第二十一章 悲しみの淵から立ち上がれ
2
「Zは、アルファベットの最後の文字でしょう。
だからもう終わりだ……とか、そんなわけないよね」
「ないとおもう」
キリコが美智子の悲しみを和らげようてしている。
わざとおどけている。
それがわかるだけに、百子もやんわりと否定した。
「あの文字をZと見るから、
いくら考えても意味がわからないのだとおもう」
「じゃ、なんと読むの」
キリコと百子がセカセカきく。
「こうしてみると、ほら……」
携帯を横にした。
Nに見える。
「Nだったら、日輪教の頭文字のNかも知れない」
「そうか。Nね」
ふたりは感心している。
日輪教の黒服にコロサレタということなの?
ふたりは同じ疑問。
らしい。
「それは警察にまかせましょうよ。
どうせわたしたちが、いくらかんがえてもわからないわ。
わたしね。おもいだしたの。
日輪教に唄子と監禁されていたときにいろんなこと話した。
唄子いっていた。
『はじめはマリファナだった。
なんの気なしに、パーティーですすめられたの。
それから習慣になった。
やめられなくなった。
健一はわたしにはやさしかった。
収入のあるわたしをひきとめておくために麻薬をすすめた。
そんなことない。
クセになってわたしが、やめられなくなったのよ』
かわいそうな唄子。
おおぜいのひとにとりかこまれていた。
でもいつもひとりぼっちだった。
その唄子がいっていた。
『わたしがこうしてつかまっているのは、
健一がヤッラの流通経路を知ってるんだとおもう。
それをシャベレばバイ人は元売りに消される。
だからわたしを拉致して健一を牽制している。
でもわたしもそんなこと知らされていない。
健一も知らないのではないかしら。
ただひとつだけ……きになることがあるの。
日光の細尾でスケートしたことがあった。
日光の遅い桜がさいていた。
だから去年の五月ごろだった。
室内リンクのリストルームてバイ人が接触してきた。
すごく安い値段だった。
それをいうと、地元ですからってバイ人が笑っていた。
わたしそのことを、日光の観光案内のパンフレットに書きとめた。
地元?
なんのことかしら?
そうメモした記憶がある。
あのときは……わからなかった。
なにも危険を感じなかった』
そうよ、このNはNIKKOのNよ。
唄子は本棚でそのときのパンフレットの綴じこみを探していたのよ」
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だからもう終わりだ……とか、そんなわけないよね」
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携帯を横にした。
Nに見える。
「Nだったら、日輪教の頭文字のNかも知れない」
「そうか。Nね」
ふたりは感心している。
日輪教の黒服にコロサレタということなの?
ふたりは同じ疑問。
らしい。
「それは警察にまかせましょうよ。
どうせわたしたちが、いくらかんがえてもわからないわ。
わたしね。おもいだしたの。
日輪教に唄子と監禁されていたときにいろんなこと話した。
唄子いっていた。
『はじめはマリファナだった。
なんの気なしに、パーティーですすめられたの。
それから習慣になった。
やめられなくなった。
健一はわたしにはやさしかった。
収入のあるわたしをひきとめておくために麻薬をすすめた。
そんなことない。
クセになってわたしが、やめられなくなったのよ』
かわいそうな唄子。
おおぜいのひとにとりかこまれていた。
でもいつもひとりぼっちだった。
その唄子がいっていた。
『わたしがこうしてつかまっているのは、
健一がヤッラの流通経路を知ってるんだとおもう。
それをシャベレばバイ人は元売りに消される。
だからわたしを拉致して健一を牽制している。
でもわたしもそんなこと知らされていない。
健一も知らないのではないかしら。
ただひとつだけ……きになることがあるの。
日光の細尾でスケートしたことがあった。
日光の遅い桜がさいていた。
だから去年の五月ごろだった。
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地元?
なんのことかしら?
そうメモした記憶がある。
あのときは……わからなかった。
なにも危険を感じなかった』
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唄子は本棚でそのときのパンフレットの綴じこみを探していたのよ」
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