SanDiegoで行われている国際脳卒中学会2014(ISC2014)に参加している.このなかで,女性に特有の危険因子に着目した女性の脳卒中予防ガイドラインを,米国心臓・脳卒中協会(AHA/ASA)が初めて発表したのでご紹介したい.
じつは米国では,男性より女性の脳卒中患者数が多く,さらに脳卒中による死亡の6割を女性が占めている.この脳卒中における女性優位の背景として,女性は男性と同様に高血圧,喫煙,糖尿病といった脳卒中危険因子を認めるほか,女性に特有の危険因子として,妊娠高血圧腎症(preeclampsia),経口避妊薬,ホルモン代替療法,偏頭痛,心房細動を有することが原因として考えられている.以下,それぞれについて記載する.
1.妊娠高血圧腎症(preeclampsia)
400万人ほどの妊婦の6-10%が妊娠高血圧腎症を発症し,妊娠後期において危険な高血圧上昇を呈する.妊娠高血圧腎症は,女性における脳梗塞リスクを2倍にし,将来の高血圧リスクを4倍にするとガイドライン作成者は述べており,多くの女性と,加えて医師もこの関連を認識すべきと強調している.つまり自分は健康と考えている女性も,自分の妊娠・出産期に起きたことを振り返ってみることがとても大事ということだ.産婦人科医も若い女性における脳卒中の増加を憂慮している.
推奨されている点は以下のとおりである.
(ア) 妊娠高血圧腎症の既往を持つすべての女性は定期的な検査を行い,高血圧,肥満,喫煙,高コレステロール血症のような危険因子の評価・治療を行う必要がある.
(イ) 危険因子の定期検査は出産の1年以内から開始すべきである.
(ウ) 高血圧を有する妊婦,ないし前回の妊娠で高血圧を呈した妊婦は,主治医に妊娠高血圧腎症リスクを下げるために,出産までの期間,低容量アスピリンを内服すべきか相談すべきである.
(エ) さらに高血圧(160/110 mmHg以上)を認める妊婦は妊娠期中,安全な降圧剤による治療を受けるべきである.中等度の高血圧の場合(150-159 mmHg/100-109 mmHg)も安全な降圧薬による治療を考慮すべきである.
2.ピル(経口避妊薬)
ピル内服前に,高血圧の有無を検討すべきである.その理由は両者の合併は脳卒中発症リスクを増加させるためである.またピル内服中の喫煙は脳卒中リスクを増加させるため,喫煙すべきではない.
3.ホルモン代替療法(HRT)
閉経後の女性に対しするエストロゲンとプロゲスチンを投与する治療はホルモン代替療法と呼ばれる(骨密度が上がって骨折危険因子を減らす利点がある).一時,脳卒中リスクを減少すると言われたが,現在はむしろ増加すると考えられている.
4.前駆症状を伴う偏頭痛+喫煙
前駆症状(aura)を伴う偏頭痛女性における喫煙は脳卒中の危険因子となるため,禁煙すべきである.またガイドラインを通して,禁煙の重要性が強調されている.
5.心房細動
75歳以上の女性は心房細動の検査を受けるべきである.心房細動は脳卒中危険因子を5倍増加する.この年齢層の女性は,男性と比較し,不整脈を発症しやすい.
6.まとめ
大切なことは女性が,とくに妊娠に関連した脳卒中の危険因子を理解することである.そして主治医とともに脳卒中発症のリスクを下げるための,食生活の改善,運動,必要ならば治療薬内服を行うべきである.

じつは米国では,男性より女性の脳卒中患者数が多く,さらに脳卒中による死亡の6割を女性が占めている.この脳卒中における女性優位の背景として,女性は男性と同様に高血圧,喫煙,糖尿病といった脳卒中危険因子を認めるほか,女性に特有の危険因子として,妊娠高血圧腎症(preeclampsia),経口避妊薬,ホルモン代替療法,偏頭痛,心房細動を有することが原因として考えられている.以下,それぞれについて記載する.
1.妊娠高血圧腎症(preeclampsia)
400万人ほどの妊婦の6-10%が妊娠高血圧腎症を発症し,妊娠後期において危険な高血圧上昇を呈する.妊娠高血圧腎症は,女性における脳梗塞リスクを2倍にし,将来の高血圧リスクを4倍にするとガイドライン作成者は述べており,多くの女性と,加えて医師もこの関連を認識すべきと強調している.つまり自分は健康と考えている女性も,自分の妊娠・出産期に起きたことを振り返ってみることがとても大事ということだ.産婦人科医も若い女性における脳卒中の増加を憂慮している.
推奨されている点は以下のとおりである.
(ア) 妊娠高血圧腎症の既往を持つすべての女性は定期的な検査を行い,高血圧,肥満,喫煙,高コレステロール血症のような危険因子の評価・治療を行う必要がある.
(イ) 危険因子の定期検査は出産の1年以内から開始すべきである.
(ウ) 高血圧を有する妊婦,ないし前回の妊娠で高血圧を呈した妊婦は,主治医に妊娠高血圧腎症リスクを下げるために,出産までの期間,低容量アスピリンを内服すべきか相談すべきである.
(エ) さらに高血圧(160/110 mmHg以上)を認める妊婦は妊娠期中,安全な降圧剤による治療を受けるべきである.中等度の高血圧の場合(150-159 mmHg/100-109 mmHg)も安全な降圧薬による治療を考慮すべきである.
2.ピル(経口避妊薬)
ピル内服前に,高血圧の有無を検討すべきである.その理由は両者の合併は脳卒中発症リスクを増加させるためである.またピル内服中の喫煙は脳卒中リスクを増加させるため,喫煙すべきではない.
3.ホルモン代替療法(HRT)
閉経後の女性に対しするエストロゲンとプロゲスチンを投与する治療はホルモン代替療法と呼ばれる(骨密度が上がって骨折危険因子を減らす利点がある).一時,脳卒中リスクを減少すると言われたが,現在はむしろ増加すると考えられている.
4.前駆症状を伴う偏頭痛+喫煙
前駆症状(aura)を伴う偏頭痛女性における喫煙は脳卒中の危険因子となるため,禁煙すべきである.またガイドラインを通して,禁煙の重要性が強調されている.
5.心房細動
75歳以上の女性は心房細動の検査を受けるべきである.心房細動は脳卒中危険因子を5倍増加する.この年齢層の女性は,男性と比較し,不整脈を発症しやすい.
6.まとめ
大切なことは女性が,とくに妊娠に関連した脳卒中の危険因子を理解することである.そして主治医とともに脳卒中発症のリスクを下げるための,食生活の改善,運動,必要ならば治療薬内服を行うべきである.
