田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

純!!ドアを開けて/すらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-10-10 15:29:44 | Weblog
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神武天皇即位前紀の土蜘蛛族が現われるなんてどうしてなのだ。
だれかが、Fをこの平成の御代に召喚した。
おそらく藤原氏は大和に侵攻した神武天皇と行動を共にしていた。
学校の歴史で教わるより古くから天皇家とかかわっていたのだろう。
「土蜘蛛よ! おまえらは、藤原信行とともに召喚されたのか!? Fはどこだ……???」
純の胸のあたりまでしかない。
土蜘蛛の目が赤くひかっている。
もちろん、純の問いかけに応答はない。
棒。ヌンチャック。三節棍で襲いかかってきた。
棒はともかく、三節棍にいたっては現世ではじめて手にした武器だろう。
喜々として振り回している。
叩かれれば骨折する。
急所に当たれば生命にかかわる。
「翔子! 情ムヨウ!! 切り抜けるぞ!!!」
純はこの期に及んでも、隣の部屋に進もうとしている。
まだ女の声が聞こえてくる。
「三年A組の日名子センパイですか?」
「桜組よ、桜組の小山田日名子。助けて」
「ほんものよ。うちにはA組なんて無粋な呼び名のクラスはないの」
棒をよけて純が振るった鬼切丸がキーンと鋭い音をたてた。
「木製ではない。刀だ。刃のついてない太刀と思え」
まさに金属製。
金属音。叩かれたら死ぬ。
いくら切り捨てても限がない。
夥しい土蜘蛛の数はへらない。
純と翔子は何か所か金属棒で叩かれた。
息も上っている。
「純。むりよ。これ以上先に進めない」
「まだだ」
純が跳躍した。
土蜘蛛の肩や頭を踏で進む。
隣室に飛びこんだ。
パタンとドアが閉まった。
純と翔子は分断された。
「純!!」
翔子は土蜘蛛を斬り伏せながら純のあとを追う。
密閉されたドアになかなか近付けない。
「純!! 開けて。純」


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