家族呼び寄せにDNA検査制度 仏、移民規制を強化(朝日新聞)
仏国民議会(下院)は20日、国内に定着した移民が出身国から家族を呼び寄せる際、遺伝子レベルのDNA検査で血縁関係を証明できる制度などを盛り込んだ改正案を可決した。検査はビザ申請者に血縁関係の疑いを晴らす手段を与えるが、「200~600ユーロ(約3万2000円~9万6000円)かかる」(ルモンド紙)ため、呼び寄せを抑制する効果があると見られている。
改正はサルコジ政権が進める移民の受け入れ規制強化に沿ったもの。DNA検査を提案した与党「民衆運動連合」(UMP)の議員によると、セネガルなどのアフリカ諸国ではビザ申請の3~8割で身分証明を偽っているとの調査がある。改正はこうした現状への対応だが、審査を迅速化する利点もあるとしている。
親日派だの知日派だの、とってつけたように言われることもあったシラク大統領から親米右派のサルコジ大統領にバトンが渡って以来、どうも私にはフランスが急速に日本化しつつあるように思われてなりません。外交方針もさることながら、国内においても急速に企業重視、人権軽視の方向に傾きつつあり、何とも他人事とは思えない有様です。
今回、取り上げるのは移民規制とDNA鑑定の話です。移民が出身国から家族を呼び寄せる際に、FNA検査で血縁関係を証明させようというものらしいのですが、さてどうしたものでしょう? 一部の人々が主張するところに拠ると身分証明を偽る、すなわち家族を装っての入国が多いようですが、それをDNA検査で防げるのか、あるいは防ぐことに意味があるのかを考えてみましょう。
素朴な疑問として、夫と妻の関係はどうなるのでしょうか。本物の夫婦であろうと偽装の夫婦であろうと、どのみちDNA検査は意味がありません。あるいは、配偶者の兄弟や親戚の場合も同様で、やはりDNA検査は意味がありませんね。当たり前のことですが、夫婦は家族ではあっても血縁関係はないわけで、血縁関係の証明など初めから関係のないことです。それとも、呼び寄せられる家族は血の繋がっている家族だけに限定しようという計画でもあるのでしょうか。
親と子の場合だって、必ずしも血縁関係があるとは限りませんし、それが絶対に必要なものでもありません。それはもう、今の日本では養子縁組なんて代物は絶滅危惧種、伝統的な「イエ」を継ぐことよりも「遺伝子」を継ぐことの方を圧倒的に重視する社会です。そういうケダモノ社会に生きていると親と子で血が繋がっているのが当然であるように考えがちですが、それでも親と子の関係を作るのはDNAの繋がりだけではないわけで、血は繋がっていなくとも紛れもない親子はいくらでも存在します。そこにDNA検査を持ち込んで「血縁関係がない!」と騒ぎ立てるのは野蛮というものです。
ミッテラン大統領に婚外子がいたのは有名な話で、別に隠されてもいませんでしたし、それを問題視する人もいませんでした。ジスカール=デスタン大統領にも愛人がいましたし、ついでに言えばサルコジ大統領の奥さんにも愛人がいる、しかし日本のように女性問題で首が飛ぶことはありませんし、そもそも問題視されないわけです。だから他人のプライベートな部分にはみだりに踏み込まない、侵害しないのがフランスの文化なのだと思っていたのですが、さて今回のDNA検査云々はどうでしょうか? 「家族」として暮らしている人に対してその「血の繋がり」を問うのはフランスの精神に反しているような気もします。
もう一つは、フランスは「出生地主義」だったはずでは?と言うことです。これは日本の「血統主義」とは逆の代物で、どこの「血」を継いでいるかではなく、どこで生まれ育ったかを問うものです。どこにいようと日本人の血を引いていれば日本人扱い、逆に日本人の血を引いていなければ日本国籍があっても外国人扱いするのが血統主義の最たるものですが、そうではなく生まれ育った国、文化や価値観を問われるのが出生地主義です。ところが、「同化政策」を掲げ、血ではなく文化によって「フランス人であること」を規定しようとしてきたはずのフランスが、正に「血」を問うDNA検査を持ち出してきました。どういう風の吹き回しでしょう?
