OK元学芸員のこだわりデータファイル

最近の旅行記録とともに、以前訪れた場所の写真などを紹介し、見つけた面白いもの・鉄道・化石などについて記します。

大阪で入手した化石

2011年05月24日 | 化石
5月5日付けの本ブログに次の記事を記した。
>「マダガスカルの白亜紀の魚」という標本に気がついた。たぶんウミユリの萼部だと思ったのでその旨お店の人に告げた上で購入。<


この標本、帰宅してじっと観察した結果、お店の人のおっしゃる通り魚類化石ではないかと考え直した。理由は 1 ウミユリなら分岐があるはずだが見られない、 2 ウミユリの萼部と思われるところに規則性がない、 など。
そこで、シリコンラバーで型取りをしてみた。


シリコンラバー(パテタイプ)を等量取る。


指で錬って均質にする。


標本に押し付ける。約5分でプラスチック消しゴム(変な語!「消しプラ」とは言わない。)ぐらいの硬さになる。

この方法の良いところは道具が不要なこと。まわりも汚れることはない。すこしオイルが指に付くくらい。





でき上がった型は、化石の成分が溶けた後の空洞を充填するものなので、もとの生物のレプリカにあたる。この方が実物と凹凸が一致するので元の生物を考えやすい。左右側面の対称性もあるようだし、胸びれらしい条線もあって魚類らしい。背骨が見えないので普通の魚類化石とは違って見えるが、それは鱗が硬くて大きいので化石になって残っているため。ウミユリと思ったのは間違い。お店の人にも謝りたい。
さらにネットで検索を繰り返し、これの正体を推測した。その結果、これは南アフリカからマダガスカルに分布するカルー層の三畳紀前期の部分から産出するAustralosomus merlei だろうと考えた。体側の五列の硬い大きな鱗の列などが一致する。原始的な硬骨魚類の軟質魚類に属するので、現生でいえばチョウザメが最も近いことになる。フォリドプレウルス科に属する。ネット上の資料では「フォリドプレウス」(属)とか「フォリドプレウス科」となっているが、語源から言えば「フォリドプレウルス」および「フォリドプレウルス科」のほうがよいので、ここではこれを使う。原文は「Pholidopleurus」「Pholidopleuridae」。
カルー層(Karoo Supergroup)は石炭紀から三畳紀の淡水成層で、哺乳類様爬虫類(現在は爬虫類からはじき出された。そうすると名前が変。なんというのだろう。)などの産出が有名。マダガスカルにもカルー層が点々と分布するので「マダガスカルの白亜紀の魚類」というラベルの一部を信用すると、たぶん北部マダガスカルのAmbilobe というところのものだろう。名高い恐竜の産地 Mahajanga から400kmほど東北に行ったところ。


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3 コメント

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Unknown (化石好き)
2011-05-25 09:26:26
このような化石を以前見たことがあるので
コメントします。
"Stramentum"ではないでしょうか?
Stramentum (OK)
2011-05-25 13:32:30
「化石好き」様、Stramentum とのお考え、伺いました。一昨年北海道から報告されたミョウガガイに近い節足動物ですね。Stramentumの場合、タイル状の板の列数(6くらい?)はこの化石(10くらい)よりも少し少なそうです。カメノテみたいに2個以上の個体が並ぶこともあるのですが、そうすると大きさが変になってしまいます。
列の境界は直線的ではなく、もう少し列の間が組み合わさっているような写真がネットで出てきます。
また。胸びれと見た条線や尾びれまたは後方の背びれにあたる場所にも条線が有ります。
このあたりご意見はいかがでしょうか?
Unknown (化石好き)
2011-05-25 18:27:12
ほんの少し画像を見ただけで適当なことを行ってしまって申し訳ありませんでした。胸鰭が確かにあり、おっしゃられる通り曼脚類ではなく魚の化石で間違いないと思います。

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