田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

初秋

2007-09-02 05:35:41 | Weblog
9月1日 土曜日 晴れ
●カミサンがうれしそうに庭を歩いている。いわゆる、ウナギの寝床という横に長い庭だ。その東の隅に挿木でふやしたリルケのバラがいく株も見事に咲きだした。花の色や花弁の美しさはもちろんだが、香りがとてもいい。部屋の中まで漂ってくる。涼しくなってきたので香りがよく感じらける。カミサンもミツバチのように花にちかより花弁のなかに潜り込みそうな風情をみせいている。花がすきでたまらない。そうしたこころが離れていても感じられる。

●わたしは窓越しにそうしたカミサンの所作を眺めている。
部屋ではジャズの「枯葉」がかかっている。

●緑の群葉にだきしめられたような家に住み、平凡な日々が過ぎていく。

●やがて、庭も紅葉がはじまる。おやおや、秋祭りのお囃しもきこえてくる。どこかの町内ではやばやと稽古をはじめたのだろう。

●今朝は散歩に出かけるのはあきらめた。HALと向いあった。このところしばらくストップしていた「巣鴨通りのイカ面GG」を書きだした。


忘れ物

2007-09-02 04:49:38 | Weblog
8月31日 金曜日 曇り
●カミサンとK川沿いに少し遠くまで散歩しようということで朝早く家を出た。ところが川岸に到達するまえに「あっブラッキーに餌」ときたもんだ。わたしは「待たせておくさ」といったが「猫くぐりも開けてやるの忘れていた」と追い打ちをかけてくる。もうこうなるといけない。家にもどるということなのだ。わたしの歩みはがくっとおちこんだ。若いときだったら「物忘れがひどすぎる」くらいの言葉が口をついてでたかもしれない。そうしたささいな言葉がカミサンをひどく傷つけるのがわかってからは……こうしたことが起きても無言に徹するようにしている。                

●だが、わたしは、家にもどりたくはないのだ。カミサンの姿がどんどん遠のいていく。小柄だが、利かん気なカミサンだ。うっかり反対でもするとあとのタタリがこわい。一日くらいは口をきいてもらえない。オカズがへるかもしれない。晩酌のおつまみがでなくなるおそれがある。だからわたしはおそれ敬う意味からも「神さん」だと思っている。タタリをおそれてとぼとぼと後を追った。しぶしぶなので距離はどんどん開いていく。

●公衆電話から、姿が見えなくなったカミサンの携帯に電話をいれた。待たせておくさ、というわたしの言葉に敏感に反応してあらぬことをくよくよ考えているかもしれない。ところがいくら呼びだしても出ない。よもや交通事故にでもあったのでは、と心配になる。

●街角にカミサンがいる。                         
「どうした」
「シグナル待ち」
とすましたもんだ。信号は青になっている。なんど信号待ちをしていたのだ。
「携帯もワスレテきたの] それをいいたいためにわたしを待っていたのだ。歩行数がでる携帯をこの春から使用している。携帯を万歩計としてたのしんでいる。三つも忘れ物をしたことになる。それをわたし告げる、忘れっぽいことを自らみとめる発言をするためにわたしを待っていたのだろう。           
初秋の街角でわたしはカミサンと顔を見合わせた。