田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

今度こそ怪談ダァ/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-10-03 05:09:21 | Weblog
9

「この子、こなかった?」
 日名子の顔写真を見せる。
 翔子が学校のアルバムから引きのばしたものだ。
「ぼく夜からのシフで、かわったばかりだから」
「だれかわかる人いない」
 返事はもどってこない。
 パーテイドレスをきていたの。
 と翔子がまだ押している。

 赤と緑のシェイドの縞模様は進め、止まれのシグナルを連想させた。
 GGは緑色を見つめた。
 進めだ。
 翔子たちにつづいて店内に入った。
 円山町に隣接しているのに。
 ここに澄ました感じの名曲喫茶がある。
 ライオンがある。
 昔のままのたたずまい。
 GGはほっとした。
 ノスタルジーにかられた。
 だが、店内はヤングのふたり連れ。
 あたりまえのことだが。
 当然のことだが。
 GGはそれらの客のなかで異質だった。
「このひと、見ませんでした」
 レジで支払いをすませたふたり連れ。
 翔子がまだネバっている。
 迷惑をかけたので、GGだけのこって席に着いた。
「あのう。ぼくパーテイドレスの女の子ならみましたよ」
 通路を挟んで隣の席の男が声をかけてきた。
 翔子がレジで訊いていたときに入店したオタク風の男だ。
「ありがとう。これでなにか飲んで」
 GGは万札だす。
 遠慮するのに押しつけた。
 店外に走り出る。
 男が追いかけてきた。
「場所、案内しますよ」
 円山町の方面に歩きだした。
「ここです」
 古びた苔の生えているような石段の下だった。
 きらびやかなネオンがまぶしい。
「ありがとう」
 ネオンから脇の男に目をもどすと誰もいない。

「GG……。だれとはなしているの」

 階段だ。 怪談だぁ。
 今度こそ怪談ダァ。
  

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