田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

魔王降臨 麻屋与志夫

2010-03-30 22:42:09 | Weblog
part12 魔王降臨 栃木芙蓉高校文芸部(小説)


56

「なにかがくるわ」
文子が声を低めた。
病室にいるほかのものにはきこえない。
龍之介の耳もとでささやいた。
龍之介はすばやくドアを開いて廊下にすべりでた。
夜明けにはまだ間がある。
廊下がふるえていた。
巨大なモグラが這いよってくるように波打っている。
窓ガラスがはじけ飛ぶ。
フロントのドアが開いた。
そして、そこに。
夜のしじまをかきみだして虫の羽音を反響させて、
そこに。
きくものを不安にさせ、恐怖をたたきつけて、
そこに。
ついにあらわれた。

「魔王。ベルゼブブ。蝿の王」
「どうやらおれをしっているようだな。娘」
「あなたが、影で大沢や下館を操っていたのね。
でもどうして? わたしにはわからない。
どうして日本のこんな小さな田舎町を……さわがせるの」
「それに応えるよりも、
よくも彼らを消したな。
人間相手にはモッタイナイほどの精鋭だったはずだ」
「わたしは応えてあげる。
わたしが人間ではないからよ」


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コメント
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