田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

吸血鬼との愛  麻屋与志夫

2010-03-14 08:23:13 | Weblog
part10 吸血鬼との愛 栃木芙蓉高校文芸部(小説)

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「わたしが監察官に選ばれているのは、
血を吸えない吸血鬼だからなの。
かれらが暴れすぎないようにするには、
わたしのような存在が必要なのよ」
「ここからは出られないのかな」
「見はられているわ。
そして鬼の呪詛によってここはつくりあげられている空間だと思う」
いますこしようすをみましょうと、
文子は龍之介に耳もとでささやいた。
「監察官はハンターとはちがうの。
かれらを消滅させるのが目的ではない。
かれらが血の飽食にふけらないようにする監視役なの。
でも、これほど反抗的なかれらと会うのははじめて。
やはりルーマニヤの血がまじってしまったからかしら。
ハイブリットcarみたいなものなのかもしれない。
だって確実にパワーアップしているもの」
「ぼくたち……会話がはずむね……」
文子がほほ笑む。
「怖くないみたい」
そういわれてみれば、
ここに閉じこめられて、
意識の混乱はあった。
でも、恐怖は感じなかった。
文子が居るからだ。
文子と肩を寄せあっているからだ。
文子とだったらどんな苦境も乗りこえられる。
そう思うと、いま置かれている状況にたいする恐れはない。
これって、すごくかわったことなのだろう。
ノーマルな高校生だったらとてもこんな会話はしていられないはずだ。
こんなに冷静でいられない。
文子がいるからだ。
愛する文子がいるからだ。
そっと肩をだきよせた。
文子とだったらこれからも楽しいことがいっぱいあるだろう。
苦しみも、恐怖もなんてことはない。
むしろいい思い出となるだろう。
愛する吸血鬼といっしょなら……。
「こら。吸血鬼と思わないといったじゃないの」
文子が龍之介のおでこを指ではじいた。
「そうだ。携帯してみる。Gにつながるかも」
「それはだめだとおもう。この空間はすくなくても50は過去にもどっている」
「どうしてわかるの」
「ここには、栃木特産の麻があんなに積み上げられている。
いまはもうほとんど生産されていない麻が、
これほど大量に倉庫に積まれているのは、
おかしいと思っていたの。
空間だけでなく時間の歪みのある場所にとじこめられているのね」
 

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