失業手当:不受給77%…日本は先進国中最悪の水準(毎日新聞)
国際労働機関(ILO)は24日、経済危機が雇用に与えた影響についての調査報告書を発表し、失業手当を受給できない失業者の割合が日本は77%で、先進国中最悪の水準にあると指摘した。2番目に悪い水準のカナダと米国(同率の57%)を大きく上回っているとしている。
他の先進国は、英国40%、フランス18%、ドイツ13%で、日本は受給できない人の割合が際立って多い。
まぁ日本のセーフティネットだったらこんなものでしょう。平気で嘘を吐く人たちは日本の社会保障を「中福祉中負担」などと語りますが、実態は「低福祉中負担」です(もっとも、これは個人の話であって、雇用主にとっては「低福祉低負担」ですが)。失業保険を受給できない割合は77%、低福祉低負担と伝えられるアメリカをも大きく上回る、先進国中最低最悪の水準なのです。
日本の場合、失業手当受給に必要な保険料納付期間(1年)の制約のために受給できていない非正規雇用労働者が多いことなどが反映したとみられる。
非正規労働者が多いのは確かですが、それだけで77%という異常な高率を説明しきることは出来ないようにも思います。この場合も、ある種の自己責任論とでも言うべき「自己都合退職」の濫用を無視は出来ないでしょう。会社が解雇を言い渡したなら、会社都合退職として早期に失業保険が受給できるわけですが、退職を強要されて辞めざるを得なかった場合はあくまで「自己都合退職」であり、3ヶ月の待機期間と手続き期間が待っているわけです(失業保険を受け取るためには「解雇」の方が好都合ですが、さりとて解雇歴があると次の就職の際に不利益になる、それを恐れて労働者側も自主退職を選ぶ等々)。失業保険を受け取れるのは実質4ヶ月後、そこまで凌げれば受給できるものの、4ヶ月も無収入で過ごせるほど余裕のある人はそう多くないはずです。大方の人は、自分を安売りすること、より条件の悪い仕事に就くことを余儀なくされているのではないでしょうか。
派遣社員の場合も同様、保険料を何年納付していたところで実質的に意味がありません。よほどダメな派遣会社ならいざ知らず、派遣スタッフをちゃんと保険に加入させるような「まともな」派遣会社であれば、雇い止めの際にはすぐ次の仕事を斡旋してくれますから。ところが、これが落とし穴です。往々にして「すぐに斡旋できる仕事」=「条件の劣る仕事」なのです。そして「収入減に繋がるオファーは受けられません」と回答すれば、それはすなわち「本人の意思で仕事を断った」=「自己都合退職」扱いになります。ゆえに4ヶ月の待機期間を凌げるようなゆとりある資産家でもなければ、やはり自分を安売りすること=より条件の悪い仕事でも受けるしかなくなってしまうわけです。この辺は保坂展人氏などは割と積極的に取り上げてくれていますが(参考)、往々にして黙殺されがちなポイントでもあります。
失業手当を受給していない失業者の人数は、米国630万人、日本210万人、英国80万人、カナダ70万人、仏独がそれぞれ40万人で、人数でも日米が突出している。
フランスなどを例にして、社会保障費の事業主負担割合が高く、セーフティネットの整っている国では失業率が高いと語る人もいます。あたかも社会保障の充実と雇用機会の増大はトレードオフであるかのように見せかける印象操作ですね。失業率は統計のマジックみたいなところもありますし(例えばネトウヨの論理ですと、在日韓国/朝鮮人は老人も幼児も母数として算入されるため、「在日の半分は働いていない」ということになっている等々。公的機関はそこまで無茶なことはやりませんが、似たようなゴマカシはいくらでもあるわけです)、社会保障よりも景気動向に左右されるところが多いだけに眉唾物ではありますが、それでも敢えて、社会保障の手厚い国は失業率が高いとしましょう。しかし、問題は失業率なのでしょうか?
