そこそこの放送作家・堀田延が、そこそこ真面目に、そこそこ冗談を交えつつ、そこそこの頻度で記す、そこそこのブログ。
人生そこそこでいいじゃない



羅生門 デジタル完全版 [Blu-ray]

角川エンタテインメント


今年は黒澤明の生誕100年記念らしい。

12年前の9月6日、88歳で亡くなった偉人に対し、今の段階で生誕100年を祝う感覚がよく分からないのだが、とはいえ記念の年なので全国各地で黒澤明がらみのイベントや上映会が多数開催されていたらしい。
12年前、黒澤明監督の葬儀にまで出席した僕だが、生誕100年はまったくノーマークだった。
来年の13回忌はしっかり弔うつもりだったが。

なので……というわけでもないがなんとなく……久しぶりに「羅生門」を観た。
いわずと知れた1950年のベネチア映画祭金獅子賞受賞作だ。
そして歴代のベネチア映画祭グランプリ受賞作の中でも最高の栄誉金獅子賞に選ばれた、まさに欧米の映画人たちにとっての日本映画のベスト・オブ・ベストだ。

そもそも芥川龍之介の「藪の中」が小説として素晴らしいのだが、そこに黒澤明が一歩踏み込んだ解釈を加え、小説を映画に昇華させた、まさに傑作。
小説を原作にして、その小説世界を忠実に再現しようとするがあまり、つまらない映画になり下がり、結果として原作小説の品位までおとしめる映画が多い昨今だが、この黒澤の「羅生門」に関していえば、芥川の「藪の中」を小説として否定することも傷つけることもなく、同時に「羅生門」という映画をエンターテインメントとして成立させた、希有なケース。
何度観ても、最後に語られる「黒澤明解釈」のリアリズムにゾクゾクとした興奮を覚える。
これ、意外とちゃんと観ていない日本人が多いと思う。
もったいない。
すごいのに。

のちの「七人の侍」にそのまま引き継がれる三船敏郎のキャラクター。
あのころの三船敏郎のブッ飛び方、今の日本の役者にはない迫力感があるなぁ。

星5つ。★★★★★
そりゃそうだ。

コメント ( 0 ) | Trackback ( )