正直、従来の「同化政策」にも色々と問題はあるわけですが、一応は誰にでも門戸が開かれている点で評価はできます。移民でも上手くすれば「フランス人」になれるわけです。血統主義ではこうはいきません。しかるに今回のDNA検査はフランス人と「そうでない人」を分けることが目的のものではありませんが、それでも文化を問うのではなく血統を問おうとする発想は従来のフランスのやり方には馴染まないのではないか、他国の事ながらフランスの変貌には危惧を感じます。
校則違反で減点、持ち点失うと給食なし 仏の小学校(朝日新聞)
フランス中部リヨン郊外の小学校が交通違反と同様の減点方式で児童の素行を採点し、持ち点「ゼロ」になると給食を取り上げる制度を導入した。「教育の理念を逸脱している」との批判が出ている。
さらに、サルコジ大統領は19日、西部ナントで学生向けに行った講演で、定年を迎えた公務員の補充を半数に抑えるとした大統領選挙の公約を履行すると言明した。サルコジ氏は「公共部門の規模を縮小することで、待遇や将来性を改善する(切り下げる)」と述べ、公共部門の合理化や、公務員の定数削減、民営化といったサルコジ流構造改革を断行すると発表した。
<サルコジ仏大統領>ドイツに核兵器共有提案 即拒否される(毎日新聞)
ドイツの週刊誌シュピーゲルは17日発売号で、サルコジ仏大統領(52)が10日の独仏首脳会談でメルケル独首相(53)に、フランスが持つ核兵器の共有を持ちかけたと報じた。ドイツは核兵器所有を国として認めておらず、メルケル首相はその場で断ったという。
フランスはサルコジというフランス版小泉純一郎によって、クーポン選挙の罠にかかってしまいました。ビビアンヌ=フォレステルなどが世界で最も早い時期から新自由主義に警鐘をならし、その著書『経済の恐怖』は日本でこそ見向きもなれなかったものの、フランスでは広く読まれたのです。にもかかわらずフランスは僅差で愚民が勝利してしまった。
フランスがどうなるかって?
それは、今の日本のあとを追っかけてくるだけです。
日本はアメリカのコピーを目指し、フランスはそのレースに参加したばかりです。
ただ、賢明なるフランス人はきっと気づくに違いありません。
自分たちの愚かな選択を。
そもそも、大陸で陸続きで他のEU諸国を経由してホイホイ入国しちゃうわけだから、あんまり実効性はないように思います。典型的なこけおどしの制度ですね。
>どこにいようと日本人の血を引いていれば日本人扱い、逆に日本人の血を引いていなければ日本国籍があっても外国人扱いするのが血統主義の最たるものですが
本論とは外れますが、チリからペルーに送還されたフジモリって、ほんとに今でも日本国籍を保持しているんでしょうか。たしかに「している」んでしょうが、かなり大慌てで日本政府がかれの日本国籍を認定したような記憶が・・・・。
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サルコジの諸々の政策に敢然と反対している人もいるようですので、その辺が希望ですね。日本の小泉時代のように国内が賛成一色で塗り込められているわけではなさそうなので、次の選挙では揺り戻しがあるでしょうか。そうなる以前に、取り返しの付かないことにならなければいいのですが。
>Bill McCrearyさん
フジモリ氏ですが、参議院選挙に出馬できた以上、法的な日本国籍はあるのでしょうね。ただ、それ以前から「日系」と言うことで日本国内から同胞扱いされてきたところがあるような気がします。逆にもっと前から日本国籍を保有していても、日本にルーツを持たないと日本人であることに留保を付けられがち、そんな世相に疑問を感じています。
週35時間労働ですとか、その他色々な面でフランスには学ぶべきところがあると思っていたのですが、このところはむしろ危惧を抱かざるを得ないニュースが多いような気がします。正に日本と同じ方向を向いていると言いますか……
サルコジ支持層だってサルコジのもたらすものには必ずや不満を持つ、それが次の選挙での揺り戻しに繋がるとは思いますが、それまでは厳しい時代になるのでしょうか。