Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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脳梗塞後の上肢の痙性にボツリヌス毒素が有効

2004年12月02日 | 脳血管障害
ボツリヌス毒素(Botox)は1989年12月,眼瞼痙攣,斜視の治療薬としてFDAに承認された.現在,日本でも使用可能であり,保険適応は「眼瞼けいれん」と「片側顔面けいれん」であるが,同剤は皺とりなど美容整形の領域でも使用されるようになった.これに対しFDAは「強力な毒性をもつ生物製剤を美容目的に使用することは言語道断である」として非難している.
今回,ボツリヌス毒素を脳梗塞後の上肢痙性に使用した治療成績がアメリカから報告された.方法は多施設研究で,12週間のdouble-blind, placebo-controlled, single treatmentに引き続き,42週間のopen-label follow up studyを行っている.上肢痙性を呈する126症例がエントリーされた.評価方法は筋緊張度の重症度分類としてAshworth scale (1.正常,2.筋緊張の軽度増加と,屈伸により引っ掛かる感じがする,3.筋緊張の明確な上昇はあるが,他動的に曲げられる ,4.他動運動は困難,5.完全に硬直)を用い,さらに機能評価としてdisability scaleを用いた.結果としては,ボツリヌス毒素は平均200~240単位使用され,観察期間中に平均2.8回の治療が行われた.筋緊張においても機能的にも持続的,かつ有意な改善が認められた.重篤な副作用はなく,中和抗体の出現は1例でのみ認められ,その症例では中和抗体の出現後,ボツリヌス毒素の効果は消失した.
 今回の報告は脳梗塞後の痙性で悩む多くの患者に希望を与えるものと思われ,早期に保険適応がされることが望まれる.

Neurology 63;1971-1973,2004
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