のらやま生活向上委員会 suginofarm

自然と時間を、都市と生命を、地域と環境を、家族と生きがいを分かち合うために、農業を楽しめる農家になりたいと考えています

言問はぬ稚児が乞う手を物もなく苦しすべなし父親吾は(伊藤左千夫)

2008年02月02日 | 農のあれこれ
写真は1月30日の夕焼け。

そして、昨日2月1日午後からは柏市の農家を中心とする
「元気だそう!市民と農業者のつどい」というイベント。
若手農業者の体験発表の後、
東京農大教授で醸造学・発酵学研究また食文化論の第一人者
KTさんの講演が行われました。

演題は「食育は子供のために、日本のために」。
国の全国地産地消推進協議会や食料自給率向上協議会での役職をはじめ、
著作、マスコミ出演、各地での講演等での体験からの
持論を展開していただきました。

子供たちへ向けての講演等では
たとえば小学生に対しては「なぜ食べるのか」と問い、
中学生になれば「将来どのように食べていくのか」と
食料自給の話で危機感をもってもらうといいます。

わが国の食料自給率は40%を切るという状況のなかで
食料は戦略兵器である、
食の安全・安心は保障されない、
異常気象から全世界が食料危機になることがある、と。

最近の中国製冷凍加工品の農薬騒動がまさに
日本の食の脆弱性を物語っています。

食育、食育といわれ、
各地で子供たちの農作業体験が行われているが、
表層的な体験だけで
「農業は文化である」という視点のないものは
かえって逆効果だと強調されていました。

EUは行き来も経済も自由化されたが、
言語と食べ物については各国しっかりと守っている。
つまり、それが民族文化の根源であるというのです。
それなのにわが国の政治は日本語も食料も軽視している。
民族固有の言語を話し食べ物をたべること、
その言語・食べ物を好きになることが
その国、民族を好きになり、将来をつくることにつながる、と。

先進事例として
高知県南国市の学校給食の試みを紹介されていました。

10年以上前から南国市では
給食の素材は野菜も肉も魚もすべて地元で獲れるもの
にしているそうです。
海も山もある土地ならではの話しですが、
その結果、子供たちはどう変わったか。

①病気が少なくなった
②休む子が少なくなった
③いじめがなくなった
④食べ物を残す子がいなくなった
⑤成績がよくなった
そして、なにより
自分たちが暮らすまちが好きになった、と。

食文化研究者らしいともいえますが、
たしかに、現在、行われている食育の現場に
こういう視点があったかといわれると
見聞きする限り少ないように思います。

食べ物をお金の価値だけで評価するようになってしまったことも
嘆いていました。
その結果、食の流通システムも壊れてしまった。
いくら生産者が質の良い農産物をつくっても
消費者に届くシステムがない。
農を中心とした経済システムの再構築が必要だ、と。

国の政治に期待するのは当面、無理のようです。
身の回りのところでできることからはじなければならない。
そんな気持ちを改めて思い起こさせていただきました。