田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

パソコンの中のアダムとイブ

2008-04-01 17:45:26 | Weblog
4月1日 火曜日
パソコンの中のアダムとイブ 2 (小説)
 すでに座席についているものたちの、侮辱をあらわにしたまなざしが、いっせいにこちらに向く。
 いますこし優しい言葉をかけてくれるか、まったく無視するかくらいの態度をとれないのだろうか?
 ああ、田舎はいやだ。いやだ。
 どうして東京へでられなかったのだろう。
 近所の老婆を猟銃で射殺したり、気にくわない隣人を車でひき殺そうと迫ったり……ともかくゴキンジョトラブル最多発地域なのだからしかたがない。
 学校でのイジメだって全国一位をキープしている。
 テレビではコメンテーターが口角泡をとばしてしゃべりまくる。もっともシャベッテナンボという職業なのだからケチはつけられな。あのひとたちは、どうして世の中、こうもぱさぱさしてしまったのか、なにもわかっていない。
 イジメ世代のこどもたちが大人になってきている。あるいは中年になってきた。だから街全体が殺伐としてきた。
 そんなこといってもしょうがないちゅうの。
 運ちゃんに文句をいわれたぐらいで、ことを荒立てる気はない。
 席を譲ってもらえないくらいで腹をたてる気などもさらさらないが、悲しいよ。
(このリックが目に入らぬか。リックの中はポリタンクだぞ。ポリタンクの中はガソリンだぞ)ポケットにある百円ライターはと探していると乗客総立ち、運転手はあわててハンドルをきったからバスは歩道に乗り上げ、建物の外壁とクラッシュ、横転……なんてことが起きるわけはない。
 バスは冷房がきいていた。ききすぎている。あまりの温度の変化に体がついていけない。頭がくらくらする。背中のワープロがゴツゴツする。体がふるえているのだ。
「おじちゃんリックどけて」
 猛禽類の甲高い叫び。
 横をみる。頬ぼねの高い顎のとがった意地悪そうな巨女。村木をにらみつけている。たしかに通路をふさいでいる。女も。すれちがうことはできそうにもない。村
木はトラップにすがっているので手を離すわけにもいかず、離したところでリックを置く場所もない。しかたなくじりじりと横に体を移動させて乗降口まで退く。それでもまだ豊満な女をとおすことができない。
 バスがいつのまにかとまっている。村木はステップから後ろ向きのまま歩道に降りる。女は体をゆっさゆっさとゆすりながら村木のあとから降りてきたが彼のことはまったく無視したままだ。
 すれちがうときに村木のストローハットの縁でじぶんから頬をこすったのに、「なにさこの帽子、わたしのだいじな顔に傷つけて」と、わざとおおぎょうに手をふった。女達によくわめかれる。スーパーでよたよた歩いていると、どいて、じやまよ、と声を掛けられる。
 ああ、帽子がはねとばされた。
 車道で車にひかれてしまった。
 村木はじぶんの頭がひかれたようなショックを感じた。
 バスは村木をおいて発車してしまった。

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