記者の皆さんもええ加減飽きてはるんやないですかね、と思ったりもします。
こういう緩い状況になるまで、耐えて忍んで艱難辛苦...ってな現象は、
何も井岡一翔の周りに限った話でもないですが。

とりあえずはドニー・ニエテスの奮戦によって、伝統階級たるフライ級が、
少しでも従来のレベルに近づくことを、ボクシングファンとしては願うしかないですね。


コメント (4)
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