米議会、「国境税」を検討=輸出を優遇、輸入に負担-トランプ氏も同調(時事通信)
【ワシントン時事】米議会共和党は、輸入への課税を強化し、輸出は税を減免する「国境税」の導入を検討している。法人税制改革の柱となり、トランプ次期大統領が掲げる、企業の生産拠点の「米国回帰」を促す仕組みだ。ただ、保護主義的な面があり、世界貿易機関(WTO)協定に抵触する恐れがある。
(中略)
トランプ氏はこれに同調するように「国境税」という言葉を使って、企業の米国外投資計画を批判。5日にはトヨタ自動車をツイッターで「巨額の国境税を課す」と脅した。
米国の連邦税制には、日本や欧州のような付加価値税(消費税)がない。日欧の企業は完成品の輸出時に原材料の仕入れで払った税を返金されるが、米企業は輸出時の税還付がない上、日欧などの輸出先で課税され、「貿易競争で不利」と不満を募らせていた。このため、国境税により企業の米国内投資、雇用創出が促されるとの期待がある。
さてトランプ氏が大統領選に勝利して以来、日本の株価は上昇局面に入ることも多く、これが報道では専ら「トランプ次期政権の経済政策に期待」云々と伝えられています。確かに、日本の財界人や経済誌が好むタイプではありそうです。しかるに名指しで日本企業が非難されていたりもします。トランプは日本人に精神的な喜びをもたらす指導者ではあっても、決して経済的な利益をもたらす類いではない、それが実態ではないでしょうか。まぁ、日本人は利益より理想を追うものです。保護主義や企業優遇を「あるべき姿」と暗に主張することが多い日本の経済言論とトランプの主張は、相性が良いのかも知れません。
それはさておきアメリカの企業間では「日本や欧州のような付加価値税(消費税)がない」ことへの不満が募っていたそうです。例によって日本の財界人は消費税増税が必要だと執拗に強弁してきたものですが、やはり消費税とは企業にとっての益税となりがちなのでしょう。だからこそ企業から望まれるわけです。そして日本では消費税増税は専ら社会保障のためですとか財政健全化のためですとか、増税とは無関係な「お為ごかし」で己の欲望を隠して主張されるのが普通です。一方アメリカ企業はストレートで偽りがないと言いますか、消費税がないと「貿易競争で不利」なのだと語る、要求は同じでも日本の財界には「いやらしさ」がありますね。
少し補足しますと国内の消費税が8%の場合、「A社がB社から1000円で材料を仕入れ、A社が完成品を海外へ輸出」した場合、仕入れには約74円の消費税が課されます。この74円は原材料を販売した「B社が」納税しなければなりません。ところが「完成品の輸出時に原材料の仕入れで払った税を返金される」仕組みがあるため、この場合は消費税分74円が「A社へ」返金されることになります。消費税は「B社が」納税し、「A社へ」返金される、そういう構図になっているのです。
実際のところ消費税を「負担している」のが販売者なのか購入者なのか、そこははっきりしません。ただ手続きとして「納税する」側と、「返金される」側は明確に定められているのが現行制度でして、これを歓迎(あるいは切望)している人と、そうでない人がいるわけです。もし「原材料を仕入れる輸出企業」が消費税相当分を仕入れ時点で完全に負担しているのであれば、消費税の有無による損得や有利不利は発生しません。支払ったものが、帰ってくるだけですから。しかし消費税を負担しているのが仕入れる側ではない、納税する販売者側であったならば?
もし全額ではなく何割かでも消費税を販売側に負担させているのなら、輸出企業にとって消費税とは至高の益税となります。消費税が上がれば上がるほど、「原材料の仕入れで払った税」との建前で自社に金が振り込まれるのですから。もちろん「原材料の仕入れ」時点で「仕入れる側」が100%の消費税を負担しているならば、所詮はプラスマイナス0でしょう。しかし日本の財界人は挙って消費税増税が必要だと主張してきました。そしてアメリカの企業もまた、連邦税制に消費税がないことへの不満を募らせていることが伝えられています。日米ともに「企業が消費税増税を望んでいる」と言う現実は、何を意味しているのでしょうかね。