日本のように、失業しても失業保険は給付されない、もちろん生活保護は失業保険以下の補足率と、公的なセーフティネットの機能していない国では失業は深刻な危機です。しかし、失業しても失業保険がある、すぐに就職できなくても、就労支援が充実しているため焦らず仕事を探せる、そのような環境では失業はそこまで深刻な問題ではないでしょう。日本のように就業そのものが目的化している社会ならいざ知らず、生活の糧を得る手段として就業が存在する社会なら尚更です。失業しても生活の糧にはそれほど困らないなら、失業は日本における場合ほど深刻な問題ではないはずです。単に失業者が多いのではなく、セーフティネットから漏れた失業者が多いこと、そして失業が脅しに使えるということ自体が日本の社会保障の欠落を雄弁に物語ります。
そもそも、今回のこれはILOの指摘なんですよね。日本の報道機関や公的機関が調べたことではない。日本社会が、あまり知ろうと思わないデータなのでしょうか。確かに日本だったら、受給できない人の数を数えるより、不正受給者の数を調べ上げる方が好まれそう、読者にも歓迎されそうですしね。問題の重要度や規模の大小なんて誰も考慮しないのです。生活保護を巡る言説はまさにそれですから、失業保険の扱いだって同様なのでしょう。社会保障受給者の増大を貧困の問題として捉えるのではなく、不正の問題として捉えたがる等々、国民が自ら色眼鏡をかけたがるような社会では自浄作用すら期待できませんね。
全く何のための制度なのかを取り違えたような対応が目立ちますね。こうなるともはや、「セーフティネットはある」と対面を取り繕うためのアリバイ作りとしか思えない有様です。
>arrackさん
なにしろ「人頭税」などと時代錯誤のことまで言い出す連中が改革の旗振り役を務めていたぐらいですから。所得移転、再分配というものに真っ向から否定的な社会なのでしょう。
で、日本は子供がいる家庭では再分配後のほうが格差がひろがるような社会構造であったり、OECD諸国のなかで低所得者層の税+社会保障負担が高く、中高所得者層で低かったり(http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_dis/e_dis180/e_dis171.pdfの図3-1-1)、課税最低限所得が先進国最低レベルだったりするわけです。
日本は、日本のジニ係数がまだひどくない、といっていますが、それは高齢者世帯に対してまだなんとかしているためであって、現役層に対しては非常にお寒いレベルの社会保障体制しかもっていないという現実をこれまでごまかし続けてきたのでしょう。
「中福祉中負担」をいうのであれば現役層に対しても「中くらい」の所得移転がなされる必要があるでしょう。
『生活福祉資金貸付制度』の『修学資金貸し付け制度』で
主体の社会福祉協議会が生活保護での『水際戦術』と同じことをしていると報じていました。
東北の中でも宮城県が酷く、
他県が億単位の実績があるのに同県はゼロ一個少ない実績止まりとのこと。
しかも今は不要らしい『保証人の義務付け』をタテにつっばねたとのこと。
ただ、記事で紹介された人に読者から融資の申し出があったり、
つっばねた社会福祉協議会に抗議の電話が殺到したとのこと。
人の面倒を見るための組織が面倒臭がりでは世話はいりませんね。
失業者などの社会的弱者に転落した人を国が見捨てる、それを容認する社会が厳然として存在するわけでもありますからね。政治がその役割を果たさない、でも国民は政治を否定するばかりで議員削減、公務員削減など政治の縮小を求めるばかり、何ともアナーキーな状態が続きそうです。
>不備さん
社会保障に対して、どうしようもなく悪いイメージが蔓延している点は大きいでしょうね。国家/政府は国民のために存在するはずなのに、「国民は国家に奉仕するもの」という感覚の方が支配的なのか、「公」に対して権利を主張する行為は絶えず誹謗に晒される運命のようです。
>単純な者さん
「低福祉低負担」「中福祉中負担」「高福祉高負担」、こう並べられるとあたかも、福祉国家もそうでない国も、社会保障の水準は負担に比例しているかのような印象が作られてしまいますが、実態は違うのですよね。税金を国民の生活のために還元するその割合が根本的に違うわけですから。
>看板当て本塁打さん
