自然日誌 たかつき

自然についての問わず語りです。

鳥による種子散布 6

2008年01月15日 | 植物 plants
エゴノキの果実 
 特殊な例を紹介しよう。エゴノキの果実は緑色で赤い実のようには目立たない(図4)。それに、果皮はサポニンという毒を含むことが知られている。種子を食べてもらうのなら、果実はおいしくてしかるべきなのに、なぜ有毒なのかと私は不思議に思っていたのだが、最近この謎を解く研究がなされた(村上ら, 2006)。
 エゴノキの果実の果皮が有毒であるのは、果実が充実するまでゾウムシなどの昆虫に産卵されないようにするためで、これによって受精した果実を確実に大きくしているのだ。村上らがエゴノキの果実を観察したところ、利用したのはヤマガラだけだったという。じつは私もヤマガラがエゴノキの果実をついばむのを観察したことがある。ヤマガラは枝にとまってエゴノキの果実を両足にはさみ、くちばしでつついて果皮をはぐ。しばらくつついては、あたかも茶道のお手前のように足で巧みに果実を回転させ、新しい面をつつく。これを繰り返してエゴノキの果実は皮をむかれてしまう。村上らの観察によると、ヤマガラはほとんどの果実を持ち去った。実験によると、エゴノキの果実はそのまま地面に落ちたものはほとんど発芽しなかったが、果皮をはいだものは三分の一ほどが発芽した。これらの状況証拠はエゴノキの果実はヤマガラに果皮をはいでもらい、運搬されて、発芽しやすくしてもらっていることを示唆する。
 エゴノキの果実は緑色で目立ちもしないし、有毒である。そのためふつうの鳥や哺乳類は食べない。そうして、果皮をはぎ、種子を運ぶことをヤマガラに託す「ヤマガラ様御用達」という戦略を発達させたといえる。その意味では何らかの理由でヤマガラが絶滅したら、エゴノキも種子散布されなくなって、将来が先細りになる可能性がある。


エゴノキ 2007.7.1 東京都小平市
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