旬のカマスが突如クアトロに現れた。
固唾を飲むクアトロのお客様たちだ。
「アトム、助けて」クアトロのお客様の声が届き、鉄腕アトムがやって来た。
「カマス君、みんなが君のことをとっても立派なカマスだねって褒めているよ」
「さあ、僕が助けてあげるからみんなに美味しいカマスの刺身を見せてやろうよ、君のように大きくて立派なカマス君じゃないと刺身には出来ないってお茶の水博士が云っていたよ」
アトムは心の優しい少年ロボットだった。
天馬博士に似てたまに髪の毛が立っているクアトロ・シェフにカマス君は刺身にしてもらった。
アトムのジェット噴射も借りて、炙りにしてみると絶品の味わいである。
クアトロの父のおすすめのボージョレ・ヌーヴォー2020もこのカマス君の炙りに良く合う。
こうなると、もうアトムの活躍を忘れてしまうクアトロのお客様たちである。
今日11月の第三木曜日はボージョレ・ヌーヴォー解禁日。
ところで、ボージョレ・ヌーヴォーってどんな飲み物と云うお客様の疑問に答えよう。
ボージョレ・ヌーヴォーは、ブルゴーニュの南にあるボージョレと云う地域でガメイと云う黒ブドウで作る新酒。
ガメイは、タンニンが少なく長熟の渋めの赤ワインにはなりにくい。
そこで、黒ブドウだが、白ワインのような作り方をして、短期間で仕上げたものがボージョレ・ヌーヴォーだ。
赤ワインというよりも赤い白ワインと思ったほうが的確だ。
商売上手なフランス人は、ボージョレ・ヌーヴォーを、お祭りのワインとしたことが、パリで流行り日本にも伝播する。
要するに、味よりもお祭りのワインだったが、ボージョレ・ヌーヴォーの生産量の半分を日本人が買い続けることと、ブドウの収穫からすぐに現金収入になることからか、ボージョレ・ヌーヴォーの品質向上は近年めざましい。
だれよりも早くにボージョレ・ヌーヴォーを飲もうと云った風潮から、近頃は一年に一度飲むワインだからこそ美味しいものを飲もうと云った風潮になっている。
クアトロにも、品質重視の作り手のボージョレ・ヌーヴォーが入荷しました。
貴族のためのボージョレ・ヌーヴォーと云われる“シャトー・ドゥ・ピゼイ”。
今年も、とても良い出来です。
いよいよ明日ボージョレ・ヌーヴォー2020が解禁。
クアトロにも、すでに今年のボージョレ・ヌーヴォーが入荷し明日の解禁を待っている。
例年仕入れている、王侯貴族御用達のボージョレ・ヌーヴォー“シャトー・ドゥ・ピゼイ”が控えている。
ボージョレ・ヌーヴォーは、お祭りのワインと云われ、日本人もそのお祭りに便乗しているが、そもそも何のお祭りなのだろう。
一般的には、その年の収穫を祝うお祭りとか、その年のワインの出来を計る行事とか云われる。
しかし、それならばボージョレのワインである必要があるのだろうか。
そもそも、ボージョレと云う地域は、ワイン作りにとても適した地域。
ワインの出来を計る必要も無く毎年安定して良いワインが出来る。
量産の出来るブドウ品種ガメイが特にこのボージョレ地域に適していた。
近くに大都市リヨンがあり、ボージョレのワインは昔からリヨンの人々に消費されていた。
第二次大戦になると、ドイツ軍にパリを占拠されパリジャンがこのリヨンに疎開してくる。
そしてパリジャンもこのボージョレの軽快な味わいを好んだ。
大戦後にパリに戻ったパリジャン達を素にボージョレのワインが流行り、さらに、ヌーヴォーと云うワインの作り方が生まれ、お祭り好きのパリジャンに大ヒットすることになる。
パリの人々には、このお祭りは戦争が終わり、自由にワインを楽しめるお祭りだったのかもしれない。
やがて、このお祭り騒ぎが日本人の目にとまり、日本では世界で一番早く飲めるとのことで一大ブームとなったが、パリジャンの気持ちは置き去りにしたのかもしれない。
今年は、コロナ禍でパリジャンは新酒のお祭りどころでは無い。
そんな、ボージョレ・ヌーヴォーを明日はパリジャンには申し訳ないが、豊四季のクアトロで乾杯。