自然日誌 たかつき

自然についての問わず語りです。

声を出す

2022年02月05日 | ことば
あまり人に言わないでいたことがある。必要がなかったからだが、言わなかったのには、ちょっとかっこ悪いような気持ちもあったからかもしれない。
 私は身を入れて文章を読むとき、声を出す癖がある。英語の論文でも気合を入れる必要があるものはそうする。多分、頭に入れると同時に自分の声が耳から入ることで理解が深まるのではないかと思う。
 今朝の朝日新聞の「天声人語」に童話「くまのパディントン」の訳者である松岡亮子さんが子供に本を読むときは部屋を暗くしてろうそくに灯をともすと紹介されていた。そうすると子供は何が始まるのかと瞳を輝かせるという。
 私は生物学者だから人を動物の一種であるヒトとしてとらえることが癖のようになっている。人は長いあいだ洞窟で暮らし、薪で暖をとって、その前で話をしてきたに違いない。その「効果」は想像力を刺激したはずだ。薄暗いところで話を聞くことが体に染み付いているのだろう。字がない長い時間そうしてきたのだから、ヒトのDNAにはそういうものが刻印されているはずだ。だから耳から聞かないで文章を理解するの読書というものが生じて、文字で内容が理解されるようになっても、耳から話を聞くことの方が脳に入りやすいのかもしれない。
 都市生活はそういうヒトとしての本来の生活の持つさまざまな原型と、その原型が必要とする効果からヒトを遠ざける。生まれてきた赤ん坊は洞窟時代のヒトの赤ん坊と同じだが、その直後からその時代にはなかった約束事の中で生きることになる。それで良いものもたくさんあるが、失ってはいけないものもたくさんある。そのことに私たちが気付いていないものも少なくないように思う。

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