豪州落人日記 (桝田礼三ブログ) : Down Under Nomad

1945年生れ。下北に12年→東京に15年→京都に1年→下北に5年→十和田に25年→シドニーに5年→ケアンズに15年…

原子力船むつの放射能漏れ 万一の対策が必要

1978-02-27 00:56:47 | 政治・経済

むつ政経文科新聞 第5号 昭和53年(1978年)225日発行 

 

「論説」原子力船むつの放射能漏れ 万一の対策が必要

 

「放射能漏れは決してあり得ない」というのは地元民を欺く方便である。政府の意見書には、「万一の事故に備えて原子炉周辺は非居住地区、低人口地帯でなければならない」とあるし、「耐用年数中に周期に乗った地震がないこと」とある。地震・津波・火山の噴火などの自然災害は、現代科学にその予知能力がなく、対策の立てようがないのが現実である。このような意味では下北のような取り立てて言うべき産業もなく、人口も少ない「僻地」に原子力船や原子力発電所を持ってくるのは正しいのかもしれない。万一の場合の被害者が少なくて済むし、国民総生産にもたいした影響はないからである。事故が怖い者は引っ越せということだろう。

私たちむつ市民は常日頃から、万一原子力船に放射能漏れ事故が起きた場合どうすべきかを考えておかなければならない。大事故の場合には下北半島全体が一瞬で吹き飛ぶのだから気は楽である。小事故が起きた場合どのようにすべきかが問題である。放射能が漏れたら、事業団と市長はその事実を隠さずに、直ちに市民に知らせなければならない。市民はすぐに近くの家の中に入り、窓を閉め切って、衣類で体を覆い、マスクをする。できるだけ体を動かさないようにして放射能の吸入を最小限に抑える努力をして指令を待つ。風向きや交通状況などを検討して市長から出された避難指令に従って整然と街を捨てる。荷物を持ったり、手のかかる病人や子供を連れて避難することは危険である。いったん体内に吸入された放射能をなくすることは医学的にも不可能だから、呼吸を乱さないように避難する必要がある。病人や子供の救出には、市職員、消防署員、医療関係者、自衛隊員、有志からなる決死隊が当たる。悪い遺伝子を後世に残さないために、無人の街と化した汚染地域の家畜、昆虫、植物に至るまであらゆる命あるものを処分する。場合によっては被災者の老若男女を問わず、全員が不妊手術を受けなければならない。被ばく事故を一代限りで押さえるためである。

以上は色々の文献を参考にしてまとめた「放射能による地域汚染にいかに対処するか」であって、決して誇張されたSF物語ではない。軍事機密のため正確な数字は公表されていないが、日本とビキニを除いても、全世界でこれまでに10万人近い人が被曝事故で死亡しているとのデータもある。

むつ市には緊急事態の際使用される無線設備はあるものの、避難道路も一部しか完成していないし、万一の時の防災計画も市民に明らかにされていない。市長も、母港存置と引き換えに政府からお金をもらう「企業感覚」だけではなく、市民の安全を真剣に考えなければならない。いたずらに市民の恐怖心をあおるのは良くないとの反論もあろう。しかし、真面目な科学の目から見れば、原子力とは非常に危険なものである。事故がないことを誰もが願っているが、起こり得ることとだから対策が必要である。自然が原因の災害ならばあきらめもつくのだが、事故とは多くの場合人の心の安易さが原因の「人災」であるから事業団や市長の姿勢が気になるのである。(

編集責任者 桝田礼三)

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