ケースワーカーの著書など読むと「密告」は非常に多いみたいですね。少ないものが過剰に騒ぎ立てられる生活保護行政の話ですから、全体の密告件数、割合がどの程度かは判断しかねるのですが。生活保護にしろ失業給付にせよ、「困っている人を助けること」ではなく、「いかに支出を減らすか」を目標にしているようで、なんとも薄ら寒い世界です。
「受給者は定期的に身辺を調べられています」とか、
「仕事しながらなど、不正に受給している人は、給付金3倍返しです」
なんてことを強調して言うものだから、
(私が受け取った冊子には、ご近所の「密告」で、3倍返しになった人という事例が有りました)
縮み上がってしまい、受給自体をしない…
と言う人も多いと思われます。
周囲の人は「そんなのばれないよ」
と言っていたのですが、
万が一にも、3倍返し…なんて事になったら、とてもじゃないが返せないので、
私は、手続きを取り下げました…orz
しかし、そんな脅して萎えさせるよりも、別の方法を考えつかないのかね…。
と思う次第です。
これは年金に関してだけど、
「進んで掛け金を納める気にさせる」
にはどうしたらいいだろうか…と言う、
思考や行動がないまま、
とにかく「強制徴収」とか言うのは、
いかがな物かと思うのです。
多分、そう言うのが好きな奴がいるのだろう…ということで。
とても素晴らしい論説に感服しながら読まして貰いました。
「**福祉**負担」という言葉はイメージ操作が込められています。「国民の税負担」がどれだけ「福祉」に廻されているのだろうという通常の認識を麻痺させる使い方だと気になっていました。「消費税」が「福祉」に使われず(逆にマイナスシーリングで年々減らされた)ほとんど同額が大企業と金持ちの減税に使われ続けて来たことを連想してしまいます。
日本のマスゴミたちの偏向報道による情報操作が際だっていて国民の認識が大きくゆがめられていると改めて感じさせてくれました。
「異常な長期政権」が社会の緊張を失わせ、その中でどれだけにマスゴミや教育や社会的なあり方をゆがめてきたか、そういう反省を前提にした上で全ての判断がなされなければならないという思いを改めて強くしています。
尚、ご評価されていた保坂展人氏は貴重な存在です。次期総選挙では東京8区から出馬する予定の筈です。是非当選をして欲しいです。
では。
普段の低い収入の中から沢山税金を引かれているのは、そうしたいざという時のための保障としてさっ引かれているわけで、文句を言いつつ「払わされている」から、困ったときに堂々ともらって当然の権利なのだ、ということを忘れている人が多すぎてうんざりしますね。
当然お権利を主張することを悪とする刷り込みは、これまでもこれからも増えそうで厄介極まります。
何しろ、首相自ら、「俺は健康だから病気の人間の通院費まで出してやってるのは気に食わん」というようなことを言う国ですから、嘆息なしにはいられません。
小林某やタモさんのような「マンガ右翼」の駄目さ加減に通じる点ですが、結局かれらの愛国思想は天下国家に物申す物申す武器ではなく、外向きの志向が出来ない臆病さゆえの「言い訳」に過ぎないと言わざるを得ない点です。
結局、今日本で語られる右翼というのは日本人が内輪で楽しむ内向きの「自己肯定」に堕しているのは、思想の是非以前に低レベルな発想と思う次第です。
本題に移ると日本において最大の問題は再三既出ですが、継続した挑戦とした社会構築が無いために、湯浅氏が指摘する「滑り台社会」と化している点が大問題だと思う訳です。
それを「トランポリン型」に改めるべく、色々やっているようなのですが、実態が対処療法と化してるため、被害者が激増している事実は正直マトモな国の状況ではないでしょう。
イタリアでしたか、失業対策に対する抗議で焼身自殺者が出たようですが、日本においては失業は個の責任、愛国無罪な統制を頑なに信じ込んでる連中が多いのはさすがに頭が痛いところです。
既に問題が噴出している医療・福祉についても同じですが、雇用対策が問題視されるのは「自分が最悪の事態に陥った際、社会的に備えを設けるため」という面を重視すべきなのに、何時までも個と社会でやれる事の峻別も出来ない日本は、ある意味国家として大丈夫なのか?と思いたくなります。
結局、「焦土」を経て経験という高過ぎる授業料で学ぶしかないのか?と思うと、暗い気分になりますが下向いても仕方ない為、人として生き抜くしかないと覚悟決めて頑張るしかないと思う次第です。
もし、後世で今の時代を語る機会があったら、真っ先に「馬鹿な時代だ」と私は言うでしょうね。