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馬島の化石の剖出 その2

2015年05月26日 | 化石
馬島の化石の剖出 その2

 17日に馬島で採集した骨化石、でき上がったのが次の写真。

8 馬島産骨化石 6面図。

 割れた所をはさんで、両側の連続性は良いから、接着は成功している。長さ3.3センチ。記述するのにめんどうだから、一番上にある写真の面を上面、その下の写真の右方向を「右」というように呼ぶが、動物名や部位がわからないから、仮の方向である。
 上面に溝がある。左側では深くてV字型の溝、中央付近で急に浅くなって、底がU字型になり更に右に行くと少し深くなる。側面との間は両方とも鋭い稜線を作っている。下面は稜を作るが、稜は角張らない。側面は平面的で、部分的にわずかに凹んでいる。全体はほぼ対称性(上の写真で上下の)を保っている。骨質は滑らかで、海綿質は見られない。
 採集した時から、骨質や表面の滑らかさからこれはプロトプテルム類だろうと思っていた。でき上がって見ると部位が思い当たらない。どうしてもというなら、くちばしの癒合部に似た所があるが、側面観がもう少し直線的なほうがしっくりくる。プロトプテルム類の下顎癒合部はこれまで発見されているが、まだ内側の溝が剖出されていないので、比較ができない。それができたら比較しよう。もしくちばし癒合部であるという推定が正しいのなら、上記の方向用語は次のように正される。上面→背側 下面→腹側 右→前方 左→後方 「前方・後方」は「唇側・舌側」がいいのかな?「近心・遠心」ではなさそうだ。
 魚類食のプロトプテルムの下顎癒合はたぶん短い。大型の魚を飲み込むための適応で、ここが短く、それより後の下顎体が左右に広がりやすくなっていることが多い。広がるのは関節ではなくピンセットのようにバネ的に反るものや、下顎体中間に関節のような構造のある種類もある。
 プロトプテルムは飛べない海鳥で、日本やアメリカ北西岸などから数種類が報告されている。とくに北部九州には10種類以上がいたと推定されるが、古い時代の絶滅脊椎動物種の中ではもっとも「部品」の形態が分ってきている(種レベルではないが)。この標本は、保存が良くない(というよりも採集が良くない)から、部位が分ったら廃棄しようかと思っていたが、確定できないので、もう少し置いておく。ご意見を求める。
 (つづく)


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