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『昭和教育史の証言』 - 11 ( 中内敏夫氏の証言 )

2021-01-14 17:45:29 | 徒然の記

 《   5.  中内敏夫氏・・ 「 大戦下軍国主義教育の構造 」》

 今日から、「戦中編」の本論に入ります。一番目の証人は、中内氏です。

  ・国民学校の教育は皇国主義の教育であるが、内容は軍国主義であったと伝えられている。

  ・それはどのような教育を指しているのか、歯を食いしばれ、股をひらけといった、当時軍隊で行われていたと同質の、教師による子供へのたえざる体罰、上級生の下級生に対する同様の制裁、それが、皇国の道を盾にとった事実上の私刑に過ぎないことの証明であった。

  ・学校と親、学務官僚と校長、教師と子供、上級生と下級生等々、人間関係のあらゆる部分に現れた絶対的な命令と服従の関係、このような事態が、軍国主義教育と呼ばれている。

  ・権力をかさにきた恫喝とゆすりのレトリック、公私混同の倫理、これはとても教育と言えたものではない。

 本論に入る前に、読者が知っておかねばならない事実があります。軍国主義教育の説明をしているのは氏ですが、これは国民学校にいた時の意見ではなく、昭和51年の本の出版当時の意見だということです。この時の氏はマルクス主義者で、大学の教授でした。 

 子供たちの中に、「後出しジャンケン」という言葉があります。相手が出した手を見た上で、ジャンケンをするずるい子供を指す言葉です。

 氏は戦争に負け、東京裁判で裁かれ、「間違った戦争をした悪い国」と、完膚なきまでに叩かれた戦後の日本で、過去の批判をしています。共産党がGHQの支援で蘇り、朝日新聞とNHKが反日左翼の上着に着替え、大手を振って歩いている時の意見です。

 戦前に黙っていたことを、安全になった戦後にしゃべっているのですから、「後出しジャンケン」そのものです。ここを知った上で、氏の説明を紹介します。

  ・戦後日本で軍国主義教育の反対語になっているのは、民主主義教育である。

  ・この原型を作ったのは、占領軍の諸指令である。占領軍は、軍国主義という言葉を使って戦中日本を解体し、これに代わり民主主義という言葉を対置させた。

  ・しかしこの論法を文字通りに受け取り一般化しようとすると、いくつかの説明のつかないことが起こってくる。

 氏は、軍国主義を単純に否定した戦後の日本に生じる、説明のつかない二つの国民像を例示します。

  1. フランス革命で現れた、武器を持つと同時に愛国者であった市民像

  2. 社会主義革命で現れた、自身が軍となり社会主義革命を成就させた人民像

 氏が高く評価しているのは、フランス革命を実現したフランスの国民と、ロシア革命を成し遂げたロシア国民の2つです。

  ・ブルジョア革命を経ないまま近代国家に仲間入りした日本では、このような事態は、遂にただ一度も存在しなかった。

  ・この歴史的経験の欠如が、ものごとを考えにくくさせている。

 明治維新は民衆が起こしたものでなく、上から与えられた変革でしかなかった。日本国民の意識は低く、自分というものに目覚めていないというのが、彼らの決まり文句です。

 学生時代の自分はこうした意見に惑わされ、日本人の意識は遅れていると長い間思っていました。しかし今の私は、後期高齢者です。「温故知新の読書」で沢山学びましたから、昭和51年の氏の意見は、反日左翼学者たちの聞き飽きた意見の一つでしかありません。

  ・ブルジョア革命を経ないまま近代国家に仲間入りした日本では、このような事態は、遂にただ一度も存在しなかった。

 まるで日本が後進国のように説明しますが、革命を起こすように事態が一度も存在しなかったのは、氏の説明とは逆に、フランスやロシアに比べ日本が良い国だった証明なのです。

 一揆や打ち壊しなど、百姓がむしろ旗を立てお上と戦った記録はありますが、フランスはロシアのような長期にわたる残虐な殺し合いはほとんどしていません。後出しジャンケンの学者らしく、好き放題の理屈で若者を惑わせますが、いわばマルクス主義は、一神教の国で生まれた「異教」のようなものです。

 八百万の神の住む日本には不要な思想で、日本の歴史と文化の中では革命や民兵、武装テロの必要がなかったと考える方が妥当な気がします。学生の頃なら感心したのかもしれませんが、革命を起こす国の人間を評価する氏は、根本から間違っています。

 戦争を否定し、軍国主義を酷評する氏が、フランス革命とロシア革命を称賛する矛盾をなんと考えているのでしよう。

 武器を手に立ち上がった国民を、民兵といい、兵士と言い、その集団を軍隊と呼びます。日本で革命を起こそうと考えている彼らなのに、自衛隊の武器やその存在を否定しています。この矛盾については、いつも黙って誤魔化しています。

 爪を隠した今の彼らに比べますと、戦前の共産党は正論を言っていました。

 「日本で政権を奪取したら、共産党は自衛隊を解体して赤軍を作る。」

 数の少ない共産主義国は敵国に囲まれていますから、戦うための軍隊が要ります。崩壊する前のソ連と、現在の中国や北朝鮮の軍は、外敵への備えだけでなく、国民を弾圧するための軍でもあることを多くの人が知っています。

 そもそも国民弾圧の軍がなければ、共産党政権が存続できないということは、現在の世界で ( 日本以外で ) の常識です。

 「平和憲法を守れ」「日本から、軍国主義をなくせ」「軍隊はいらない」「そんな金があれば、福祉に回せ」「教え子を、再び戦場に送るな」

 戦後75年間、共産党を先頭にこんな主張を叫んできた彼らが、今更このような本を出版しています。日本をおかしくした原因の半分以上が彼らにありますが、自分の間違いを認めないのが共産主義者ですから、氏も同じです。自分過ちに触れず、例示した2つの国民像不在の原因と責任を、他に転嫁します。

 スペースがなくなりましたので続きを次回としますが、左翼学者の意見と反論する後期高齢者の意見と、いずれにも退屈した方はスルーしてください。

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