11月9日(火)晴
僕は20代で青森県むつ市の国立病院で1年間結核病棟を担当した。結核に有効な薬はなく「安静・空気・栄養」が治療の基本の時代。むつ市の結核病棟は海を見下ろす赤松が茂る丘の上にあった。患者たちは小鳥を飼い、花壇を作り、刺しゅうや絵や和歌で時間を潰す、一見平和な生活を送っていた。マンの「魔の山」は第1次大戦前のアルプスの結核療養所を舞台にした長編小説。登ったら帰ってこれない魔の山。完治は難しい、死もあり得る、しかし当面は無理をしなければ苦痛少なく過ごせる、という何とも微妙な生活条件。肉体と精神、愛と死、戦争と平和、時間と空間を紡いだ物語だ。
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