Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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コロナ5類移行1年 後遺症のメカニズムと治療の現在@読売新聞

2024年05月09日 | COVID-19
COVID-19が感染症法上の5類に移行して昨日で1年経ちました.読売新聞から取材いただき,後遺症について現在までに分かっていることについて解説し,コメントをしました.

下畑 享良・岐阜大教授(脳神経内科)は「ウイルスによる炎症が長引き、脳にダメージを与えることで、疲労や認知機能の低下などの神経症状が続くと考えられる。後遺症の深刻さを踏まえると、引き続きこまめな手洗いなど基本的な予防対策が重要だ」と話す。(こちらから記事全文が読めます)

図1はカナダからのデータですが,再感染するたびに後遺症の累積リスクが増加することも分かっていますので,やはり感染予防は大切です.



また記事には後遺症(いわゆるlong COVID)は「メカニズム不明」と書かれてしまいましたが,かなり判明していて,単一のものではなく,①持続感染,②自己免疫,③ウイルス再活性化(EBV,HHV-6など),④セロトニン欠乏(*),といった主に4つの原因により,図2に示すようなさまざまな現象が生じることが分かっています.つまり似たような症状であっても,人によって病態メカニズムが異なるので,その病態に合った治療を選択する必要があり,臨床試験もハードルが高いものになっています.ですから,まずは感染予防が重要ということになります.また事前のワクチン接種は後遺症の抑制に唯一,明確なエビデンスを有する治療法となっており,日本の除く先進国は2024年も年2回接種を推奨しています.



図3はセロトニン欠乏のメカニズムを示すものです.dysbiosis(腸内細菌叢の変化)による腸管からのトリプトファン(セロトニン前駆体)吸収障害と,セロトニンを貯蔵する血小板の減少が引き金となり,セロトニン欠乏が生じ,さらに迷走神経を介する脳腸連関でブレインフォグにつながると言われています.


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