田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

リリよ     麻屋与志夫

2016-05-07 05:32:05 | ブログ
5月7日 Sat

愛猫リリよ

冷凍室をあけると薄緑のアイスノンが目につく
リリは一晩この人工の氷にひやされていた
ほんとうは
人肌であたためていたかったのだが
かなしくてそれができなかった
週刊誌大の氷のうえで
ひと晩あかしたのだね
リリ
つめたかったろう

こころぼそかったろう
くやしかったろう
病気にさえならなければ
まだまだ生きていられたのに

腐敗したっていい
腐臭を部屋に充満させたっていい
氷で冷やしておくなんてこと
しなければよかった
腐って
臭くて
リリのことがイヤニなっていれば
リリの
みにくい容姿をみていたならば――
こんなにかなしまなくてすんだ

リリ、リリ、リリ
おまえはさいごまで
かわいいかった

あまりにあいらしいので
「リリ、カワイイ」
ワタシタチノ言葉に応えて
目を細めて
よく――
くるりとよこになったね

あの
あいらしいすがた
いまでも目にうかぶよ

どうして人間のかんがえから
ぼくはぬけだせないのだろう
かなしいよ
かなしいよ
氷のうえに置き去りにして
ゴメンよ
ほんとうは
庭の隅に埋めたかった
土葬にして
毎日涙をながして
おまえの上にそそいだら
猫の木の芽が
でたかもしれないよな
大木になったら
ぼくは
おまえに寄りかかって
まいにち、嘆きの詩を
きかせてやれたのに
おまえは
一握りの
骨と灰になってしまった










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